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傘
大好きなおじいちゃんの形見の傘
ごめんね、おじいちゃん。
おじいちゃんの形見の傘壊れちゃった。
この前お父さんに治してもらったのに。
ついでにお父さんもごめんね。
ごめんね、おじいちゃん。
どうしても治らないのが誰にでもわかる。
それくらいに壊れちゃった。
だからごめんね。
捨てるしか選択がなくて。
何か出来たかなって
何か出来たんじゃないかって
思うしかできなくて。
ごめんね、ごめんしか言えなくて。
ごめんって言ったところで
おじいちゃんは気にしないだろうけど
本当は生きてる時に伝えたかった。
おじいちゃんの最後を
おじいちゃんが生きたい様に
生かせてあげられなくてごめんね。
過度な心配がおじいちゃんの人生を
邪魔してしまったこと
悔やんでも悔やみきれない。
何でごめん以外言えないんだろう。
何であの日おじいちゃんは
救急車を呼ばなかったんだろう。
大好きなおじいちゃんの形見だった傘