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(7)恋の目覚め

猫耳族の聖なる祭壇。

マリアとユンは、そこに二人だけで、ひっそりと集まった。


花嫁花婿姿の二人。

真っ白な兵士の礼服で身を固め、向かい合った。


マリアは、晴れやかな表情。

ユンもまた同じように清々しい面持ち。


「……ユン、これで認められたわね。あたし達の結婚」

「ああ、これで堂々と結婚出来るな」


「ユン、愛してる!」

「俺もだぜ、マリア!」


二人、ガシッと肩を抱き合い、熱いハグをした。


「……ねぇ、誓いのキス。いい?」

「ああ、頼む……」


二人の顔が重なる。

と、その時、祭壇中に、大きな声が響き渡った。


「ちょっと待った!!! その結婚は無効だ!!」


なんだ、なんだ、とマリアとユンは辺りを見回した。

すると、祭壇の入り口から、人の波が押し寄せてくるのが見えた。


その先頭には、ユンの兄達3人の姿があった。

ユンは、それを確かめると大声で叫ぶ。


「アニキ達!! どうしてだ!! 俺の結婚認めるって言っただろ!!!」


長兄が静かに言った。


「ユン、お前の結婚を認める訳にはいかない」

「なぜだ! マリアは、アニキ達の試練に打ち勝っただろ!!」


ユンは、両の手をぐっと握り締め、泣きそうな顔で声を張り上げた。

長兄が続ける。


「確かに……マリアの強さ、勇気、そして愛を認めた。しかし、ユンとの結婚を認めるとは一言もいってない」

「なんだって!!!」


3人の兄達は、マリアの方に向きを変え、一斉にマリアの前に手を差し出した。


「マリア、私達と結婚してくれないか?」

「は!?」


マリアは、驚いて目が点になった。

それは、ユンも同じ。

何を言われているのか、理解が追いつかない。


末兄が言った。


「マリア、お前が戦いの中で見せた、猫耳族の弱点に対する激しい攻め……あんなのを見せられてしまったら……私もゾクゾクしていてもたってもいられない。私の猫耳も、思う存分舐め回してくれないか?」


次兄が続ける。


「……まったく、マリア、お前というやつは……人前だというのに、あのような甘くとろけるようなキスを……なんて勇気のある女よ。ああ、思い出しただけで、胸がキュンキュンする。さぁ、私とも、熱くて官能的なキスを交わそうじゃないか」


そして、最後に長兄が言った。


「うむ、マリア……私とて、お前の愛の深さに心を打たれた。まさか、猫耳族がへそ天を晒すなど……それは、つまりお前の愛情の深さに応えた自然な行為……まったく、私もそんな風に愛されたいものよ。ああ、羨ましくて仕方ない」


三人とも、顔を赤らめてすっかり乙女顔。恥ずかしそうにハニかんでいる。

マリアは、目を白黒させ、しどろもどろになった。


「……こ、これって……つまり……」

「ああ、そうだ……つまり私達は、マリア、お前に恋をしてしまったのだ! さぁ、結婚しよう! 私達を婿に迎えてくれたまえ!!」


「え、え、えーーーっ!!!」


一番驚いたのは、ユンだった。


「何言ってんだよ! アニキ達!! ダメだ! ダメに決まっているだろ!! マリアは、俺のモノだからな!!!」


ユンは、手を大きく広げ、マリアを守るように前に立ちふさがった。

しかし、兄達は、ユンを軽く押しのけて隅に追いやると、マリアに群がる。


「ほら、マリア、お前の好きな、猫耳だぞ。どうだ? モフモフして美味しいぞ?」

「マリア、キスだ! キスをしよう! ほら、勇気を出して! なんだ? 恥ずかしいのか? 仕方ない、私の方からしてやろう!」

「マリアよ。さぁ、我が手を取るがいい!! そして、愛を深めようではないか!! 私も、お前になら、へ、へそ天を見せてやってもいいからな……」


マリアは、モテモテで、体を右に左にへと、もっていかれる。


「……た、助けて……」


マリアは、あっぷあっぷして溺れかけた。

そこへ、ユンが突撃し、マリアの手を取った。

そして、その手をぎゅっと握り直して、走り出す。


「………マリア! こっちだ!!」


愛する女が目の前から忽然と消え、三人の男達は慌てふためいた。

それが、末弟のユンの仕業とわかると、ユンに向かって喚き散らかした。


「何をする、ユン! お前は弟だろ!」

「そうだ、ユン。お前には、まだマリアは早い!」

「ユン! マリアを返すんだ! マリアは、私達のモノだ!!」


迫りくる兄達の手。

ユンとマリアは、その声を背中に受け、命からがら猫耳族の里を後にした。

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