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三国志演義

三国志演義・汜水関の戦い~反董卓連合軍~

作者: 霧夜シオン
掲載日:2023/06/10

曹操は偽りの勅命をもって諸侯を集めると、盟主に名族の袁紹を推薦。

反董卓連合軍はいよいよ動き出そうとしていた。


声劇台本:三国志演義・汜水関(しすいかん)の戦い~反董卓連合軍(はんとうたくれんごうぐん)~


作者:霧夜シオン


所要時間:約25分


必要演者数:最低10人

      (9:0:1)


※他に良い組み合わせがあれば教えていただければ幸いです。



配役例【()内はセリフ総数】


曹操:(18)

袁紹:(20)

孫堅:(18)

華雄:(19)

李粛・李儒:(11+8)

董卓・連合軍兵士2:(13+3)

程普・連合軍兵士1:(11+3)

関羽・連合軍諸侯1:(11+7)

胡診・董卓軍部将:(8+12)

ナレ・連合軍諸侯2:(12+7)




※これより少なくても一応可能です。時間計測試読の際は人で兼ね役しまし

 た。


はじめに:この一連の三国志台本は、

     故・横山光輝先生

     故・吉川英治先生

     北方健三先生

     蒼天航路

     の三国志や各種ゲーム等に加え、

     作者の想像

     を加えた台本となっています。また、台本のバランス調整のため

     本来別の人物が喋っていたセリフを喋らせている、という事も

     多々あります。

     その点を許容できる方は是非演じてみていただければ幸いです。

     なお、人名・地名に漢字がない(UNIコード関連に引っかかって

     打てない)場合、遺憾ながらカタカナ表記とさせていただいてお

     ります。何卒ご了承ください<m(__)m>


     なお、上演の際は漢字チェックをしっかりとお願いします。

     また上演の際は決してお金の絡まない上演方法でお願いします。

     

     ある程度はルビを振っていますが、一度振ったルビは同じ、

     または他のキャラのセリフに同じのが登場しても打ってない場合

     がありますので、注意してください。

     なお、性別逆転は基本的に不可とします。



●登場人物


曹操(そうそう)・♂:字(あざな)は孟徳(もうとく)。

     漢の相国(しょうこく)・曹参(そうしん)が末裔(まつえい)を名乗る。

     人相見に「治世の能臣、乱世の奸雄」と評された、兵法、政治、

     果ては詩文にまで名を残す事になる。

     三国志版の覇王にして破格の英雄とも言うべき人物だが、この時

     はまだほとんど力のない状態。

     三十五歳。


袁紹(えんしょう)・♂:字(あざな)は本初(ほんしょ)。

     代々漢王室に仕える名族・袁家(えんけ)の子孫。

     優れた所もあるが、優柔不断な性格でもある。

     反董卓連合軍(はんとうたくれんごうぐん)の総大将に推される。

     三十後半~四十代。


孫堅(そんけん)・♂:字(あざな)は文台(ぶんだい)。

     長沙(ちょうさ)の太守(たいしゅ)にして、いにしえの兵法家、孫子(そんし)の子孫を名乗る。

     演義では本来自分のするはずだった活躍を奪われるなどの

     不遇な扱いを受けているが、正史では三国志最強の一角と言って

     よい実力の持ち主だったと伝わる。

     四十代後半。


程普(ていふ)・♂:字(あざな)は徳謀(とくぼう)。

     孫堅(そんけん)軍の副将を務める。

     風貌(ふうぼう)が優れ、先を見通す力もあり、

     人との応対も巧みにこなしたという。


華雄(かゆう)・♂:字は伝わっていない。

     董卓(とうたく)配下の武勇に優れた、立派な体躯(たいく)の将軍。

     董卓(とうたく)へ志願して前線の汜水関(しすいかん)を守るべく、副将に胡診(こしん)、李粛(りしゅく)を率

     いておもむく。

     約四十代。


胡診(こしん)・♂:字は伝わっていない。

     副将として華雄(かゆう)に従い、汜水関(しすいかん)の守備に赴く。

     しかし初戦で孫堅(そんけん)を見つけて打ちかかるが、横から程普(ていふ)に投げつ

     けられた槍で喉を貫かれ、討ち取られる。


関羽(かんう)・♂:字は雲長(うんちょう)。

     劉備(りゅうび)の義兄弟として黄巾(こうきん)の乱で活躍したが、その後は時に恵まれ

     ず、義弟の張飛(ちょうひ)と三人で流浪の日々を過ごしていた。

     今回、曹操(そうそう)が起こした反董卓連合軍に参加するべく、劉備(りゅうび)の昔馴

     染みである北平の公孫瓚(こうそんさん)の軍に兄弟で陣借りしている。


李粛(りしゅく)・♂:字は伝わっていない。

     かつて丁原(ていげん)の養子だった呂布(りょふ)に、董卓(とうたく)から預かった赤兎馬(せきとば)と黄金

     を贈り、寝返りを勧めた人物。


董卓(とうたく)・♂:字(あざな)は仲穎(ちゅうえい)。

     涼州(りょうしゅう)の長官。

     十常侍(じゅうじょうじ)の乱に乗じて洛陽(らくよう)へ居座り、献帝(けんてい)を擁立し、自らを相国(しょうこく)と

     と名乗り、気に入らぬ者は一族郎党皆殺し、強欲でほしいままに

     権力を振るい、暴虐の限りを尽くす。

     五十四歳。

 

李儒(りじゅ)・♂:字は文優(ぶんゆう)。

     董卓(とうたく)の腹心にして知恵袋。

     この主にしてこの部下あり、を地で行く。

     献帝(けんてい)の腹違いの兄である弁(べん)王子と、その母である何太后(かたいごう)を塔の

     上から突き落として殺すなど、残虐非道の限りを尽くす。

     大体四十代。


連合軍諸侯1・♂♀不問:反董卓連合軍に参加した諸侯。

            十八か国から集まった者達その1。


連合軍諸侯2・♂♀不問:反董卓連合軍に参加した諸侯。

            十八か国から集まった者達その2。


連合軍兵士1・♂♀不問:反董卓連合軍の名も無き兵士。


連合軍兵士2・♂♀不問:反董卓連合軍の名も無き兵士その2。


董卓軍部将・♂♀不問:董卓配下の名も無き部将。


ナレーション・♂♀不問:雰囲気を大事に。


※演者数が少ない状態で上演する際は、被らないように兼ね役でお願いしま

 す。



――――――――――――――――――――――――――――――――――


ナレ:我、天子(てんし)より密かに勅命(ちょくめい)を受けて逆臣(ぎゃくしん)・董卓(とうたく)を討つ軍を起こすものであ

   る。

   曹操(そうそう)が唱え出した大義にまず近隣の不遇な者達が動かされ、

   続いて陳宮(ちんきゅう)の献策(けんさく)によって各地へ飛ばした使者に諸侯が反応し、

   彼の元へ集まってきた。

   河南(かなん)地方の大富豪を説得し、その懐から潤沢(じゅんたく)な軍資金を引き出して

   軍備にかかっているその様子は、周囲を十分信用させるに足るものだ

   った。

   いつの間にか曹操(そうそう)のいる陳留(ちんりゅう)の地には、数十万の大軍が集結していた

   のである。


曹操:ふふふ、河南(かなん)の地を兵馬で埋めてみせる、か。

   今や絵空事(えそらごと)ではなくなった。

   これなら董卓(とうたく)を討つことも不可能ではない…!


連合軍諸侯1:曹操(そうそう)殿!

       おられるか!?


連合軍諸侯2:我ら一同、曹操(そうそう)殿に折り入って相談の儀がござる!


曹操:おお諸公、何事であろうか?


連合軍諸侯1:曹操(そうそう)殿、我らはいまや、数十万を数える大兵力となりました。


連合軍諸侯2:これほどの大軍、指揮する者がいなければただの烏合(うごう)の衆に

       なってしまう。

       速やかに総大将を決め、命令を発してもらうべきと存ずる。


曹操:いかにも。

   …では、私は袁紹(えんしょう)殿を推挙(すいきょ)したいと思う!

   彼は代々漢王室の重職(じゅうしょく)を担(にな)ってきた名族の家柄だ。

   実力、人望共に申し分ないと思われるが。


連合軍諸侯1:確かに…袁紹(えんしょう)殿ならば異存はない!


連合軍諸侯2:うむ、袁紹(えんしょう)殿こそ我らの総大将にいただくに相応(ふさわ)しかろう。


袁紹:いや、私はその器(うつわ)ではない。誰か他におられぬか?


連合軍諸侯1:いやいや、名族出身である袁紹(えんしょう)殿にお願い致したい。


連合軍諸侯2:そうだ、我らは進んでその命に従いましょうぞ!


曹操:袁紹(えんしょう)、ここで互いに譲り合っていてはいたずらに時を費やし、

   かえって敵に付け込まれるかもしれぬ。

   すみやかに総大将となってくれ。


袁紹:うむむ……、分かった! お引き受けいたそう!


曹操:では明日、祭壇を築(きず)いて総大将就任の儀式をとり行う!


ナレ:翌日、袁紹(えんしょう)は衣服や冠を整えて祭壇に上がると牛馬を屠(ほふ)り、香を焚(た)い

   て天に捧げ、声明を発した。


袁紹:天地の神々よ!

   今、諸侯に推されて総大将の任を受けるこの袁紹(えんしょう)、死力を尽くして

   漢王室(かんおうしつ)の危急(ききゅう)を救い、逆賊を討ち滅ぼす!

   もって、苦しみに喘(あえ)ぐ天下万民(てんかばんみん)を救う事を誓うものである!


袁紹役以外:【歓声・SE代用可】


袁紹:諸侯(しょこう)よ!

   この袁紹(えんしょう)、不才(ふさい)の身ではあるが、推薦を受けて連合軍総大将の任に

   ついた。

   それゆえ、功ある者は賞し、罪ある者は必ず罰する!


袁紹役以外:ははーっ!!!【SE代用可】


袁紹:我が弟の袁術(えんじゅつ)は経理の才能があるゆえ、彼に兵糧(ひょうろう)をつかさどらせ、

   諸将の陣に兵糧(ひょうろう)を不足させぬよう取りはからおう!


袁紹役以外:おうッ!!【SE代用可】


袁紹:我らはこれより速(すみ)やかに北上し、董卓(とうたく)と戦う事になる。

   誰か、先陣を切って汜水関(しすいかん)を攻め破る者はいないか!


孫堅:その任、我が引き受けた!


曹操:おお、長沙(ちょうさ)の太守(たいしゅ)、孫堅(そんけん)殿か!


袁紹:うむ、彼ならばやるであろう!

   よし、汜水関(しすいかん)をみごと破って参られィ!


ナレ:一方、都の洛陽(らくよう)では袁紹(えんしょう)、曹操(そうそう)が挙兵(きょへい)したという知らせを持った早馬

   が次々と駆けこんでいた。


李儒:丞相(じょうしょう)、一大事でございます!


董卓:【眠そうに】

   なんだ李儒(りじゅ)、こんな朝早くから。


李儒:大事(だいじ)が勃発(ぼっぱつ)しました。


董卓:【まだ眠そうに】

   どこにだ。


李儒:河南(かなん)の陳留(ちんりゅう)を中心としてです。


董卓:ぬう…では首謀者は、曹操(そうそう)か袁紹(えんしょう)の奴だな。

   それで、何をしでかしたのだ。


李儒:天子(てんし)の詔(みことのり)を受けたと偽り、あっという間に十八か所の諸侯をたぶらか

   し、数十万にわたる大軍を集めました。


董卓:何ィ!? それは捨ておけんな…!


李儒:さらに敵の第一陣は孫堅(そんけん)が率い、汜水関(しすいかん)近くまで攻め上ってきたとの

   事です。


董卓:孫堅(そんけん)か。

   確か長沙(ちょうさ)の太守(たいしゅ)だったな。

   戦(いくさ)は上手いのか?


李儒:はい。

   かの有名な、孫子(そんし)の末裔(まつえい)だと言われております。


董卓:なに、あの大軍師と謳(うた)われた孫子(そんし)のか!

   ぬうう、ならばこちらもそれなりの大物をつかわさねばなるまい。

   呂布(りょふ)に命じるか…?


華雄:お待ちください、丞相(じょうしょう)!

   鶏(にわとり)を裂(さ)くのに、牛を切る刀を用いる必要はありませぬ!


董卓:む? おお、華雄(かゆう)将軍か!


華雄:急を聞いて駆けつけて参りました。

   敵先鋒(てきせんぽう)の孫堅(そんけん)ごとき、それがしが蹴散らして見せましょうぞ!


董卓:うむ! よくぞ申した!

   では華雄(かゆう)将軍、そちに先鋒(せんぽう)を命じる!

   副将に胡診(こしん)と李粛(りしゅく)、そして五万の兵を与えるゆえ、汜水関(しすいかん)を守りぬい

   て我が心を安んずるのだ!


華雄:ははっ、ありがたきお言葉!

   吉報(きっぽう)をお待ち下され!


董卓:ふふふ、頼もしい奴よ! 行けィ!


ナレ:華雄(かゆう)はただちに汜水関(しすいかん)へ至ると関門の守備を固め、連合軍を待ち受け

   る。

   かたや孫堅(そんけん)も十分な備えを済ませると、正面から堂々と攻めよせた。


孫堅:敵の大将は華雄(かゆう)か、相手にとって不足は無い。


   【二拍】


   逆臣(ぎゃくしん)・董卓(とうたく)を助ける愚か者め!

   我は義軍(ぎぐん)の将なり! 時勢は刻々と移っているのがその眼には見えな

   いか!


華雄:はっはははは! 笑うべきたわ言をほざく奴だ!


   しかし敵もなかなかやるわ。

   誰か、敵将・孫堅(そんけん)を討ち取って第一の功績を誇る者はおらんか!?


胡診:それがしが参りましょう!

   どうかお命じ下され!


華雄:おう、胡診(こしん)か。

   よし、五千の兵を与えるゆえ、見事首を取って参れ!


胡診:ははっ!

   者ども出陣だ!

   関門を開けィ!


華雄:よし、万が一の為に兵一万を率いて側面から敵を突くか。

   続けィ!


胡診:さあ突っ込め!

   狙うは孫堅(そんけん)の首だ!!


胡診役以外:【喚声・SE代用可】


胡診:我こそは汜水関(しすいかん)副将の胡診(こしん)!

   雑魚(ざこ)に用はない! 孫堅(そんけん)、どこだ!

   臆病風(おくびょうかぜ)に吹かれてなければ出てこォい!!


孫堅:孫文台(そんぶんだい)これにあり!

   胡診(こしん)とやら、勇気だけは買ってやるぞ!

   さあ来いッ!!


胡診:おお孫堅(そんけん)、そこにいたか!

   その首、もらい受ける!!

   おりゃああ!!


孫堅:ふんッ!

   なんだ、この程度か!?


胡診:何ィ、貴様こそ猪口才(ちょこざい)な!!

   はあッ!


孫堅:そんな打ち込みでは物足りんぞ!

   でぇいッ!


胡診:ぬうッッ!

   ええぃまだまだ、これからよォ!

   りゃああッ!


程普:むっ、あれは…殿が敵将と一騎討ちを!

   はぁッ!

   【馬を走らせる】


   【二拍】


   殿ーッ! そんな奴をおん自ら相手になさる必要はありませぬ!

   この狼め、殿の手を煩(わずらわ)わしおって!

   首の代わりに槍(やり)でもくれてやるわ!

   くたばれェェッッ!!


胡診:うッ!? ぐはァッ!!


孫堅:ははは、程普(ていふ)に手柄(てがら)を持っていかれてしまったな!


程普:殿、敵は崩れましたぞ!

   今こそ追い討ちを!


孫堅:ようし、全軍ッ追撃だ!


董卓軍部将:そ、そんな、胡診(こしん)様が…!


華雄:くそッ、死なせてしまったわ!!

   やむをえん、退(ひ)け! 退却せぇ!


   【二拍】


   ええい、追ってきたな!

   壁をよじ登ってきた奴には石や大木、矢の雨をくれてやれ!!


董卓軍部将:それッ者ども、やれィ!

      敵をこれ以上登らせるな!


連合軍兵士1:うわっ、や、矢の雨が…!!


連合軍兵士2:くそっ、近づけねえッ!


程普:これはいかん、敵の士気はまだ十分だ!

   殿、ここはいったん撤退(てったい)されては。


孫堅:うむ、無駄な犠牲は避けねばな。

   全軍、退(ひ)けッ!


程普:銅鑼(どら)を鳴らせ! 退却だ!

   者ども、長居(ながい)は無用だ!


ナレ:かくして初戦はなかば痛み分けとなった。

   孫堅(そんけん)は胡診(こしん)の首を本陣へ送り、同時に兵糧(ひょうろう)の補給を依頼するが、

   彼に恨みをいだく者が密かに袁紹(えんしょう)へ告げ口する。

   それを信じた袁紹(えんしょう)は、とうとう兵糧(ひょうろう)を送らなかったのである。

   それからひと月余り。

   汜水関(しすいかん)の守将、李粛(りしゅく)は偵察隊の帰還を待っていた。


董卓軍部将:李粛(りしゅく)様、ご報告いたします。


李粛:戻ったか。

   孫堅(そんけん)軍の様子はどうだ?


董卓軍部将:はっ、どうもこのところ、孫堅(そんけん)軍には元気がないようです。

      奇妙なのは、兵糧(ひょうろう)を炊(た)く煙が上らないことです。

      まさか、食わずに戦っているわけでもないでしょうが…。


李粛:ふむ…敵の後方、輸送路の方は最近どうだ?


董卓軍部将:ここ一ヶ月半ほど、兵糧(ひょうろう)が輸送された形跡はありません。


李粛:敵の馬の様子は?


董卓軍部将:この頃、妙に痩(や)せてきているように思います。


李粛:敵兵の様子はどうだ?


董卓軍部将:よく故郷の歌を歌っています。


李粛:なるほどな…。

   よろしい、よくわかった。

   下がってよい。


   【三拍】


   華雄(かゆう)将軍、少し、よろしいでしょうか?


華雄:? 李粛(りしゅく)か。

   いかがした?


李粛:孫堅(そんけん)を生け捕(ど)る絶好の機会がやってきましたぞ。

   今宵(こよい)、それがしは部隊を率いて間道(かんどう)から敵の背後にまわり、

   奇襲(きしゅう)を仕掛けます。

   将軍は火の光を合図に、正面から一気に孫堅(そんけん)軍を屠(ほふ)ってしまってくだ

   さいませ。


華雄:ほう、成功の見込みはあるのか?


李粛:ありますとも。

   それがしの探(さぐ)り得た情報によれば、孫堅(そんけん)は味方から何か疑われ、

   兵糧(ひょうろう)を断たれているようです。

   そのため兵の士気は下がり、まったく戦意が上がらないようです。


華雄:なるほど。

   …今夜は月が明るいな。


李粛:はい。

   まさに絶好の機会ではありませぬか。


華雄:よし、李粛(りしゅく)に任せよう。

   我らも出陣準備に入れ!

   ふふふ、反乱軍め…その顔からさらに血の気(け)を抜いてくれるわ…。


ナレ:その頃、孫堅(そんけん)軍の陣では兵糧(ひょうろう)が底をついてしばらく経っていた。

   孫堅(そんけん)に恨みを持つ者のせいで兵糧(ひょうろう)の輸送が断たれていたのだが、

   その事実は彼にとって、知るよしもなかった。

   このため兵達は飢えて不平に燃え、規律も乱れ、馬も痩(や)せている現状

   だったのである。


連合軍兵士1:腹が…腹が減った…。


連合軍兵士2:食糧は…兵糧はまだなのか…?


孫堅:程普、兵糧(ひょうろう)はまだ届かんのか!?


程普:はい、馬車一台通りませぬ…。


孫堅:ぬううう……!


程普:兵も、馬もすっかり弱ってしまっております。


孫堅:【机を叩く】

   一体、袁紹(えんしょう)殿は何をしておるのだ!?

   兵糧(ひょうろう)なしで戦えというのか!


程普:なぜ兵糧(ひょうろう)が届かないのか…。

   もう一度使者を立ててみましょう。

   

孫堅:うッ!? なんだ、あの火は!


李粛:ふふふ、敵はすっかりへたばっておるわ。

   それっ、火矢(ひや)を射ろッ!

   空を焦がすほど焼き尽くすのだ!


孫堅:いかん、敵の夜襲か!!


程普:ぬうぅ華雄め、兵糧が無いのを知って攻めてきたか!


孫堅:ええい者共、うろたえるな!

   迎え撃て!!


連合軍兵士1:そ、そんなこと言ったって…、

       腹が減って力がでねえ…!


連合軍兵士2:もうだめだ、に、逃げちまおう…!


ナレ:孫堅(そんけん)と家臣たちは兵達を激励(げきれい)し、防御態勢を取ろうとした。

   しかし、兵糧(ひょうろう)を断たれてすっかり戦意喪失していた兵では話にならず

   、彼らは我先(われさき)にと逃げだしてしまう。

   李粛(りしゅく)率いる夜襲(やしゅう)部隊は縦横無尽(じゅうおうむじん)に火を放って回り、その様子は汜水関(しすいかん)

   からも望まれた。


董卓軍部将:申し上げます、華雄(かゆう)将軍!

      敵陣から火の手が上がりました!!


華雄:よしッ、門を開け!

   孫堅(そんけん)を生け捕(ど)りにしてこの汜水関(しすいかん)へ迎えてやれ!!

   全軍、進めーーーーーッッ!!


華雄・程普役以外:【喚声・SE代用可】


程普:くっ、新手(あらて)か!?

   殿、これでは戦(いくさ)になりませぬ!


孫堅:だ、だが我らがここで崩れては!


程普:どうかここは一時退却を!

   それがしがしんがりを務めます!


孫堅:むむむ…分かった!

   程普(ていふ)、死ぬなよ!


李粛:おおっ、孫堅(そんけん)が逃げるぞ!

   者共、逃がすなッ、生け捕(ど)れェ!!


華雄:孫堅(そんけん)、逃げるとは卑怯なり!

   待てィッ! 


孫堅:何をッ! 貴様には矢でもくれてやる!

   ふッ!

   ぬうッ!


華雄:ははは、そんなヘロヘロ矢が当たってたまるか!


孫堅:おのれ、次の矢を…うッ!?

   【弓が折れる】

   しまった、弓が!! くそっ!


程普:殿、早くお逃げを!

   防げ、防げーーーッ!!


ナレ:孫堅(そんけん)は途中、腹心の働きによって辛くもその命を拾う。

   しかし、夜が明けて集まって来た味方は全軍の十分の一にも足りず、

   ほぼ全滅的な敗北を喫していた。

   一方、華雄(かゆう)は孫堅(そんけん)を破った余勢(よせい)を駆って、連合軍本陣へ向けて殺到し

   つつある。

   その知らせは次々と総大将の袁紹(えんしょう)の元へ駆けこんだ。


連合軍諸侯1:袁紹殿!

       先鋒(せんぽう)の孫堅(そんけん)軍は敵将華雄(てきしょうかゆう)に夜襲をかけられ壊滅し、その生死は

       不明との知らせが入りましたぞ!


袁紹:なんだと、孫堅(そんけん)が!?

   【呟く】

   (いかん、やはり兵糧(ひょうろう)を送るべきであったか…。)


曹操:ぬう…して、華雄(かゆう)軍の動きは!?


連合軍諸侯2:怒涛(どとう)のごとくこちらへ押し寄せ、味方の第二陣

       、第三陣、ことごとく突破されておるとのことだ。


曹操:華雄(かゆう)め…なんという万夫不当(ばんぷふとう)ぶりか…!


連合軍諸侯1:これはまずい…本陣まで攻め寄せてくるのも時間の問題だぞ

       。


連合軍諸侯2:うむ…しかし、いかがすべきか…。


曹操:うろたえられるな!

   大将がうろたえては兵の士気は下がり、浮足(うきあし)立ちますぞ!

   こういう時は酒でも飲んで気を大きく持つにかぎる。

   酒を持て!


ナレ:曹操(そうそう)も従者に酒を注(つ)がせたが、呑(の)むほどに顔面は蒼白(そうはく)となった。

   その間も華雄(かゆう)軍の勢いは止まらず、我こそと駆け出して行った味方の

   兪渉(ゆしょう)や潘鳳(はんぽう)も、華雄(かゆう)に難なく討たれてしまう。

   斬られた首が敵兵達に手玉に抛(ほう)られ弄(もてあそ)ばれているとの知らせに、

   連合軍諸将の士気はいよいよ下がった。


袁紹:おのれ華雄(かゆう)め!

   こんな事なら我が軍の猛将、顔良(がんりょう)と文醜(ぶんしゅう)の二大将(にだいしょう)を連れて来るのだっ

   た!

   ここには天下の諸侯もいるというのに、華雄(かゆう)一人討てる将がいなかっ

   たとあっては物笑いではないか!?

   末代(まつだい)までの恥辱(ちじょく)ではないのか!?


関羽:ここに人がいない、とは言いすぎではござらぬか?

   それがしに命じて下されば、華雄(かゆう)を討ち取ってごらんに入れる。


袁紹:な、なんだ、何者か?


関羽:それがしは関羽雲長(かんううんちょう)、劉備玄徳(りゅうびげんとく)の義弟(ぎてい)でござる。


袁紹:おお、先に席を与えた劉備(りゅうび)殿の弟か。

   して、いかなる官職にあった者か?


関羽:劉備玄徳(りゅうびげんとく)が部下で、ほんの兵卒(へいそつ)にすぎません。


袁紹:な、な、なんだと!?

   たかが足軽(あしがる)の分際(ぶんざい)で諸侯の前で大言壮語(たいげんそうご)を吐くか!

   このような者がなぜここにいる!

   早くつまみ出せ!


曹操:待たれよ、袁紹(えんしょう)殿。

   味方で言い争っている場合ではない。

   この男もこれだけの将軍諸侯(しょうぐんしょこう)を前にしてあれほどの大言(たいげん)を吐くからに

   は、ただのたわごととも思えぬ。

   試みに行かせてみては?


袁紹:確かに一理はあるが、足軽(あしがる)などを差し向けなどしたら、我が軍にそこま

   で人がいないのかと華雄(かゆう)に笑われかねぬぞ!


曹操:笑わば笑え。

   見た所、世の常(つね)ではない面魂(つらだましい)を備えている。

   敵もすでに間近(まぢか)に迫ってきている。

   猶予(ゆうよ)はない。

   関羽(かんう)、では貴公に任せよう。

   まず一杯飲んで、すぐに向かうがよい!


関羽:…。

   ありがたい仰(おお)せではあるが、その酒はしばらくそこにお預かりおき

   願いたい。

   ひと走り駆けて華雄(かゆう)の首を持ち帰ってのち、頂戴(ちょうだい)すると致します。

   はあッ!


曹操:……。


袁紹:曹操(そうそう)、本当に良かったのか…!?


曹操:足軽(あしがる)一人、死んだところで痛くも痒(かゆ)くもない。

   むしろ華雄(かゆう)が足軽(あしがる)に討たれたとなれば、そちらのほうが笑いものにな

   ろう。


袁紹:ふむう…。


曹操:それに、足軽(あしがる)にさえこれ程の豪傑(ごうけつ)がいたとなれば、敵に与える心理効

   果は計り知れないであろう。


袁紹:な、なるほど…。


ナレ:関羽(かんう)は酒には手を触れず、引き寄せた馬にまたがるや一陣の風を巻き

   起し、華雄(かゆう)軍へまっしぐらに向かっていく。

   一方、華雄(かゆう)は逃げ惑う連合軍の兵士を左右に薙ぎ立てながら袁紹(えんしょう)のい

   る本陣を目指していた。


華雄:ふんッ! どぉうあッ!!

   袁紹(えんしょう)ッ、曹操(そうそう)ッ、どこにいる!

   董卓(とうたく)様に逆らう愚か者共が!

   その肉を塩漬けにして喰ろうてくれるわ!!


関羽:華雄(かゆう)! 華雄(かゆう)はいずこにあるか! 出合えッ!

   この関羽(かんう)に恐れをなしたか!


華雄:なんだ?

   ふん! ただの足軽(あしがる)ではないか、小癪(こしゃく)な!

   髭(ひげ)だけは立派な奴め、まずはそれから斬り落としてくれるぞ!


関羽:見てくれだけで決めつけると痛い目に逢うぞ!

   それがしの青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)が受けられるか!

   ぬううぉぉぉおおッッ!!


華雄:ぐっ、ぬう!!

   な、なんだこの力は!

   手が、痺(しび)れる…!!


関羽:どうした、この程度か華雄(かゆう)!!


華雄:おのれェ足軽(あしがる)!

   なめるなァッ!!


関羽:ふんッ!

   冥土の土産(みやげ)に我が名を持って行け!!

   それがしは関羽(かんう)、字(あざな)は雲長(うんちょう)なり!!!

   でぇええええいッッ!!!


華雄:ぐぅおおおぁああッッ!!


李粛:ば、バカな、華雄(かゆう)将軍が…。


董卓軍部将:な、なんだあの男は…化け物か…。


連合軍諸侯1:あの華雄(かゆう)を、まるで子供扱いに…!


連合軍諸侯2:す、すごい…本当にただの足軽(あしがる)なのか?


袁紹:? …なんだ、敵も味方も静まり返ったぞ…?


曹操:動きが止まった…一体、何が起きている?

   ! 見ろ、関羽(かんう)だ…!


袁紹:こちらに悠々と引き返してくるぞ…。

   あ、あの首は!?


関羽:いざ、諸侯のご見参(けんざん)に入れん。

   華雄(かゆう)が首でござる。


袁紹:おおお! 華雄(かゆう)だ、華雄(かゆう)の首だ!


曹操:なんと凄い男よ…!


関羽:では、杯(さかずき)を頂戴(ちょうだい)いたします。


   【二拍】


   ふーっ、沁(し)みるわ…。


曹操:関羽(かんう)よ、見事であった。

   もう一献(いっこん)、注(つ)いでやろう。


関羽:いや、それがし一人の誉(ほま)れとしては済みませぬゆえ、

   その一献(いっこん)は全軍の為に上げていただきたい。


曹操:おう、いかにもそうであった。


   【二拍】


   (実に素晴らしい武者ぶりと武勇だ…! この男のような将を臣下に

   加えたい…!!)


袁紹:よし、これで敵は大将を失った!

   もはや烏合(うごう)の衆も同然!

   諸侯よ、追撃だ!

   敵を汜水関(しすいかん)へ生かして帰すな!!


袁紹・李粛役以外:【喚声・SE代用可】


李粛:いかん、退(ひ)け、退(ひ)けえッ!

   全軍、汜水関(しすいかん)まで撤退し、守りを固めよ!!

   そこの者、汝(なんじ)は洛陽(らくよう)へ救援要請に向かえ!


董卓軍部将:は、ははっ!

      ただちに!


ナレ:関羽(かんう)の働きにより、戦況は一変した。

   将を討たれ戦意喪失した董卓(とうたく)軍の兵は、我先(われさき)に汜水関(しすいかん)へ逃げ込もうと

   する。

   だが、その大半は連合軍の追撃を受けて荒野に屍(しかばね)を晒(さら)すこととなった

   。


   【二拍】


   華雄(かゆう)討たれたり

   華雄(かゆう)軍崩れたり

   敗北の注進(ちゅうしん)は洛陽(らくよう)の董卓(とうたく)の元へ駆けこんだ。


董卓:な、なんだと!? 華雄(かゆう)が討ち取られただと!?


李儒:敵の力、侮(あなど)れませぬな…、今の味方の状況は?


董卓軍部将:汜水関(しすいかん)に逃げ帰っております。


董卓:うかつに関(かん)を出るなと命じておけ。


董卓軍部将:李粛(りしゅく)様は、援軍の到着するまで汜水関(しすいかん)の守りを固めるとの

      事です。


董卓:しかし…どうしてあれほどな勇将がむざむざやられのだ?


李儒:何と言っても、袁紹(えんしょう)には地方的な勢力や信望がありますからな…。


董卓:よし、まずは李(り)カク、郭汜(かくし)!

   そち達は五万の兵を率いて汜水関(しすいかん)へ救援に向かえ!

   わしは自(みずか)ら十五万の兵を率いて虎牢関(ころうかん)へ向かう!

   呂布(りょふ)は虎牢関(ころうかん)に着いたら関(かん)の外に精兵三万(せいへいさんまん)を率いて布陣(ふじん)するのじゃ!

   出陣の用意をせい!


ナレ:風雲急(ふううんきゅう)を告げる。

   董卓(とうたく)は李儒(りじゅ)、呂布(りょふ)、張済(ちょうさい)、樊稠(はんちょう)など錚々(そうそう)たる将達に十五万の大軍を率

   い、即日出陣した。

   洛陽(らくよう)を隔(へだ)てること南へ五十里あまり、この天嶮(てんけん)の要害に十万の兵を

   もって守れば、天下の諸侯は道を失うとまで言われたのが虎牢関(ころうかん)で

   ある。   

   かくして世に名高い虎牢関(ころうかん)の攻防が、天下の諸侯と飛将軍(ひしょうぐん)・呂布(りょふ)の戦

   いが、始まろうとしていた。



END


大分前にできていたものですが、上げるのが遅くなってしまいました。

楽しんでいただけたなら幸いです。

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