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1-7.エスティアの小屋

前回やっと主人公に名前が付きました。呑気な物語ですね!

さらに、遭難したとき助けてくれたエスティアに引き取ってもらい。

エスティアとリナと一緒に住むことになりました。

少しずつ村やこの世界に慣れ、体力も回復したので冒険者の仕事に付いていくようになります。

挿絵(By みてみん)


村長さんの家は村の入り口に近い方にあったが、奥へとだいぶ進んで、曲がってだいぶ歩くと、エスティアとリナが住んでいる家があった。


このあたりまで来るとだいぶ人が少ない。


俺を引き取ってくれたエスティアとリナの家は、想像していたよりも、とても小さかった。

家という大きさではなく、小屋といった方がしっくりくるくらい。

窓があるので住居に見えるが、窓がなければ物置小屋に見えそうだ。

まあ、そんな大きさだ。


挿絵(By みてみん)


ここに3人で住むのか……やっぱり申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


まあ、それは、俺がここでは極端に大きいからであって、エスティアたちにとっては狭くはないのかもしれない。


この家に住んでて、ここでは”巨人”扱いの俺を置いてくれるなんて、なんて優しいんだ……と思った。

だが、仮に”忠誠度”というパラメーターが有ったとしても、上がらなかったに違いない。

それは、家が狭いからではなく、既にMAXに達しているからだ。


家の中はすごく暗い。

他の家もそうだが、ガラスが無いので、窓は開けるか閉めるかだ。

たぶん、透明のガラスはまだ発明されていないのだと思う。


レースのカーテンみたいなものでもあれば良いのだが、布製品は凄く高いのか、そもそも存在しないのか、他の家にも付いて無さそうだ。


ただ、土地が広いのは良い。

まとまった平地は少なく少々の高低差はあるが、人が少ないからか1軒1軒の敷地が広く、境界ははっきりとわからない。人口密度の低い世界では、こんなものなのだろう。


特に、エスティアとリナの家があるこのあたりは、まばらにしか家が無い。

村の中でも、かなり外れの方にあるのだろう。

村長さんの家の周辺には、もっと高密度で家があった。

目立たず生きるには、ちょうど良いかもしれない。


ちょっとした家庭菜園みたいなものと、家本体より大きいくらいの屋根付きの薪置き場がある。

そんなに薪を使いまくるのか? と思ったのだが、後で知ったが、薪は1年くらい乾かしてから使うので、薪置き場には、このくらいの大きさが必要なのだそうだ。


エスティアとリナが家に入った。


が、俺は、家に入るのを躊躇してしまう。


「どうして入らないの?」

「気に入らないか?」


家が気に入らないとかそういう理由ではなく、たぶん、このまま入ると迷惑になる気がすると思うのだ。

「いや、そんなことは全く……」


「早く入って」


そう言われても、遭難してから、まともに体洗えてないのだ。


最後にいつ風呂に入ったのかもわからない状態で、狭い部屋に入りたくない。


「体を洗いたいのですが、どこですれば良いのでしょう?」と聞いてみる。


「え、そういうのは心配しなくていいから」

2人は顔を見合わせて、そういう心配はいらないと言った。


でも悪いし、さすがに何日も体洗わないのはヒトとしてどうかと思ったので、「さっぱりしたい」と言うと、小川の上流に行くと林に入るので、そこですると良いと教えてくれた。

ただし、「目立つから暗くなってからの方が良い」と言われたので、そうすることにした。


暗くなるのを待ってから行ってみた。

思ったより水が少なくて困った。


その上、水が冷たすぎて凄い苦痛だった。

体洗うと言うよりは、何か修行なんじゃないかと思うくらいだった。

石鹸もシャンプーも無いのでイマイチ清潔感に欠ける。


でも、たぶん、ガラスもレースのカーテンも無い世界の人は、石鹸なんか持ってないだろうと思ったので、”石鹸貸してくれ”とは言えなかったのだ。


泥でも付けたらマシになるかと思ったら、これはなかなかよく、お肌すべすべになった……のは良いが、奇麗に洗い流すのに、大量の水を浴びなくてはならず凍えまくった。


本当は、服も洗濯しないと臭そうだが、着替えも無いので洗濯できない。


着替え持ってない場合、洗濯したいとき、どうすりゃ良いのだろう?と思った。

こんなことで苦労する日が来るとは思わなった。

でも、日本でもホームレスになったら、同じことで悩んでたかもしれないとも思う。


戻ると夕食だった。食事の匂いというよりは、焚き火の匂いが強い。

燃料は薪だ。


メニューは村長さんの所と同じで、カブとジャガイモの中間くらいの、ホクホクもサクサクもしない中途半端な何かに塩味がついたものだった。

味はともかく、なるべく食費に被害を出さないために晩飯を控えめに頂いた……のだが夜中、腹が減って困った。


どこかから毛布を1枚貰ってきてくれた。

ものすごく使い古されたものだけど、たぶんこれでもそれなり貴重なものなのだろう。

子供用かと思うほど小さいのだが、たぶん普通サイズなのだろうと思った。


家が狭いので俺が寝る場所と2人が寝る場所は凄く近い。



女の子と小さな家で一緒に寝たが、それに関しては特に何もなく、普通に寝て普通に起きた。


別に、初日から偶然着替えを見ちゃったりとか、そういうイベントも何もない。

あっさりしたものだった。

やっぱり、ラノベみたいなのとは違った。


べつに期待していたわけではない。

現実離れした状況に、VR的な要素でもあるんじゃないかと疑っていただけだ。


それはそうと、村長さんのところでも同じだが、すぐに明かりを消してしまう。

真っ暗な中でも慣れれば動けるのか、人々は平気で歩き回っている感じがした。

もしかしたら、暗くても見えているのかもしれない。


俺は暗いところでは目が見えない。視力は上がったが、暗いところでも見えるようになったりはしていない。ここの人たちとは特性に違いがあるのだろう。


2人は暗くなってからも何かしてたようだ。

俺がいるから、暗い中で着替えていたのかもしれない。

暗いと俺には見えていないのはわかっているような気もする。

わざわざ気を使ってくれたなら申し訳ない。

言ってくれれば、外に出るのに。


それにしても、若い女の子と一緒に寝泊まりしても、特に(よこしま)な心に支配されることも無かった。

まだ体が回復してないので、余計なことを考える余裕が無いのだろうと思い納得した。


……………………


昨日、夜中腹が減ってたのはバレてたみたいで、翌朝は食事が山盛りで出てきた。

「大芋はいくらでもとれるから、大芋ならいくら食べても良い」


この”中途半端な食感の何か”は、大芋と呼ぶらしい。芋だったのか。


そして、こいつはいくらでも採れるから、いくら食べても良いと言う。

無理して言ってくれてるだけかもしれないが、有難くいただいておいた。


畑を見せてもらったが、大芋は確かにいくらでも採れそうだった。

畑のほんの一角でも、大量に収穫できる。食べる量だけその都度掘るのだそうだ。

一度収穫した大芋は、日持ちが悪いと言う。やけに水っぽいからそのせいか?

見た目は確かに芋だった。色は違うが形は、サツマイモに近い。

地上部分も、横方向に延びるつる草なので、サツマイモか、葛のような感じにも見える。


今の大芋スペースでも2人分は余裕だと言う。

食事の時見てたが、2人ともけっこうな量食べるので、俺が食べまくっても、今の2倍の量はいらないはずだ。

畑を広げると言うので手伝おうとしたが、石をどかして蔓の一部を切って植えて終わりだった。

そんな簡単にできるものなのか?と思った。


大芋は、森にもあるので、ここの人なら森で迷っても食べ物には、あまり困らないらしい。

ただし、大芋はトート森の特産品なので、”他の土地から来た人は知らないかもしれない”と言っていた。


きっと、俺の行き倒れに対するフォローなのだろう。


========


はじめの何日かは、すぐには仕事を変えられないし、俺を連れて歩けない、と言うことで家に残された。


俺は、これから何をすれば良いのだろうか……

どうやって来たのかはわからないので、帰る方法もわからない。

今すぐ帰ることができるのならともかく、1年後とかに帰ったところで、俺は既に住む場所も職も失っているので、生きるための難易度は相当高い。


ここで生きていくことを考えた方が良いように思う。


できることが無いので薪割りするが、下手で子供にまで馬鹿にされた。

俺は、薪ははじめから割ってあるやつしか燃やしたことがないんだよ!


で、薪割りだが、大きく振りかぶって、気持ちよく”スコーン”と割るイメージがあったが、もっと地味なやり方するものだったようだ。


暗くなってから水を汲めば砂が入るし、植物の種類もわからない。

異世界で現代知識を駆使して無双なんて話があるが、よほどの運が無ければ、知識を使う前の部分で(つまづ)くのではないかと思う。


俺がまともにできるのは、少し離れた共同井戸から、水を汲んでくることくらいだった。

桶が重く、けっこうな重労働になるので、このくらいでも喜んでもらえる。

水も重いが、それ以前に桶がビックリするほど重い。


なので、水が運べるだけで喜ばれる。

でも、まともにできるのは、そのくらい。


あまりにも何もできないので、近所のおばちゃんたちの間で、俺は”箱入りの王子様”ということになってしまった。おばちゃんと言っても、俺より若いのも混じっているのだが。


箱入りの王子様、と言っても、俺の場合は完全に適齢期を逃していて箱入りじいさん扱いなのだった。

箱入りで、そのまま年取った男と言うのも居るには居るらしく、そういうやつなんだと思われてるようだ。


ただ、つい先日捨てられそうになった割には、皆親切にしてくれるので助かった。

この世界はおっさんに優しい。


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