4-5.大鎧と勇者と丈夫すぎる盾
ふらふらと残念な話を続けてきましたが、遂にいろんな謎が見えてきます。
今回は書物庫に行き、勇者陣営側から見た勇者と大鎧のことを調べます。
本作はただパンツで倒れる話ではないようです!!
でも次回はパンツが出るので安心です。
俺の盾は凄く丈夫で、敵を叩いても、荷物運ぶソリ代わりや、担架がわりに使っても、ぜんぜん壊れない。
凄くお気に入りなのだが、ちょっと困ったことがある。
凄く便利なのだが、どう考えても普通じゃない丈夫さなのだ。
伝説級の丈夫さだ。
普通の盾だと、敵を叩きまくってるとすぐ壊れる。
テーラの盾も、大きさの割にやけに軽くて丈夫なのでおかしいが、あれは、まだ傷がつく。
俺のは傷もつかない。
いくらなんでも、おかしいだろと思っていたのだ。
そして、ダルガノードの書物庫で調べ事をしていて気になる話を見てしまったのだ。
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”ダルガンイスト”は要塞の名前で、町本体は”ダルガノード”と言う。
兵士が多くて町が巨大化したダルガンイストと、物資の中継基地から首都に格上げされたダルガノードの双方から町が広がって、くっ付いてしまったのだ。
1つの町に見えるし、どちらの名前で呼んでも通じるが、特に公共施設の多いこのあたりは、ほぼダルガノードと呼ばれている。
こんな国境の要塞とくっついた首都なんて危険だと思うのだが、”領主が要塞の偉い人だったから”だそうだ。
まあ、どうせそんなことだろうと思った。
首都が国の真ん中ではなく端の方にあるというのは、俺の感覚としては割と普通だと思う。
ただ、要塞とくっついているのはいくら何でも危険だと思うのだ。
普通は首都を守るために何重かの防御網を敷くはずだ。
戦争はそう滅多に起きないようで平和な場所らしい。
平和だとすると、大きな要塞があることの方に疑問が沸く。
どう考えても、過剰すぎて、軍の維持費が無駄だと思うのだが、存続できる理由があるのだろうか?
それはそうと、ダルガノードにシートの知り合いがいる。
いろいろ知ってる人だと言うので、その人に話を聞きに行くのだ。
テーラが「お母さんだよ」と言うので、「誰の?」と聞くと、不思議そうな顔をした。
テーラのお姉さんのルルのお母さんだそうだ。
この世界では、兄弟姉妹の母親は、全部まとめて”お母さん”と呼ぶのだそうだ。
ただ、訪問先が普通の民家ではなくて、何かの施設のようなところだった。
俺の服が血の染みだらけで、酷い状態なこともあって、建物には入らずに外で待っていた。
こんなちゃんとした施設に、この格好で入るのは不味いと思うのだ。
まあ、入れとは言われなかったが。
しばらくすると、シートよりも少々年上っぽい品の良さそうな女の人がやってきた。
俺を見て「本当にこんなに大きいのね」と言った後、「テリシア元気にしてた?」とテーラに話しかけ、テーラは「いつも通り」と答えた。
「テリシアは相変わらずねぇ」と言った。
テーラをテリシアと呼んでるので、「テリシア?」と聞いてみると、テーラは「そう。テリシア」と答えた。
つまり、テーラは本当は”テリシア”という名だというのだ。
なるほど、だからテラをテーラと呼んでも問題無いのか。
元は俺の発音がおかしかったらしく、”テラ”だと違うと言われるので、かわりに”テーラ”と呼んでいたのだが、今では俺以外の皆もテーラと呼んでいる。
俺が呼び方変えたら名前が変わってしまったので不思議に思っていたが、愛称なので何でも良いのだ。
テーラには、ルルというお姉さんが居ることは聞いていたが、一緒に育ったと聞いていたので、2人ともシートの娘だと思ってた。異母姉妹だったのか。
”ルル”の本名は”ルルシア”だった。ルルは、ダルガノードにも時々来るらしい。
ルルのお母さんは、キャゼリアと言う。ちょっと偉い人っぽい。
俺のことはよく知ってるらしく、ひっつき虫現象に興味津々って感じだった。
ちょっといやんな感じのことまで突っ込んで聞いてくるので、俺はなんだか、あの変態医者のことを思い出した。
テーラにも”凄い?”、”どんな感じ、気持ちいいの?”とか、ひっつき虫になった感じを聞いて、嫌がられてた。
そこまで知ってるのだから当然知ってるのだろう。俺の竜疑惑を。
俺の恰好をまじまじと見て、「それにしても酷すぎるわね」と言った。
俺の服はあちこち破れてるのはともかくとして、血のシミが付いてて遠目に見ても、うわぁって感じらしく、町中でもけっこう騒ぎになってたのだ。
”これでも洗ったんだよ!”と思うが仕方が無い。
それはそうと、腕の立つ相手だと盾があっても、腕を怪我することが分かったので、もう少し丈夫な革鎧が必要だと思った。
今のやつは狼に噛ませるために付けてあるだけで、刃物は考えてなかった。
強化しないとまた服が血だらけになってしまうのだ。
服が血だらけになると凄く困る。
俺サイズの服は中古や既製品が存在しないので注文して作る。
注文して作るのは割と普通なので、既製品と極端な価格差は無いのだが、布自体が高いので巨大な俺の服は恐ろしく高い。
しかも俺はよく怪我をする。怪我はどうせ治るので問題ない。
でも、服は血だらけなんだよ!!!と全力で叫んだ。心の中で。
すると、キャゼリアが俺サイズの服、冒険者服ではない普通のやつを持ってきてくれた。
予め用意してくれていたのだ。
そして「そんな恰好じゃ、書物庫の敷地にも、入れてもらえないでしょ」と言った。
”服が無いから書物庫行けない”ってことか……と思った。
話を聞くのではなく、本を調べに行くようだ。
個室で着替えたのだが、どうにも視線を感じるので、ささっと着替えた。
気のせいか?それとも、覗き見する魔法とかあるのだろうか?
服はぴったりサイズだった。俺の個人情報流出しまくりじゃないかと思った。
戻るとテーラが、きっちりした服着てて驚いた。
俺は、いつものふわっとした感じが好きだが、これはこれでアリだと思った。
凛々しいテーラも良い。ギャップ萌え的な感じだが。
特に聞いたわけでも無いのだが、「ルルの服」と言った。
ルルは時々しか来ないと聞いたので、「ルルはどこに住んでるんだ?」と聞いてみると、テーラは「マータルレバー」と答えた。
マータルレバーは、あの変態医者とコスプレで萎える町だ。
あんな町に?と思ったが、思ったことが伝わったのか「給料が高いから」と言った。
あそこは儲かるのだそうだ。まあ、金持ち観光客が多いからなと思った。
エスティア達が見当たらないと思ったら、俺達とは別行動で町に出かけたそうだ。
やばい、これは夜エスティアに謎のお説教されるパターンだと思って俺の心のエネルギーがだいぶ減ってしまった。
キャゼリアもきっちりした、お仕事スタイルに変わっていたが、なんか良いもの見たみたいな顔してたので、絶対覗いてただろうと思った。
書物庫で覗き魔法の秘密でも調べてやろうと思った。
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書物庫の敷地に入るのは、キャゼリアの顔パスだった。
建物の中に入るには、何か手続きがあって、閲覧室で待たされた。
書物庫自体は、入れる人が制限されていて、ちゃんとした格好してても、俺じゃ中には入れない。
閲覧室までキャゼリアに本を持ってきてもらうのだが、凄いことに、何も言ってないのに大鎧と勇者の本を大量に持ってきた。
俺に見せるために選別済みだったようだ。
「よく、こんなにたくさん探してきたなぁ」と言うと、「本職だから」と答えた。
キャゼリアは勇者関連の研究者なのだという。
だったら、俺に興味あって当然かと思った。
俺は勇者の敵かもしれないのだから。
ここの本はとてもわかりにくいので、テーラに手伝ってもらって本を読むが、勇者関連の本は内容がコロコロ変わるので意味が分からない。
さっきの本と書いてあること違うと困っていると、キャゼリアが良いことを教えてくれた。
「本が書かれた順に違いを調べるといいわよ」
書かれた時代順に並べると違いがある……つまり、時代とともに変化しているのだ。
同様に大鎧の話も変化するがそれを並べると、大鎧の話が変化すると、それに合わせて勇者の話が変わっていくという関係性があるという。
勇者信仰側の人間のくせに、よくそれを言えるなと感心した。
研究者ってのはそういうものなのだろう。
勇者の話に出てくる大鎧は、悪者に書かれているが、竜が人間に化けて巨大な鎧を着ているあたりは大鎧の伝承と同じだった。
大鎧の特徴として、実は、大鎧の装備は壊れないのだという。
大鎧は倒せても、装備は破壊できない。
剣は大鎧の尻尾から作ったものと書いてある。
その他の装備が何を材料にしてるかはわからないが、大鎧セットに盾が存在する場合、俺の盾がそれなのではないかと思うのだ。
大鎧信仰会の館には鎧は有ったが、他の装備は無かった。
「テーラ、俺の盾」と言うが、何も答えない。
「知ってたのか?」と言うと、「あそこにあるとは知らなかった」と言った。
俺の盾は、テンゲス迷宮のボス部屋で拾ったものだ。テーラが無理して取ってきた。
「見つけたら、あの盾がトルテラに必要だと感じたから。
あれが壊れない盾だとは知らなかった」と言う。
嘘では無さそうなのだが、そもそもあの迷宮の仕事を進んで受けろと言ったのもテーラだ。
そこであの盾をテーラが拾いに行った。
別の理由で迷宮に行かせて、たまたま偶然見つけたってことだろうか?
「あの迷宮の仕事を”受けて”と言ったのには、盾とは別の理由があるのか?」と聞くと、
キャゼリアが
「あんまりいじめないでね。この子だって何でも知ってるわけじゃないのよ」と言い、続けて、
「迷宮の奥の扉。あの扉は人間には開けられないの」と言った。
なんか今凄いことを、さらっと言わなかったか?
「俺だから開いた?」と言うと、「そうでしょうね」と答えた。
なんだそれ、俺は人間じゃないから開いたのか?
てか、なんで大鎧信仰会の施設をキャゼリアが知ってるんだ?
「その情報はどこから」と言いかけたところで、
「この子の父親が専門家だったのよ」とキャゼリアが言った。
なるほど、そういうことか。
「もしかしてシートも?」と聞くと、「あの女は何者なのかしら?」と言った。
知り合いではあるけど仲良しでは無いのか?
ルルはシートが育てたと聞いた気がしたので、「ルルはシートが」と言いかけると、
「テリオスが手元に置きたがったのよ。それに、悪い人間ではないわ、
ただ、知りすぎてるのよ」と言った。
テリオスは、たぶんテーラとルルのお父さんの名前なのだろう。
知りすぎてるほど知ってるなら、キャゼリア紹介する前に直接教えてくれよ!と思った。
そしていきなり話が飛び、
「そういう装備は、持ち主のところに勝手に届くものだから」と言った。
俺の盾のことだ。俺は大鎧なのだろうか……と考えていると、
「あなたが本来の持ち主でなければ、本来の持ち主のところにあなたが運ぶ。
単にその途中かもしれないってこと。わかる?」とキャゼリアが言った。
確かに、そういう解釈もできるのか。
でも、前の持ち主はボス部屋で死んでるし、俺もボス部屋で死んで誰かにあの盾を引き継ぐのだろうか……なんて考えてしまった。
既に読んだ分の本を返却して、大鎧の遣いについて調べたが、そんなものはまったく書かれていなかった。
俺は大鎧の遣いということになってるが、そんなのまったく記載が無い。
大鎧の遣いって何だ?
神殿跡地は、勇者側では、ストーンサークルや魔法陣として書かれている。
これと竜には関係がありそうなことと、勇者が怪物から魔法陣を守るような話も書かれている。
敵同士だけど共闘してる第三勢力があるのか? と思ったが、とても簡単なことに気付いた。
50年以内に書かれた本には大鎧と勇者が大きな戦いをするとは書かれてない。
大昔の本に書かれているだけで、比較的新しい本にそのような記載はないのだ。
大鎧とは別に、竜の話が単独で書かれる場合もある。
”グリアノス”という竜が、城を破壊したというような話が書いてあった。
トート森では竜は神様。ダルガンイストでは竜は悪。
「こっちで竜が悪なのは、このグリアノスってのが犯人じゃないか?」と言うが、テーラは何も答えない。そりゃ、テーラはトート森で生まれ育ってるんだから、知るわけないかと思った。
なんか本読んでもらってるとき、テーラがプルプルしてた。
トート森出身のテーラには竜が悪ってのは受け入れがたいのかもしれない。
それ以前にテーラは竜を研究していたお父さんと、竜に詳しいシートの娘だ。
竜に何か特別な思いがあっても不思議はない。
挿絵は大鎧のウルフのマークと同じで狼みたいな姿に書かれていた。
超巨大な4本足の獣って感じだ。
キャゼリアが戻ってきたので、「最近の本では大鎧と勇者は戦ってないのか」と言聞いてみた。
すると、「国を分けるような大きな戦いはね」と言った。
さすがにキャゼリアは詳しく、細かく見ていくと戦ったと読める部分もあることがわかった。
疑問をぶつけてみた。「これは預言書なのでしょうか?」
「これから起きることが書かれているか、と言う意味ではわからないわ」
続けて、
「わからないけど、あの扉を開ける存在が居るのよ」
俺のことだ。
「私は真実が知りたいの。テリオスが何を知ったのか。
何を調べるためにトート森に行ったのか」。
ああ、そうだよな。
キャゼリアを置いてトート森に行ってしまったのだ。
それなりの理由があるはずだ。
「シートがどうやってあなたを見つけて、何のためにここに来させたのか。
そして、これから何をするのか」
服を用意してまで俺をここに連れてきた理由が分かった。
この人も答えを探してるんだなと思った。
俺も疑問を感じた。
シートは何のために、俺をキャゼリアに会わせたのだろう?
もしかしたら、キャゼリアが知りすぎてると思ってる内容が、トート森では常識的な話と言うこともあり得るのか……そんなことはないよな。
キャゼリアに会わせる必要があったのか、直接俺に話せない理由があるのか……、そのどちらかだと思った。
それはそうと、ついこないだまで、パンツ買うことが目標だった俺に、いろいろ期待しないでほしいんだがと思った。
書物庫に着ていく服だってキャゼリアに貰ったものだし。
勇者の予言書というと、別のものを指すという話を聞いた。
勇者信仰で普通に使われている勇者関連の要約本があって、それを予言書と言うが、だいぶ古い大鎧をベースにしているという。
あれはあれで馬鹿にできないものだから調べてみると良いと言い、町民用の図書館に入れる紙をくれた。
テーラが「図書館で調べよう」と言った。
続けて「トート森に帰る前に」と。
わざわざ言うと言うことは、帰る前に知っておかなきゃならない、何かがあるのかもしれない。




