表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MESSIA  作者: 硝子
7/35

翡翠とケーキ

「暇だね」


 ぱくり。


「暇ね」


 ぱくり。


「甘ェ」


 ぱくり。


 ナギサ達の前には、8等分に綺麗に切り分けられた1切れ分のタルト。それをフォークで切って頬張る。

 「嫌なら食べなくていいです〜!」とリースがじとりとヴェンを睨んだ。


「救世主の修行が始まるまで黎明の里で待機、というのが伝説の慣わしだよね」


「そうね。救世主としての初めての使命はディヴァイン神殿で受ける、だったかしら」


「そうだな。ディヴァイン神殿は満月の夜に行くんだったな」


「ヴェンにしては、ちゃんと覚えてんじゃん」


「お前……俺をなんだと思って……」


 いつものヴェンとリースのやり取りをBGMに、ナギサはフォークで切り分けたタルトを口に運ぶ。

 苺とブルーベリーの甘酸っぱさと、生クリームの甘さが口の中で踊る。「やっぱりリースの作ったケーキは最高ね」と満足気にナギサは心の中で呟いた。


「失礼する」


 がらりとふすまを開けて翡翠が現れた。


「これからの救世主の修行だが……それは、」


「ケーキです」


 翡翠さんもいかがですか?と言葉を続けようとして、リースの思考はぴたりと止まった。

 翡翠はいかにもケーキとか、甘いものが苦手そうだ。どっかのヴェンみたいに。リースが翡翠にケーキを勧めようか迷っていると、


「翡翠様もいかが?」


 リースの思考をぶった切るように、ナギサが悠々と翡翠にケーキを勧めた。

 リースは「ナギサちゃん!」と心の声で全力でツッコむ。そんなリースの様子はお構い無しに、「リースが作ったタルト、美味しいのよ」と、ナギサはにっこりといい笑顔で翡翠の返事を待っている。


「失礼します」


 がらりとふすまが開き、茶髪の小柄な少年が現れた。リースにとっては本当の救世主かもしれない。


「紫苑くん」


 「リース様、こんにちは」と人の良さそうな笑顔で紫苑と呼ばれた少年はにこりと笑った。

 「久しぶりだね」とリースが紫苑に話しかけると、紫苑は、「久しぶりです、リースさん」と返事をした。


「ケーキをお持ちしました。出雲様が翡翠様もどうぞ、と」


「頂こう」


「翡翠様、リース様のケーキを心待ちにしていましたもんね」


 よかったですね。と紫苑はにこりと笑った。


「「「えっ!?」」」


 穏やかな笑顔を見せる紫苑とは対照的に、ナギサ達は目を見開いて驚いた。


「あたしのケーキを心待ちにしているお弟子さんって…」


「私だ」


 リースの言葉に翡翠はきっぱりと即答で返事をした。


「意外ね……」


「意外だな……」


「出雲さん、甘いものが苦手みたいな雰囲気あるから」


 「てっきりケーキは要らない、って言われるのかと思いました」と、どこか気恥しそうに、リースはおずおずと声を出した。よく見ると、頬が赤い。


「じゃあ……どうぞ召し上がれ?」


「頂こう」


 リースとは対照的に翡翠は相変わらず無表情だが、どこか嬉しそうな雰囲気を漂わせているのは、ナギサ達の気のせいではないようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
\1ポチ頂けますと嬉しいです/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ