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MESSIA  作者: 硝子
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黎明の里

 折りたたんだ足から、井草の柔らかい感触が伝わってくる。


「ようこそいらっしゃいました」


 縦に長くて黒い烏帽子を被り、狩衣装束を着た、長身の男性がお辞儀をする。

 「ナギサさんにリースさん、ヴェンさん」と名前を呼びながら、それぞれの顔を見る。


「お久しぶりです! 出雲さん」


「出雲様、お久しぶり」


「久しぶりだな」


 出雲と呼ばれた男性は、それぞれの返事を聞いて、にこりと笑った。


「はい、これ!」


 リースは腕をピンと伸ばし、持っていたケーキ箱を出雲に差し出した。


「中を見ても?」


「もちろん!」


 ちらりと上目で伺う出雲に対し、リースはすぐに返事をした。


「これはまた、美味しそうですね」


「今回は苺とブルーベリーのタルトにしてみました」


 いつものお弟子さんにも食べてもらって下さいね。とリースはにっこりと笑った。


「弟子も、リースさんのケーキを心待ちにしていたんですよ」


 きっとすごく喜びます。ありがとうございます。と出雲は軽く頭を下げた。


「さて、今回の救世主の修行ですが……」


 出雲は、リースから受け取ったケーキ箱をコトリと右に置いた。


「今回、“黎明の里”からも1人、救世主の護衛に付けたいと思います」


「翡翠、こちらへ」


 出雲が後ろのふすまにちらりと目をやると、それが合図だったかのように「はい」と男性の声が聞こえた。

 がらりとふすまを引き、部屋の中に入ってきた青年に見覚えがあった。


「あの時の!」


「リースを助けて頂いた人ね」


 部屋の中に入ってきた青年は、狼からリースを助けた青年であった。

 部屋に入ってきた青年は、出雲の左横に足を折りたたんで正座をした。そうしてそのまま、青年は両手の手のひらを畳につけ、頭を下げた。その拍子に、腰まである長い髪がさらりと揺れる。


「翡翠と言う」


 翡翠と名乗った青年は頭を上げる。

 キリリと涼しげな目元と、宝石のような綺麗な翠色の瞳が印象的だ。


「今回の救世主修行の旅に、護衛として私も同行する」


「ありがとう。よろしくね」


「よろしくお願いします」


「へェ。和人イニシオの術使いがナギサの護衛か」


それまで黙っていたヴェンが、興味深そうに翡翠を見た。


「ええ。翡翠は黎明の里でも一番の術使いです」


 きっと、ナギサさんの役に経つと思います。と翡翠は柔らかい笑みを翡翠に向ける。


「師匠の命を全うするまでだ」


 出雲とは対照的に、翡翠は表情を変えず淡々と言葉を発した。

 下を向き、もじもじと手指を動かしていたリースが、意を決したようにぱっと顔を上げた。


「……あの、さっきはありがとうございました。助けて頂いて」


「当然のことをしたまでだ」


 表情を一切変えず、翡翠はきっぱりと言い切る。


「でも、お礼を言いたくて。ありがとうございました」


「そうか」


 食い下がったリースに対して、淡々とした音色で翡翠は軽く受け止めた。


「すみません。翡翠はこのように無愛想なもので」


「いや、強い奴が護衛に付いて心強ェよ」


「そうね」


 微妙な空気に包まれているリースと翡翠を他所に、翡翠さんとどうやったら仲良くなれるかしら。とナギサは考えた。

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