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MESSIA  作者: 硝子
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想い想われ


『私が術を使えなくても、術師ではなくなっても、それでも、お前は私を必要としてくれるか?』


『もちろん!』


 私の問いに、間を空けずに「もちろん」と答えてくれたリースの様子を思い出す。お前がそう言ってくれるのなら、私はーー。


「どうした、翡翠? まだ何か用がーー」


✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱


「ナギサちゃん! 大変!」


 ぱん! と勢いよくふすまが両側に開かれ、顔面蒼白になったリースが飛び出してきた。


「翡翠さんが! 翡翠さんが……!」


 今にも泣き崩れそうで、それでいて混乱しているような表情をしたリースが、落ち着きなく手足を動かした。リースはパニック状態に陥っているようだ、とナギサは思う。


「落ち着いて、リース」


 話を聞く前に、パニック状態のリースを落ち着かせようと、ナギサはリースの両肩に両手をゆっくりと置いた。


「翡翠様が、どうしたの?」


 パニック状態のリースを刺激しないように、ナギサはできる限りゆっくりと言葉を紡いだ。ナギサが言葉を紡ぎ終えると、とうとうリースは泣き出してしまった。


「翡翠さんがぁ……壊れてしまったの……!」


✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱


「これは……」


 黎明れいめいの里の庭。そこには、翡翠の身体が横たわっていた。身にまとっている着物はあちこち泥で汚れ、いつも首からかけている数珠はバラバラに砕き壊れ、目は何も映さず生気がない。まるで死んでしまっているようだ、とナギサは思った。


「皮肉なことに、翡翠はただの“器”、……“人形”になってしまいました」


 後ろから出雲がゆっくりとした足取りでわ近づいて来た。器? 人形? どうしてそうなったのか。ナギサは疑問に思った。


「翡翠様は、どうしてこのようなお姿に?」


「……翡翠は……この宝玉に、ヴェンさんに降りている者を封印しようとしたのでしょう」


 出雲がしゃがみこみ、バラバラに砕け

てしまった数珠の中で、一つだけ玉の形を保っている宝玉を手に取る。


「封印には成功した。しかし、力を使い果たしてしまった。力を使い果たすと、犠牲を伴います。それで、このような姿に」


「悪い、俺のせいで……」


「謝らないでください、ヴェンさん」


 申し訳なさそうに眉を下げるヴェンに、出雲は穏やかににこりと笑いかけた。


「翡翠は元より救世主メシアを危機から守るために作った、“人間”。……翡翠は無事に役目を果たしてくれました」


「そんな……」


 リースが絶望の色を含んだ声を上げる。翡翠を元に戻すことはできないのか。翡翠ともう一度話すことはできないのか、とナギサは思った。恐らく、リースも同じことを思っているだろう。


「……出雲様、翡翠様を元に戻すことはできないのですか?」


「残念ながら、私の力ではなんとも。……ですが、」


 出雲がゆっくりと立ち上がり、流れるような目付きで、じっ、とリースを見つめた。


「リースさん。貴方なら、貴方の力なら、抜け殻になってしまったこの身体に、翡翠の魂を呼び戻すことができるかもしれません。……暁人あきひと師匠の娘である貴方なら」


「私?」


 出雲に名指しされたリースは、きょとん、と目を丸くした。


「……確かに、パパは偉大な力を持った黎明れいめいの里の長であったけれど、私にそんな力があるのかな……」


「分かりません。しかし、やってみる価値はあると思います」


「私からもお願いするわ、リース」


 リースが不安気にナギサをじっ、と見つめる。ナギサはリースの気持ちに応えるように、こくり、と首を縦に振った。


「……分かりました。やってみます。だって、翡翠さんと、また会いたいから」


 リースは意を決したような強くて、それでいて優しい目で横たわっている翡翠を見つめる。


「私にできるかな、ナギサちゃん」


「大丈夫。きっと翡翠様なら、応えてくれるはずよ」


「うん、そうだね。やってみる」


 リースはナギサの言葉にこくりこくりと、首を縦に二回振った。それから、強い決意を含んだ目で、出雲を見つめた。


「それで、どうすればいいんですか? 出雲さん」


「まずは、翡翠の身体に両手をかざし……」


「こうですか?」


「そうです。次は……」


 リースと出雲のやりとりを見守りながら、「どうか翡翠様ともう一度会えますように」とナギサは願った。

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