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MESSIA  作者: 硝子
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似た者親子


 すう、すう。

 規則正しく胸が上下する。そんな翡翠の様子を見て、リースはほっと息をなで下ろした。そろりと足音を立てないようにふすままで移動して、そーっとふすまを開け、ふすまの外に移動してから、またそーっとふすまを閉める。


「リース、翡翠様は?」


 リースの背に声がかかる。心配そうな声。ナギサだ。リースはくるりと踵を返し、にこりと笑って見せた。


「大丈夫。眠ってしまったわ」


「そう。良かった」


「そうですか……」


 リースの言葉を聞いて、ナギサは安心した。すとんと肩の力が抜けたようだ。対して出雲は、眉を若干寄せ、どこか複雑そうな表情になった。


「きっと、疲れてしまったのでしょう。“泣く”ことは、あの子にとって初めての経験でしょうから」


「翡翠様は、今まで泣いたことは?」


「ありません。5年前、あの子を生み出してからずっと」


 「5年前」という言葉を聞いたリースが「えっ」と驚いたように声を上げる。


「5年前? 翡翠さん、5年前に生まれたんですか?」


「そうです。20歳程度に見えますが、実際は5歳といったところでしょうか」


「まあ……」


 ナギサは驚きの息を漏らした。


「私は、どうしても救世主メシアの護衛に私の半身を付けたくて、5年前、あの子を生み出しました。生まれたあの子は私の期待通りに努力し、里1番の実力者となりました。しかし……」


 出雲の膝に乗せられた両手が、ぎゅっと握られる。


「生まれたあの子への兄弟子達からの風当たりは強く、気味悪がれ、“人形”と罵られてしまいました。あの子には私の勝手な都合で辛い思いばかりさせてしまいました」


 出雲の伏せられた両目が、畳を映す。


「あの子に過度な期待を寄せてしまったのではないか、あの子を生み出してしまって良かったのかと……」


「ふふふ」


 出雲の話の途中だったが、それを遮るように。思わず、リースの明るい笑い声が漏れた。


「リースさん?」


 出雲が不思議そうに。そしてどこか不安そうに。リースを見つめる。


「翡翠さんも同じこと言ってました。“師匠の期待に答えられるのか”、“自分は生まれて良かったのか”って」


「そんなことを、翡翠が……」


「出雲さんと翡翠さん、“似た者親子”ですね」


「似た者親子……」


 出雲は目を丸くさせ、ぱちりぱちりと、瞬きを繰り返す。ナギサはリースの言葉に同意したように、うんうん、と首を縦に振った。


「そうね。リースの言う通りだわ」


「……“親子”に見えますか? 私と翡翠が」


 出雲は期待と不安に揺れる瞳で、ナギサとリースを見つめた。


「「それはもう」」


 即答だった。まるで合わせたように、ナギサとリースの言葉がぴったりと合わさった。


「そうですか……。私と翡翠が“親子”……。“似た者親子”……」


 出雲は言葉を噛み締めるように、“親子”という言葉を紡ぐ。


「出雲さんは翡翠さんに血を分け与えられて作られたんですよね? だったら……」


「紛れもなく“親子だわ”」


 それが例え、作られた存在だったとしても。とナギサの言葉が続く。


「“親子”と言われたのは初めてです。ですが、その通りですね。私と翡翠は“親子”」


 穏やかな表情で出雲は言葉を紡ぐ。嬉しそうな、暖かい表情だ。


「そうだ!」


 何かを思いついたような。リースは声を上げた。


「翡翠さんにも教えてあげたらどう? 出雲さんが翡翠さんと同じことを思い悩んでた、って」


「そうね。教えて差し上げましょう。よく似た“親子”だって、ね」


 ナギサとリースは、顔を見合せた。きっと、“似た者親子”だと知った翡翠は、驚いたように目を丸くさせて、ぱちりぱちりと瞬くだろう。出雲と同じように。翡翠の様子を想像しながら、2人はまるで悪戯をする子供のように、にんまりと笑った。

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