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MESSIA  作者: 硝子
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それぞれの想い

 しん、と静まり返った黎明れいめいの里。

 日が落ち、真っ暗になった辺りには誰もいない。それを見計らって、そろりと扉を開け、片側の足で土を踏んだ。

 じゃり、じゃり、じゃり。足で土を踏む度に、砂と石が押さえつけられた小さな音がするが、なるべく音を立てないように、ゆっくり足を動かす。


「ちょっと、何処どこに行く気?」


 数歩足を進めたところで、背後から声をかけられた。顔を見なくても分かる。声の主は、リースだ。


「……お前、分かってんだろ」


 ヴェンはリースに背を向けたまま、言葉を投げた。


「確かに、私はあんたが今、何処どこに行こうとしてんのか大体分かってる」


「ならほっとけ。俺が居ない方が、お前にとっていい筈だろ」


 リースは自分を嫌っている筈。自分がナギサの傍から消えたなら、リースは喜ぶはず。そんなリースが何故自分を引き止めるのか。ヴェンにはその理由が分からなかった。


「確かにそうね。私、あんたのこと、嫌いだし。自分からナギサちゃんの傍から消えてくれるのなら、そりゃサイコーって感じ」


 リースから予想通りの答えが返ってきた。けれど、どこか悔しそうで悲しそうな、複雑そうに顔を歪めた。


「……けどね。あんた、昼間のナギサちゃんとオーディアス卿の会話、聞いてたでしょ?」


「だったらなんだ」


「自分の使命より、救世主メシアじゃなくて、ナギサちゃんとして、あんたを選んだ」


「……」


 『 ヴェンはヴェンよ』と言ったナギサの言葉が、ヴェンの頭の中で再生される。ナギサがそう言ってくれたこと、自分を庇ってくれたことに、ヴェンの心はとても暖かくなった。とても嬉しかった。


「あんたが居なくなると、ナギサちゃんが悲しむの。私はそんなナギサちゃんを見たくない。……だから、あんたを止めただけ」


 自分が居なくなるとナギサが悲しむ。その言葉通り、自分が居なくなるとナギサは悲しむだろう。けれど、ヴェンはここでナギサの元へ戻るわけにはいかなかった。


「……そうだとしても、俺はあいつの傍に居ることは出来ない」


「それはあんたが破壊者ネメシスかもしれないから?」


「それもあるが。……あいつを母様のような目にあわせるわけにはいかねェ」


 ごうごうと燃える炎の中。膝をついて倒れている女性が、必死に何かを伝えてようとしている映像が、ヴェンの頭の中で再生される。

 ナギサをあんな目に合わせたくない。あんな思いは、もうごめんだ。


「あんたのお母さん? って、ちょっと!」


 「待ちなさいよ!」というリースの怒りの声が背後に投げかけられるが、ヴェンは無視をして歩き進めた。

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