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MESSIA  作者: 硝子
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燃える静かな炎


「何の御用ごようかしら?」


 ナギサは怒っていた。外見からは分からない、静かに燃える炎のような怒りだ。


黎明れいめいの里はクルセイド軍の干渉を受けない場所。何故、貴方達がここに?」


 黎明れいめいの里は伝説に深く関ったと言われている、神聖な場所。本来ならば、和人イニシオ救世主メシアしか足を踏み入れることを許されていないのだ。なのにどうしてこの男達が黎明れいめいの里に居るのか。


「そう邪険じゃけんにされるな。救世主メシア様」


 「貴方達を歓迎していません」そう目線だけで語るナギサに対して、オーディアス卿はにこやかに笑う。しかし、そのにこやかな笑顔がナギサには不気味に感じられた。この男が、こんな風に笑うなんて、


(嫌な予感しかしない……!)


 「何か目的なの?」と目線だけでオーディアス卿に問いかけると、オーディアス卿はふっ、と息を吹き出して片側の唇を吊り上げた。


「我々の要求は、ただ一つ」


 ぴっ、とオーディアス卿がナギサの目の前に人差し指を立てる。


「あの男を引き渡して頂きましょう」


「あの男?」


「そうです。貴方様のいつも傍に居る、得体の知れないあの派手な男ですよ!」


「……ヴェンのことかしら」


 ナギサの言葉に、「その通り」とオーディアス卿は目で語った。


「あの男は、10年前に、一つの村を焼き尽くしているのですよ」


 「あの村のように」とディヴァイン神殿でヴェンの姿をした男が言った言葉が、ナギサの頭の中でリフレインする。10年前、同じような事がヴェンの身に起きていたのだろうか。


「その男の名は紅蓮ぐれん。その後の消息は不明でしたが……まさかこんなに近くに居たとは!」


 オーディアス卿の大きな声が辺りに響き渡る。愉快そうに笑うオーディアス卿と対照的に、ナギサの機嫌はどんどん下がっていく。


「……何を仰りたいの?」


 オーディアス卿が言わんとしている事が、ナギサには予想が出来たが、それを口にすることはしなかった。オーディアス卿の口から“その言葉”を聞くまでは。


「はっきり言いましょう。あの男こそ、破壊者ネメシスだと私は確信しているのです!」


「ヴェンが破壊者ネメシス……」


「そうです。……救世主メシア様も心当たりがおありなのでは?」


 まるで、オーディアス卿はディヴァイン神殿でヴェンが炎を操ったこと、ヴェンの見に起きたことを知っているような口ぶりだ。


「我々がここに来た理由はもうお分かりになったでしょう」


「オーディアス卿がここに来られた理由は分かりました」


「そうでしょう。そうでしょうとも! では、あの男を引き渡して頂けますね?」


 オーディアス卿はナギサが自分の意見に同意するものだ、と思っているのだろう。にこにこと実に機嫌が良さそうだ。

 しかし、ナギサはその答えにイエスと言うわけにはいかなった。いや、絶対に無かった。


「それはできません」


「何故です!」


「仮にヴェンが紅蓮ぐれんという人だったとしても、私には関係のないこと。ヴェンはヴェンよ」


 ナギサは強い意志を持った瞳でオーディアス卿を見据える。


紅蓮ぐれんなんて人、知らないわ。私が知っているのはヴェンという人だけ」


 そう。ヴェンがユニティを訪れた時から。あの日から、ヴェンはヴェンになったのだ。


「お引取りを」


 ナギサはキッパリと言い切って、オーディアス卿を拒絶した。

 ナギサの言葉を聞いたオーディアス卿は、フン、と苛立ったように鼻を鳴らす。


「まあいいでしょう。貴方もいずれ私の話、いや……ご自分の使命が分かる時が来る筈だ」


 オーディアス卿はくるりと踵を返し、後ろに居た部下達に「行くぞ」と声をかけた。オーディアス卿が声をかけると、部下達は「はっ! オーディアス様!」と返事をした。


「……ここで私にあの男を渡さなかったこと、きっと後悔しますよ」


 後ろのナギサを伺うように、ちらりとオーディアス卿が首を動かした。さっさと去っていくオーディアス卿の後姿を見ながら、ナギサは若干の不安は感じたが、それよりもすっきりとした爽快感を感じているのだった。

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