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MESSIA  作者: 硝子
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同じ姿をした誰か


 コツコツ。コツコツ。

 ナギサ、リース、ヴェン、翡翠はディヴァイン神殿の中を歩いていた。ナギサ達が歩く度に、靴底が床に当たる音が響く。

 日が落ちた夜だということもあって、ディヴァイン神殿の中はヒヤリとした冷たさと、しん、とした静けさをまとっていた。


「それにしても怖っ! 幽霊でも出て来そうな感じ!」


「幽霊って、リース……」


 リースの言う“幽霊”では無いかもしれないが、得体の知れない“何か”が突然現れてもおかしくない雰囲気だ。


「大丈夫だ。その時は私が排除する」


「翡翠さん頼もしい!」


「本当ね。ヴェン?」


 ナギサはヴェンに話を振った。何故なら、神殿に足を踏み入れてから、1度もヴェンの声を聞いていないからだ。


「今宵はこんなに明るい満月だ。何が起きてもおかしくはない」


「……」


 何かがおかしい。そうナギサの直感が告げている。姿形はどこからどう見ても紛れもないヴェン本人だと言うのに、“違う”と心がそう訴えるのだ。


「ヴェン、……いいえ、」


 片眉を上げて怪訝そうに顔を歪めるナギサは、不敵な笑みを浮かべるヴェンを見て、それは“確信”へと変わっていく。


「貴方……誰かしら?」


 ナギサはその“確信”を、確かめることにした。


「救世主が私を知らぬとは……愚かな」


「きゃあ!」


「くっ!」


「!」


 ヴェンの姿をした男が、手を前にかざすと突風が吹いた。その風の強さでナギサとリースは後ろへ飛ばされてしまったが、翡翠は術で防ぎ、後ろへ飛ばされることは無かった。


「いたたたた……何? あいつどうしちゃったの?」


 飛ばされた勢いでしりもちをついてしまったリースが、腰をさすりながら立ち上がった。


「リース、あれはヴェンじゃないわ」


「え? どういうこと?」


「その通り。今、目の前に居るのはヴェンだが、ヴェンではない」


 「ここは私に任せろ」と言って、翡翠は首に掛けていた数珠を胸の前でかざす。


「かの者を封ぜよ! 急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう」 


 翡翠が数珠を胸の前でかざすと、ヴェンの姿をした男の立っている床の周りに五芒星ごぼうせいが現れた。その五芒星ごぼうせいはまるで柵のように、ヴェンの姿をした男の周りを取り囲むように光り輝いた。


「お前は……人形、か」


「!」


 ヴェンの姿をした男が声にした“人形”という言葉に、翡翠はぴくりと肩を震わせて反応した。

 ヴェンの姿をした男が手を前に振り降ろすと、ヴェンの周りを柵のように囲っていた光は消えてしまった。


「人形如きの術、私には効かぬ」


「やはり……」


 翡翠はその続きの言葉を声にしなかった。しかし、「私では」と口が動くのをナギサは見てしまった。


「この地も焼き尽くしてしまおうか……あの村のようにな」


「あの村?」


 どういうことだろうか? ナギサが思考の海に漂っている間に、ヴェンの姿をした男が手のひらを胸の前でかざす。すると、ナギサ達の周りを赤い炎が囲った。

 ナギサ達の周りを柵のように囲った赤い炎は、段々と範囲を広げ、ナギサ達に迫ってきた。


「まずいわね……このままじゃ私達は燃えてしまうわ」


「……」


「……」


「リース? 翡翠さん?」


 翡翠は先程ヴェンの姿をした男に“人形”と言われてから、まるで魂を抜かれたように呆然と立ちすくんでいる。同じようにリースも、びしりと固まっている。それに、顔色が悪い。


「はぁはぁはぁ……」


「リース?」


「嫌! 来ないで!」


「リース!」


 リースの呼吸が荒くなり、リースはガタガタと身体を震わせていた。まるで取り囲む炎に怯えているように。


「熱っ!」


 いよいよ周りを取り囲んでいる炎がナギサの足元まで迫ってきた。考えろ。考えるのよ、ナギサ。ナギサは頭の中をフル回転させて、この状況から逃げる方法を考えた。ヴェンが、ヴェンに戻ってくれさえすれば……!


「ヴェン……!」


 ヴェン、お願い。戻ってきて。ナギサは願い、縋るようにヴェンを見つめた。


「……じゃねェ」


 ナギサ達の足が、いよいよ赤い炎で燃えようとした時、ヴェンの姿をした男がぼそりと呟いた。


「俺の仲間に、手を出すんじゃねェ!」


 ヴェンだ。ヴェンが戻ってきてくれた。ナギサはそう実感した。良かった。本当に良かった。ナギサが嬉しさの余り、「ヴェン!」と大きな声でその名を呼ぼうとした時、ヴェンの大きな身体がぐらりと傾いた。

 ヴェンの身体がぐらりと傾いたと思ったら、そのまま床にどさりと倒れてしまった。その拍子にナギサ達を囲んでいた炎も消える。


「ヴェン!」


 ナギサが慌ててヴェンに駆け寄ったが、ヴェンの意識は無かった。どうやら気絶しているようだ。


「……ヴェン」


 ナギサはその名を呼んだが、当然ながら返事は無い。ヴェンから聞かなければならないことはたくさんあるが、ヴェンがヴェンとして戻ってきてくれたこと。その嬉しさでナギサはの顔は緩んでしまうのであった。

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