小説家ってなに
「ピピピピピピ」
鳴り続けるめざまし時計に少年が手をもばし止めようとするが疲れていたのもあり手元がおぼつかず時計を床に落としてしまう。
少し冷たい風の吹く四月一日の早朝。
パソコンを開いたまま机で寝落ちしてしまっていた少年は眠さが残る中床に落ちためざまし時計を拾い上げ立ち上がると同時にスマホの画面をみてにやけている。なぜなら今日は少年にとって初めてのファンとの交流という大事な大事な日だからである。
少年はアイロンのかかった皺のない制服に腕を通すと同時に朝食を食べることなくパソコンと財布を鞄にに詰め込み家を出た。すると家の前で少女が待っていた。
「悠馬遅い毎回毎回待ち合わせ時間に来ないってどいうことなの?」
とその少女はしかめっつらで悠馬の方を見る。
「未来ごめんて」
と心のこもっていない返事を返すと未来はため息をつきながら学校の方に足を向ける。
桜の花びらの舞う通学路を歩きながら悠馬は未来が普段よりテンションが高いことに気がついた。
「なんでそんなにテンション高いの?」
と悠馬に問われ少し恥ずかしがりながらも
今日前々から好きだった小説家と会う約束をしていることを話し始めた。
その時悠馬は初めて未来にそのような趣味があったことを知ったと同時に気になることが一つ増えた。それはどこで会うかである。
なぜそんなことが気になったのか。その理由は単純で今日ファンと会う場所と未来が小説家と会う場所が同じの場合、悠馬は誰にもラノベ作家をしていることを言ってないのでバレてしまうというのが不安だったからである。それに今日会うファンの女の子にデレデレできなくなるのも嫌だったのである。
悠馬はこれらあ不安だったので未来に会う場所を聞いた。すると
「会う場所は喫茶店エルフ」と答える未来。その瞬間、悠馬を一気に不安の渦が飲み込んだ。未来が今日会うファンなんではとも思い始めたがその考えがすぐに違うということに気がついた。
なぜなら、共通点がないからである。今日会うファンの女の子はイラストレーターをしていて悠馬の代表作である「黄昏の君に」のヒロインである藍田茜音のイラストをツイッターのダイレクトメッセージに送ってきてくれたことをきっかけに交流を持ち始めた。そのイラストは今までのどの挿絵よりも悠馬のイメージにドンピシャで一緒にラノベを作りたいと話を出した結果今日会うことになったのだが、未来は悠馬の記憶にある限りでは、絵がそもそも上手くない。それに家がとても厳しく家では勉強をさせられていたためイラストレーターとして働くなんて無理なのである。それが分かっていながらどうしても今日会うファンが未来である可能性をゼロだと決め込むことができたいなかった。むしろ今日会うファンが未来であってほしいとさえ思い始めてしまっていた。
なぜなら悠馬は未来に好意を抱いていたからである。しかしその気持ちを伝えることはまだできていなかった。理由は単純である。
悠馬が恋愛に対してとてつもない内気なタイプだからである。だからこそ今日会うファンが未来なら同じ趣味を共有できると思ったのである。そんなことを考えながら歩いているうちに学校に着いた。ウキウキしながら新学期が始まった。