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ショートショート6月~

無賃乗車

作者: たかさば

「つかまじだりい。」

「そうだね、めんどくさいよね。」


「はよあっち行ってくんねーかな。」

「まあまあ、急いでもいいことないって。」」


「俺めっちゃ待ってんだけど。」

「僕だって待ってるさ。」


「もっとこう、フットワークの軽いやつにしとけばよかった。」

「そりゃ君の見る目がないからさ。」


「見る目があったらこんなことしてねえべ?!」

「見る目があっても運が悪いと僕みたいになるよ?」


「クソみてえな会話してねえでさあ、早く向こう行ってくんねえかな。」

「乗せてもらうのに、君はちょっと言葉が過ぎるよ・・・。」


「どーせ聞こえねえんだからいいんだよ!!!」


チラッ…。


「「!!!」」


「おい…こいつ、俺らのこと、見た?」

「ヤバイ、見えてるかも?」


「ヤベえ奴じゃ、ねえよな…?」

「それは、分からない。」


「消されるか?」

「分からない…。」


どうしよう。


近所のおばあちゃん見かけたら、変なののっけてんの見つけちゃってさあ…。

遠目からみた感じ、どんな奴かよくわかんなかったから近づいてみたらただのアホだったんだけど。


完全に気付かれてるよね、ううむ。


わたしゃただの人だからあんたら消すことはできないんだけどさあ。

おばあちゃんに乗ってる奴むやみに引き寄せちゃうと後ろの武士の人まで引っ張っちゃうんだよなあ…。


さあて、どうするか。


「ババアよりもこいつのほうが動きそうじゃね?」

「おい!!聞かれてるかも知れないんだぞ?!」


「そんなただの偶然だろ!見える奴なんて今まであったことねえし!!」

「何でそんなに強気なんだよ!」


「このババアじゃ俺の行きたい場所に着くまでにくたばりそうだからな!俺はこっちの・・・」


ずぶっしゅうぅううう!!!…ざんっ!!!


あーあ。


おばあちゃんの後ろの武士が怒っちゃったじゃん。

乗っけてもらってんのにそんな失礼な事言うからさあ。

消えちゃったよ、はあ。


あ、ヤバイ。


「このひとは、やめてあげて?」

「…なんだい?」

「ああ、ゴメン、こっちの話だー。」


武士が、もう一人の兄ちゃんに切りかかるのを止めてくれた。

下手に切って悪いもの積み重ねちゃうとさあ、武士のほうにも悪い影響でちゃうしさあ…。

突然私が変な事を言い出したからおばあちゃん困惑しちゃったよ。


「見えてるんですね。」


見えてるともさ。


「そちらに移ってもいいですか。」


私はこくりと頷いて。


「じゃあね、おばあちゃん、また明後日。」

「はいよ。」




テックテックと歩く私の肩に気の弱そうな兄ちゃん。


「あのヤンキーは何でいきなり消えたんですか。」

「アレはおばあちゃん守ってた武士が怒っちゃったんだよ。」


「武士が憑いてたんですか、僕には見えなかった。」

「君らじゃ見えないと思うよ。」


「僕は低級なんですかね。」

「まだ上がったことないだけだよ。」


「どうしたら上がれますかね。」

「上がりたいの?」


「よくわかんないですね。」

「じゃあまあ、しばしついてきなよ。」


「いいんですかね。」

「君のほうこそ、いいの?後悔すんなよ?」




道を、少しずれる。


「おやこんにちは。」

「こんにちは。」


大目玉のおじさんだ。


「こ、これはいったい?!」

「狭間だね、君ね、しばらくここで勉強させてもらいなさいな。」


「ぼ、僕はこんな化け物のいるところなんか…。」

「なんだい、この坊主は。」


ああ、初めて見る狭間の住人におどろいてるなあ。

…化け物発言はよろしくないぞ。


「あれ、こんにちは、珍しい人連れてるね、どうしたの。」

「なんか私に乗りたいって言うから。」


のっぺらねえさんまで出てきたよ。

…あれ、兄ちゃんの様子がおかしいぞ。

震えてるじゃないか、今は梅雨だ、寒い時期じゃない。


「坊主たいした度胸だな、よし、俺が面倒を見てやる。」

「いえ、僕はそのっ…!!!」


「たぶんこの兄ちゃん自縛からの地縛の浮遊だと思う。」

「まだ上がれそうにないな、ちぃと、足りん。」


「…お願いしてもいい?」

「私も手伝っていいのかい?」

「もちろん。」


「あのね、貴方は色々足りてないから、ここで色々学びなさい。」

「ぼ、僕をここに放り出していくんですか?」


「君、自分は自分の人生を放り出したくせに、何いってんの。」



「え、ちょっと!!待って、やだよ!!僕こんなところは、ちょっと!!ちょっとぉおおおお!!!」



無賃乗車の罪は重い。


私は兄ちゃんをその場に下ろすと、それた道から正規の道へと戻っていった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 自縛からの地縛の浮遊、なんというパワー そして当然の徳システム [気になる点] やっぱ連載したら楽しそうですね [一言] そういえば食堂で金足りなくてヤベってなった事あったなー。
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