表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/295

(更)入学式編 3

 入学式が終わると新入生は講堂の横の通路に集まった。


 これ以降全員、寮で暮らすことになる。


 そのため、一緒に来た両親と挨拶をする時間が与えられるのだ。


 笑顔で話す者、初めての寮生活で涙を流す者、友人同士で話し合う者、様々だ。


 でもあたしは特段両親は居ないし、一応保護者である師匠も行方不明である。


 ……どうするか。


「アリスーーー!」


 ……おっとそうだった。


 あたしには二人の天使が居たではないか。


 しかも同じ花組となり、一緒に暮らしていく天使が!


 さあ、抱き着いてきたまえ!


 ボフッ。


 振り向いた瞬間、サチとコウがあたしに抱き着いた。


 ああ!やはりだ!


 昨日教科書を買った時に会った時から思ってたけど……やはり二人とも!素晴らしい抱き心地だ!いい匂い!柔らかい!妹のコウに至っては……胸が!大きい!やっこい!


 ……ただ二人とも、それは一体どんな表情なんだ?笑顔と涙で良く分からん表情になってらっしゃいますよ?


「……二人とも、入学式だよ?笑顔で行かないと!これから一緒に暮らすんだからさ!」


 ちょっとイケメン風に言ってみた。


「だって!月組に行くと思ったんだもん!そしたら何故か花組に決まって……嬉しい通り越して……もう良く分かんない!」

「まったく……ほら二人ともこれ使って」


 ハンカチを取り出して、二人に渡した……ハンカチを二枚持ち歩くような性格ではないので一枚だけど。


 ……何故か二人は一枚のハンカチを起用に半分ずつ使って涙を拭いていた。


「……ぐすっ。……所でアリス、その子は誰?」

「ん?」


 振り返ると、あたしかにそこには……一人の少女が居た。


 銀髪で片目がオッドアイの美少女だ。


 ここに居るってことはあたしと同じ新入生か。


「……えーと……君、何処かであったっけ?」


 少女が静かに頷く。


「……昨日」

「ふぁ!?」


 昨日!?


 あたしが!?このあたしが、こんな美少女に会って忘れた!?


 ありえん!


 どこだ!何処で会った!脳をフル回転させろ!思い出せえええ!


「香織!どこ行ってたの!私この学校慣れてないから勝って動かない……で……あ!」

「え?……あ」


 香織……つまりこの美少女の事だ。その子を探していたお母さんらしき人と目が合った瞬間、あたしは思い出した。


 あたしは自分の杖を購入した帰り、店の路地裏から悲鳴が聞こえたから見に行ったんだ。


 そしたらちょうどこのお母さんと娘……さんが拉致されそうになっていたのを発見、美人だったから助けようとして……師匠が助けたんだっけ?


「あ……ああ、あの時の……ん?香織?香織!?」


 もう一度母親が香織と呼ぶ少女を見る。


 香織ちゃんは静かに頷く。


 おかしくねえ?


 だってあの時、髪の毛真っ黒だったよ?目の色も違うんですが!


「アリス……さんでしたっけ、あの時はありがとうござました」

「いえいえ……あのーつかぬことを聞きますけども」

「……聞きたいことは分かってます。この子は私の子ではありません。正確には戸籍上では親子ですが、血縁はありません」

「……なるほど」


 そりゃそうか、この母親から銀髪でオッドアイの美少女が生まれるわけが……まあ、ハーフならまだ分かるけど、このお母さん、指輪付けてないから未婚だ。


「紹介が遅れました。香織の母西村柚葉と申します」

「アリスです。香織は何処の組?」


 香織に聞くと、何故か抱き着いてくる。


 ……なんで?いや、まあこんな美少女に抱き着かれるのは控えめに言っても最高ですけど。


「アリスさんと同じ花組ですよ」

「へえ」


 そうか、これから一緒に暮らすから抱き着いたのか……いや、理由になっとらんけど。


 ……ん?ちょっと待てよ?


 となると、これから先、あたしはずっと香織を抱きしめてなでなでして良いということですか!?


 ……やばい!サチやコウもいるけど、香織まで居るとか、ステア魔法学校……桃源郷にでもなったか!


「何してんだお前」

「おや、師匠」


 何時から……というか今までどこに居たのか師匠があたしに声を掛けた。


「どうしたんすか?今までどこに?」

「校長と話していた。というか一応俺はお前の保護者だ、来るのは当然だろ?」

「ほう」


 師匠は何故かサチとコウ、香織の方へ顔を向ける。


「……サチ、コウ……そちらは香織だったか。……これは神報者ではなくこの馬鹿……アリスの保護者としてのお願いだ。同じ寮で暮らす者としてこいつに色々教えてやってくれ。こいつは識人としてまだ日が浅いんでな、よろしく頼む」


 あたしにとって、神報者がいまだ何をする職業の人か知らんけど、香織はともかく、名家の出であるサチとコウが驚くってことは神報者ってそれなりの地位なのか。


 ……ていうかさ、一応あたしあんたの弟子よ?馬鹿って何よ、馬鹿って。


「それにしても少しうるさいな。ここでは普通なのか?」

「知らんけど、師匠が来てることも関係してません?普段来る場所じゃないでしょ?」

「多分それもあるとは思うが、別の要因もあるだろ。うるさいのはあっちだ」


 師匠が指さす。


 確かに廊下の向こうでは何人かの生徒と教師陣が言い争っているのが見える。


 でもその内の一人がこちらに気づくと、何人か人を連れてこちらに歩いて来た。


「……何かこっちに来そうなんすけど」

「そのようだな」


 そして、一人の女子生徒があたしと師匠の前に来る。


 腰まで伸びた漆黒に似た髪の毛、整った顔、サチもコウも美少女だけど、この子も別の意味で美少女だった。


 凛……清廉という言葉が一番似合う。


 雰囲気が俗に言う、お嬢様だった。


「ごきげんよう、龍様」

「お前は……」

「あら、私としたことが申し訳ありません。西宮が二女、西宮雪と申します。新入生としてステアに入学しました。以後お見知りおきを」

「そうか」

「あたしは!」


 あたしも新入生として、何故か便乗して挨拶しようとした。


「貴方に興味はありません。やって来たばかりの識人なのでしょう?なら知らなくて当然、そこの没落にでも聞いてみたら?」

「あ?」


 あーなるほど、こいつは……絵にかいたような悪役令嬢だ。


 一発殴りたいけど……我慢だ。


 何故かあたしの後ろに隠れているサチとコウさんに聞いてみよう。


「……で?このクッソうざいお嬢様は……誰でしょう?」

「……五大名家の一つ、西宮家の二女。西宮家の当主は代々女性だけど、結婚するのは政治家、父親の西宮輝義は国会の野党第一党の代表だよ」

「わーお」


 つーか、与党じゃなくて野党かい。


 旧日本じゃ、あまり政権交代してるイメージ無いけど、この世界じゃどうなんだろうか。


 なんで同じ一年なのにこんなに偉そうなのか。


「龍様、一つお伺いしても?」

「答えられるなら」

「何故阻止他の霞家の二人を花組に入れたのでしょうか?代々名家の人間は月組に入るはず。それが何故?納得のいく説明を求めます」


 旧日本の国会でも似たような光景を見た事が。


 何?野党の党首の娘も同じような性格になるの?


「……何故俺に聞くんだ?俺は学校の関係者じゃない、設立に関わりこそしたがそれ以降は俺は関与していない」

「それでもある程度の発言力は持っているでしょう?名家の人間としてはこのような前代未聞の措置に断固抗議いたします。納得のいく説明を」

「……」


 何故か師匠は黙ってしまった。


「師匠?」

「それにその方もです」

「あ?なんであたし?」

「確かに神報者を継ぐ者に明確な法律はありません。神法には神報者の後継者は神報者が指名することになっています。しかし、神報者は天皇陛下の助言役、陛下の国事行為は国会の承認なしにはできない……国会の関与、名家会議の助言なしに弟子を取るなど会ってはならない。前の件も含めてご説明を!このままでは生徒が納得しません」


 いくつか言いたいことがある。


 神報者って……天皇陛下の助言役なんすか!今初めて知りましたけど!?


 神報者……とんでもない役職の弟子に就いちゃったよあたし!


「なるほど……分かった。説明しよう、まず前の件だが……学校の判断だ、以上」


 雑な説明が始まりましたよ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ