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(更)北条家事件編 龍編 2

(σ・ω・)σ

『陛下。

お元気でいらっしゃいますでしょうか。我が北条家は未だその正体悟られておりませんことをご報告すると共に陛下が祖国である北国を統一なされ、少しずつ国を纏めていく様子を聞き日々お喜びの賛辞を贈りたいと思う所存でございます。

さて、今回報告するのは私が所属している名家中心の政党がついに政権を取りました。これにより北国の日本統治までの準備が整った形でございます。

後は陛下が日本の皇族と入れ替わるようにして日本の統治を持っていただければ北国400年来の悲願がついに叶うところにございます。

後は陛下のご命令一つで、日本国は北国の統治下になることをご報告するとともに失礼いたします

北条大次郎』


 バンッ!


 龍が紙を読み終えるや否や拳を机にたたきつけた。


 顔は真っ赤に染まり、誰がどう見ても怒り心頭だと分かるだろう。


(北条家……大次郎、やってくれたな)


 だが龍は冷静だった。


 今すぐにでも北条大次郎を切り伏せに行こうという感情が芽生えるが、長年の経験から取り乱しても北条家に利するだけだと知っているからだ。


「……この手紙が届いていないと奴らが感ずるのは何時頃だ?」

「……向こうは陸路……三週間程かと」

「奴らよりも早く北国に入り、奴らよりも早く戻ってこれるか?」

「問題ないかと」

「ならやって欲しいことがある」

「何なりと」


 龍の指示を聞いた男は気配を消し、その場から消えた。


 そして受話器を手に取ると、アリスに電話をかける。


 そして電話を終えると、もう一度ある場所にかける。


「衣笠だ」

「俺だ」

「……どうした?声色が変だぞ?」

「分かるか?」

「何年の付き合いだと思ってる」

「緊急で申し訳ないんだが」

「かまわん」

「明日、識人会議を招集する」



 識人とは本来、国を直接運営する権利を有していない。


 その国を運営するのはその世界で、土地で生まれた人間であるべきという考えが根底にあるからだ。


 そのために識人は国家運営を支える存在にしかなりえず、民間で働く以外では各関係省庁のトップ補佐という形でその職務を全うするのだ。


 だが、残念ながら政府自体が腐食し、自浄作用が叶わないパターンも存在する。


 そのために存在するのが『識人会議』である。



 翌日、転保協会の地下の一室……識人会議以外では使われない部屋の鍵が開けられた。


 因みに龍の趣味で和室になっている。


 そこ集まったのは第二日本国警察庁長官識人補佐、警視総監識人補佐、また各式人補佐を継ぐ予定の補佐副官である。


 因みに本来議長席には龍が座るが、会議の招集者が龍であることもあって今回は衣笠が座ることになった。


「それで?今回の招集理由は何ですかな?」


 最初に口を開いたのは警察庁長官補佐の斎藤博人だ。


「申し訳ありませんが、承知していません」

「はぁ……普段であればもう少し猶予があるはずですがね」

「それだけ急を要するのでしょう」

「待たせたな」


 そこに冷静な口調で龍が現れる。


 だが、誰が見てもその表情は怒りに満ちているのが分かる。


「龍、昨日の電話でも異変があったが……何で怒ってるんだ?」

「これを見ればわかる」


 そう言うと龍は紙を置いた、神報殿で模写したものだ。


 但し、現代人では読めないため龍が読みやすくした。


 全員がそれを読み始め、同時に顔が険しくなる。


「……なるほど、もしこれが事実であれば霞家が今日まで存続できていることに疑問が浮かびますな。400年前……となると旧日本だと江戸時代らへんですか?一族皆殺しにされても文句は言えない所業ですな」

「その理由はここに書いてある」


 龍が先代の書いた方を見せた。


「これは?」

「俺の師匠が書いたものだ」

「ほう?」

「……なるほど、お師匠さんが言うには帝……つまり天皇陛下を殺めようとしたものは霞家に扮したこの入れ墨を入れたものだというのだな?……だが何故お師匠様はすぐに調べなかったんだ?」

「簡単だよ。この後すぐにファナカスとの戦争が起きたんだ」

「なるほど、調べようにも不可能だったのか」

「で?この入れ墨に見覚えがあるのですかな?」

「つい先日神報殿に入ろうとした時に、侵入しようとした奴の首に入っていた」

「皇宮警察か?」

「いや、もしそうなら制服を着ているだろ?それに袴を着ていた……考えうるのは北条家くらいか」

「……なあ龍一つ聞いていいか?」

「何だ?」

「何故会議を招集した?」

「……どういう意味だ?」

「普段のお前なら頼まれもしない限り、神報殿の書物を写してはこないしお前から会議を招集することは無いはずだ。なら何故だ?」

「……」


 龍が目線を逸らした。


「まさか!アリス君の為か!?」

「……」

「良いか龍!確かに弟子の願いを聞くのも師匠の役目だとは言ったさ!だがそれだけの為に会議を招集するのはやりすぎだ!」

「少しいいですかな?」


 割って入ったのは斎藤だった。


「龍さん、仮にお師匠さんのいうことが本当で、400年前の犯人が北条家だとしましょう。ですが現在の刑法では400年前の事件を裁くことはできません」

「そんなことは知ってるよ」

「では何故か我々を招集したのです?」

「アリスの件はついでだ。今日の本題はこっち」


 そういうと龍は二枚の紙を取り出す。


 漢文の原文と和訳だ。


 全員がそれを読みだすが……すぐに顔つきが絶望の色に変わった。


「これは……本当か?これがもし事実なら……国家反逆罪……捜査を進めていけば国家機密保護法違反……色んな罪のフルコースになりますな。死刑は免れない」

「龍……一応聞くが、これをどこで?」

「……部下が拾った」

「そうか」

「どうだ?会議を招集する理由にしては十分だろ?まだ足りないか?」

「十分すぎる……ですが相手は北条家当主です。警察を上げて動くにしても逮捕状請求までかなり時間が……」

「三週間」

「え?」

「出来れば三週間で逮捕まで行きたい」


 全員が絶句した。


 当然だ、一般人を通常逮捕するにだって逮捕状請求するのに証拠の確保、書類を書くのにかなりの時間を要するのだ。


 相手は名家で議席を持つ、北条家。


 それを今から三週間で逮捕までこぎつけるのだ。


 不可能ではないかもしれないが、かなり無茶である。


「かなり無茶な要望ですね。何故三週間何ですか?」

「この手紙が届いていないと北条が気づくまで早くて三週間ぐらいなんだよ」

「なるほど、三週間経てば自ずと北条家が異変に気付くと……しかしそれが何だというのです?ここまでの証拠があれば確実に北条家の逮捕は免れないでしょう?急ぐ理由であるんですか?」

「北条大次郎が逮捕されるということは自動的に皇族守護から外れるということだ。そうなれば次に帝が指名するのは自ずと魔法戦闘に置いて右に出る者はいない霞家になる。しかし、北条家が霞家を名家から除外する動きを見せている、一度名家から外れたものが……没落した名家が名家に戻った例はない。つまり霞家は没落したという汚名で除名されたという状況で皇族守護に就くということになる。それがどうことを意味するか分かるか?」

「なるほど、本来名家しか務めることが出来ない皇族守護を名家から除名された、かつ没落したという汚名を着せられた霞家が務める……霞家への批判、そして任命した帝への批判は免れない……か」

「現在、北条家が霞家に出している条件は霞家の跡取り娘である双子姉妹をステアから転校させること。転校させれば名家からの除名は無くなる、しかしステア出身という肩書は失い、名家の中でも格が下がるだろう。それを阻止するためにアリスには二人を匿ってもらっている。アリスに命じたのは約三週間だ」

「なるほど、アリスさんが二人を匿える限界が三週間、それを超えれば霞家は名家から除名される……か」

「だが、仮に三週間耐え抜けたとして、大次郎がそう簡単に白状するだろうかね?」

「それは問題ない」


 そう言うと龍はある物を取り出した。


 ……ボイスレコーダーである。


「……ウォークマンかそれ?」

「名前などどうでもいい。これがあいつを自白させるいい道具になるはずだ」

「分かりました。……ですが一つ聞きたい。今回逮捕するのは宮内庁の人間であり、会議には大抵総理補佐が同席するのが普通では?何故今回は居ないのです?」

「今の総理は名家の人間だ。総理から北条に情報が行くのはまずい。すべての事が済んでから話すさ」

「分かりました」


 この場に居る全員が同意した。


 そして今後の行動の詳細について話し合うと、本来会議の終了の儀式だが、本来は龍が行うものだが、衣笠が行うことになった。


「では今回は議長が私ということで……状況開始の音頭は私でよろしいですかね?」

「「「異議なし」」」

「……んん!それでは」


 衣笠は深呼吸する。


「我々が何だ!」

「「「転生者なり!」」」


「我々は何故ここに居るか!」

「「「旧日本にて命を失ったが!この世界にて再び生きる機会を貰ったためなり!」」」


「ならば我々はどうするべきか!」

「「「この国にてまた生きれることに感謝し!この国に奉仕し!この国危機が迫らんとするとき、無欲にこの国に為に働くべし!」」」


「「「我ら一度死んだ身!ならば!」」」

「「「無欲に国に奉仕すべきと心に刻む者となるべし!」」」


 儀式が終わった瞬間、全員の意識が一つになったかのように表情が変わると、部屋を後にした。


「衣笠、緊張してたか?少し嚙んだだろ?」

「……うるさい」


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