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(更)北条家事件編 アリス編 8

(・Д・)ノ \(°Α°)

 ワイドショーのキャスターが事が動くまで、これまで名家会館でここまでの騒動が起きたことはない、前代未聞だ何だと言っているのをその場にいる全員が見守っていた。


「何も起きないっすね」

「他の国の警察は知らんが、日本の警察は基本的に逮捕できる確率が極力上がるまで被疑者を泳がせる気質があるからな。あくまで証拠が揃って逃げられないようにするまで入念に準備するんだ。まだそのタイミングではないんだろう」


 談話室の全員が何故ここまで来て警察が動かないのかを考察している時だった。


 しかし、事の重大さが分かってなかったのか、香織だけは部屋の外で鳴っていたある音に気付いた。


「……香織?どした?」

「電話の……音」


 香織がそう言うので、あたしは耳を澄ますと確かに電話の鳴る音が聞こえる。


 どうやら寮母室から鳴っている様だ。


「先生電話です」

「……まったく」


 私も何が起きているのか知りたいのに……といった様子で重い足取りで部屋に向かっていく。


 だけど数十秒後、今度はまた別の意味で焦った表情の先生がドアを思い切り開けた。


 だけど今回はさすがに全員ピクっとするだけで視線はテレビから動かない。


「何してんの義姉さん?」

「アリス……電話だ」

「……誰からっすか?」


 何故か先生はあたしにだけ聞こえるように耳元まで近寄る。


「……恐らく今現在進行形で名家会館に居るであろう人物からだ」

「……!それって、まさか……?」

「そうだ」


 あたしにだけ言った理由が分かった。


 現実ここまでの騒動になっているのだ、ここで大っぴらに当事者である師匠からだと言えばここでも別の混乱が発生するはずだ。


「……了解です」


 あたしは一人寮母室へ向かい受話器を耳に当てた。


「……師匠?」

「アリスか?問題はすべて解決した」

「……」

「アリス?」

「師匠って日本語苦手か?主語言えや、何が解決したのか言わんと喜んでいいのか分からん」

「ああ、そうだな。電話じゃ詳しく話せないが、霞家と名家を取り巻くすべての問題が解決した。もう霞家が名家から疎まれることは無くなる。没落した名家とも言われなくなるだろう」


 何がどう解決したのかはまだ喋らないことに若干のイラつきを覚えるけど、電話じゃ盗聴の危険があるからかね?


「それで?あたしはこれからどうすれば?」

「とりあえず霞家の娘たちに報告してみたらどうだ?お前よりも当事者で結果を一番知りたいのはあの子たちだろうしな」

「りょーかい、一応話すよ」

「それと、明日でも良い、前回俺と話した屋上に来い、対面なら問題ない」

「へいへい」


 そうすると師匠はやることがあるのか一方的に電話を切る。


 あたしが談話室に戻ると、先生が伝えたのか全員の視線があたしに向く。


「龍は何と?」

「あー……そのー……師匠曰く、すべて解決したと」

「どう解決したんだ?」

「さあ?でももう霞家が没落した名家とは言われなくなるとは……言ってたけど詳細は何一つ」

「……まったく」

「姉さん、テレビ!」

「ん?」


 その時、テレビのアナウンサーが紙を受け取ると表情が一変する。


「え?ええー……名家会館で何か動きがあったようです!現場に繋ぎます!赤西さん!」


 画面が切り替わり、警察の規制線が張られている名家会館をバックに女性キャスターが映る。


「えー!先ほど、大勢の警察官が名家会館に入って行きました!なお操作当局からは未だ何も発表はありませ……!ちょっと待ってください!名家会館より警察官が出てきました!……あ、あれは……!?ご覧ください!名家会議の五大名家の一つとして知られる北条家当主、北条大次郎です!大次郎氏が……警察に連れられて……あ!手には手錠のようなものが確認できます!」


 談話室の空気が一変した。


「北条家当主が……逮捕された?」

「北条って……名家でも相当歴史のある名家だろ?宮内庁所属で……そいつが逮捕されるってよほどだぞ!」

「アリス……龍は一体何をしたんだ?」

「んな事知るわけないでしょうが!」


 しかし、タイミングが良いかのように画面がスタジオに変わるとキャスターに一枚の紙が渡されるが、その紙の内容を呼んだキャスターの表情が先ほどとは違う意味で一変した。


 ……本当にこの情報は合ってるのか……と言った表情だ。


「えー……たった今、警察庁より公式発表がありました。……それによりますと、北条家当主、北条大次郎氏を国家反逆罪及び、国家機密保護法違反の罪で逮捕したとのことです」


 談話室の空気が……止まった。


 国家反逆?……国家機密……なんて?


「名家の人間が……国家反逆罪?龍は何したんだ!」


 そんなこと言ってもこの場に居る人間で知ることが出来る人は居ないっす。


 リリリリリリ!


 そん時、またもや寮母室から電話の音が鳴る。


 今回はドアを開けていたので聞こえた。


「今度はなんだ!」


 一日に何度も電話が鳴るので、先生は少しイラつきながら寮母室に向かった。


 ……数分後。


「順、電話だ」

「誰から?」

「生徒会長」



 約十分後、先生とあたし、そして小林先輩は寮母室の前で待機していた。


 聞き耳をしたかったところだけど、防諜用の魔法で会話内容は聞こえない。


 中で話しているのは花組代表として順先輩、そして生徒会長で月組の甲賀隼人先輩だ。


「あの……あたしも同席したいんですけど」

「駄目だ。言っておくが、今回の作戦の肝は今この時だ。あの電話は恐らく月組が霞姉妹への公式な謝罪をしたいとの申し入れだろう。なら今回はそこに神崎への謝罪も織り込ませないといけないんだ。その交渉に生徒会長と何一つ接点もないお前が出るのはまずいんだよ。それにお前的には霞家を助けたろ?なら目的は達成したんだ、後は先輩に任せろ」

「へーい」


 ガチャ。


 寮母室から順先輩が出て来た。


「進捗は?」

「問題ない。滞りなく進んだよ。月組の謝罪は30分後、花組の談話室及び各自習室で行われることになった。霞家への公式謝罪は月組を代表して西宮雪さんが、そして他四人への謝罪は公平を喫して月組と花組から三年生が仲裁役に出ることになった」

「……や、やった……」


 今回の作戦のすべてが達成できたことで三週間緊張しっぱなしのあたしの体はようやく脱力し始め、崩れ落ちた。


 でも近くに居た小林先輩が支えてくれる。


「大丈夫?」

「……何とか」

「アリス……よくやった。三週間耐えたかいがあったぞ」



 三十分後、談話室に待機していたあたしたちの元に続々と月組の生徒が到着していた。


 でも神崎さんをいじめていた青木さんの表情を見てあたしは驚愕した。


 誰かに殴られたのか、青く晴れていたのだ。


「……青木さん、何があったんすか」


 その質問に、一件を取り仕切る月組代表の甲賀先輩が答える。


「ああ、聞いた話ですが。どうやら神崎さんがいじめの件を親御さんに伝えたらしいんですよ。そもそも神崎さんのお父上は青木さんのお父上と古くからの親友だったようで、青木さんの会社の秘書も務めるお人だったらしいんですよ。そして今回の一件で娘さんからの謝罪がなければ会社を辞めると……それに青木さんが激怒してああなったらしいです」

「……」


 あたし必要だった?


「あたしがボイコットしなくてもゆくゆくは問題が解決していたんじゃ?」

「それはないな」


 柏木先生が否定した。


「今回の件がなければ、そもそもいじめの件が表面化するかすら怪しかったし、お前や小林が神崎を説得しなければ神崎が勇気を出して親に言うことも無かったかもしれない。そのままだったら遅かれ早かれ最悪の結果になっただけだ、お前はよくやったよ」

「うっす」


 その後、まず四人の月組生徒と花組生徒はそれぞれ自習室に入り、月組花組の仲介役と共に謝罪が行われた。


 そして。霞家に対しては談話室にて月組代表の西宮さんが深々と頭を下げた。


「母から聞きました。霞家に対する名家のすべての行動の元凶が北条家であったと。北条家のせいで霞家が代々不当な扱いを受けて来たと。ステアにいる月組を代表して、私西宮雪が謝罪いたします。本当に申し訳ありませんでした」


 サチとコウは何も言わずに、ゆっくりと雪に近づくと許すというように抱きしめた。


 そして西宮さんはもう不当な扱いはしないと月組に戻ってこれないかと二人に言ったけど、二人はそれを拒否した。


「ごめんなさい。別に他の名家が怖いとかじゃ……ううん、まだ恐怖心とかあると思う。でもそれが理由じゃないんだ。私たちはアリスに心からの感謝をしてるんだ、だから私たちはこれからもアリスの傍で支えてあげたい。アリスは霞一族の恩人だもん!」


 ……それに組は違っても学校でいつでも話せるでしょ?


 と言うと、西宮さんは静かに頷き、他の生徒と共に月組の寮へ戻って行った。


 そして、月組生徒が寮から居なくなると……あたしたちはダッシュで抱き合った。


 二人とも大粒の涙を目に溜めていた、それはあたしも同じだ。


「「「やったああああああ!」」」


 霞家400年間続いた汚名をついに晴らした喜び、あたしはこの世界に来て初めて友人を助けた喜び。


 結構な声量で泣いていたと思うけど、それを咎める人は居なかった。


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