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(更)北条家事件編 アリス編 2

(。≧ω≦。)ノ

 あたしがそれを知ったのは、五月の中間テストが帰って来た週の金曜日だった。


 ステアは普通の日本の高校とは違い、授業態度が成績に反映されることはない。


 あくまで各学期の中間テスト、期末テストの結果によって進級、そして退学等が決まる。


 逆に言えば、別に授業に出なくてもテストさえ良い点を取ればなんとかなるのだ。


 全てのテストが戻って来たあたしは……花組寮の談話室にて膝から崩れ落ちた。


「はは……まあ、そうだよな」

「大丈夫?アリスちゃん」


 後ろから答案用紙を覗き込む形で小林先輩が声をかけてくるけど、点数を見て、苦笑いになった。


「あー。しょうがない!赤点ギリギリだから追試もない!次頑張ろ!」

「ははは」

「大丈夫!先輩がいくらでも付き合ってあげるからさ!それにテストトップの霞姉妹も……あれ?サチとコウは?」

「何か実家から呼び出しがあったっぽくて。テストが戻った瞬間に行っちゃいました」

「ふーん。名家ってそういうしきたりなのかな」



 その日の夕方、テスト終了後なので一緒に出掛けようと、談話室にて香織と一緒に待っていたあたしに柏木先生が声をかけた。


「アリス、ここに居たか」

「え?ああ、二人が帰ってこないとやることなくて」

「霞姉妹か……二人が居なくても勉強しろよ。まあいい……ちょっと寮長室へ来い」

「へ?……良いですけど。香織ちょっと待っててね」

「……」


 コクっと頷く香織、最近では慣れたのか少し離れても問題無くなった。


 柏木先生のついて行くように寮長室に入るあたしだけど、椅子に座った先生が大きな溜息をもらす様子に少し困惑した。


「どうしたんすか?溜息なんて珍しい」

「……アリス、落ち着いて聞け」

「はあ」

「つい先ほど、霞家から電話があってな。……霞姉妹から自主退学の申し出があった」

「……え?……ん?はあああ!?」


 脳が一瞬、理解するのを拒んだ。


 ……自主……退学?……ってなんだっけ?


 自分の意思で退学すること……え?サチとコウが……なんで?


 もしかして……月組から花組に移ったから?


 たったそれだけで?訳が分からん。


「アリス」

「何!」

「その……本人たちから何か相談はなかったか?」

「もし相談を受けてたらあそこに座ってないですし、先生に相談しに行くでしょ?」

「それもそうだな」

「先生!」

「なんだ?」

「……霞家の住所教えて!説得……は無理かもしれないけど、話を聞くことはできる!それまでお願いだから退学を受理しないで!」


 あたしの懇願に先生は少し悩むけど、すぐにニヤリと笑う。


「もとよりそのつもりだ。教師が行くよりは話しやすいだろうし、それに退学の申請は基本平日しか受けられん。……もう17時、私は勤務時間を守る人間でな。猶予は土日の二日間だ、いいな?」

「うっす!」



 翌日、あたしは朝一で柏木先生から双眼鏡を持たされ、香織を預けると霞家へ出発した。


 ……のは良かった。


 名家の多くはマギーロからほど近い、通称『名家通り』に住んでいるらしい。


 そして古くからある名家程大きく、そして立派な日本家屋なのだとか。


 けど、あたしの目的地である霞家についたはずだった。


「没落した……名家?」


 一般的に豪邸と呼んでも良いレベルの広さの御屋敷だった。


 ……確か霞家が没落したのって400年前よな?昔から没落する前からここに居るのならこの家の大きさは分かるけど、名家ってすごいな。


 玄関……というか、門があるんですけど……こういう場合、門から入った方がいいのかな?でも箒で入れちゃうよね?


 てか、何故に門の前に黒塗りの高級車が何台も停まってるのかな?


「……さてどうするか……ん?」

「それでは先ほどお話検討よろしくお願いします。私が直々に来たんです、いいお返事を期待してますよ」


 男性の声?


 やっべ!こっちに来る……あ、上か。


 箒に跨ると、上空に避難した。


 車があるってことは車移動……名家は車移動がデフォなん?


 ていうか、ここからじゃ誰が来たのか見れ……あ、そのための双眼鏡か。


 なんで先生こうなるってわかったんだ?


 双眼鏡を使って門から出て来た人を観察する。


 さっきの声的には70代……だったけど、声のまんまのひげを蓄えた老人が出てきましたなあ。


 しかも高そうな着物羽織って……所謂優しいおじいちゃん……というより、明らかな権力を持った側……かな?


 老人を含め、警護の人たちが車に乗ると、そのまま何処かへ走り去っていた。


「……」


 さっき検討をよろしくとか言ってたな。


 二人が退学を申し出た矢先に誰かが霞家に何かを要望しに来た……偶然か?


「……ま、知ったこっちゃない」


 あたしはそのまま門をくぐり、玄関へ歩いて行った。


「……ごめんくださーい!」


 まあもう誰も見てないし、何処にいるのか分からんのでとりあえず大声で叫ぶ。


 ……十数秒後。


 一人の着物を着た女性が歩いて来た。


 髪は後ろに纏められ、目はキリッとしている。


 多分名家の人だ。


「あ、えっと」

「ここをどこだと思っているのです。霞家と言えど名家の家ですよ?それなりの礼儀作法を知らないのですか?」

「……」


 ……やばい、とてつもない正論パンチだ。


 反論できねえ。


 ていうかさ、あたしゃ名家出身でもなんでもないわけですよ。


 礼儀作法なんぞ知るかっちゅうねん。


「あら、あなたステアの学生?」

「あ、はい!ステア魔法学校、花組一年のアリスと申します!同じ組の霞サチとコウに会いたくてお伺いしました!」


 あたしはテンパりながらも思いつく限りの敬語で挨拶した。


「アリス……さん?」


 女性はあたしの名前を聞いて、何か考えている。


「……良いわアリスさん。少し話したいことがあります、どうぞ上がってください」

「はい」


 あたしは女性に促されるまま靴を脱ぎ、家の奥に歩いて行った。



 通されたのはよくある日本家屋の和室の部屋、多分応接用なのかな、長方形の机が置いてある。


 あたしは用意された座布団に正座する。


「あら、別に崩しても問題ありませんよ?」

「いえ……何故かこっちの方が落ち着くので」

「そう……」


 女性が対面に座る。


「自己紹介がまだでしたね。霞家当主、霞サチとコウの母親、霞三枝みつえと申します」

「……え?」


 霞家当主!?この人が!?


 確かにさっきから凄いオーラこそ出てましたけども!まさかの当主!


 ……ていうか、気のせいかな?


 この人の髪の毛、少し赤い気がする。


 サチとコウは綺麗な黒髪なのに……遺伝かな?


「えっと……いつもサチさんとコウさんにはお世話になっております」

「堅苦しい挨拶は要りません。目的があってきたのでしょう?」

「……はい、先生から聞きました。昨日自主退学の申し出があったと」

「ええ、私がさせました」

「何でですか!」


 あたしが声を荒げても三枝さんの表情は変わらない。


「アリスさん、良いですか?私たちは名家。名家に生まれた以上、好き勝手に生きれるわけではありません。名家に生まれた以上、その家が存続するように発展するように日々生きる義務を負うのです。……名家の人間が何故ステアに入学するかご存じで?」

「……名家としての拍から付くから……詳しいことは知りませんけど、ステアを卒業出来ない者は名家にあらず……と」

「その通り、名家の人間はステアを卒業出来なければ同じ名家の中でも名家の扱いをされないほどです」

「であれば何故退学に!?全く逆の行為では?」

「貴方も二人から聞いているでしょう?私たちは『没落した名家』。我々の先祖が大昔に犯した禁忌が原因らしいです。そのため、我々は名家とも表されていますが、実際は何一つ権力も影響力も持たない家なのです」

「……」


 つまり、ステアを卒業出来なくても霞家としては何一つ問題はない……と?


 ……なら何故サチとコウをステアに入れた?


 意味がないのなら最初からステアに入れる意味はなかっただろう。


 それに二人は言っていた。


 霞が名家に居るのは、禁忌を犯した名家がどのような扱いを受けるのか見せしめることで他の名家への牽制になるらしい。


 でも謎だ。


 何故霞家はこれほどの屈辱を受けても、名家を離れようとしないんだ?自分から名家を離脱する権利はあるはず……だよね?


「あの質問しても?」

「構いませんよ」

「何故名家を離れないのですか?名家で無くなればこんな思いをすることもないでしょう?自ら抜ける権利はあるはずでは?」

「我らが先祖代々の悲願であり、唯一の頼みがあるからです」

「はい?」

「過去の文献等は一切残っていないのですが、当主のみに引き継がれる言葉があります」

「……はぁ」

「『いつか神報者がこの問題を解決してくれる日が来る。それまで何とか名家の名を守り抜け』と」

「……は?」


 あたしは霞家当主から師匠の名前ではなく、神報者の単語が出てきたことに驚いた。

 霞家と二日で龍の協力を取り付ける条件で退学申請の延期にこぎつけたアリスは至急学校に戻ると友里に対して龍に至急頼みたいことがあり連絡するように頼むと、アリスに渡された住所はある場所の屋上だった。


 その場所は普段神報者の仕事が無い時に二足の草鞋として、転生者保護協会の会長として仕事をしている建物の屋上だった。


 そこにアリスが箒で到着するとすでに煙管で煙草を吸っている龍が出迎える。


 そしてアリスが屋上に降りて龍に向き合った瞬間の開口一番のセリフはこうだった。


「お願い!霞家を助けるために協力して!」


 そして、それに対しての龍の返答は。


「帰れ」


 だった。



「なんでさ!」

「降りてきていきなり何言ってんだ?経緯も何もなしに」

「あ……」


 ド正論である。


「えーとだから、霞家姉妹が退学しそうなの!だから助けるために力を貸して」

「俺に何の関係があるんだ?」

「へ?」

「人に何かを頼むってことはその人にしか出来ない何かに頼って頼むんだろ?逆に聞くが俺に何しろって言うんだ?」

「え、あ、えーと」


 アリスはこの時急いで来るのに集中しすぎて何を言うのかを完全に忘れていた。


「はあ、まったく。お前は交渉も出来ないのか」

「……」

「ていうか霞ってことは名家絡みだろ?なおさら手伝えん、あいつら嫌いだし」

「でも!」

「そうだな、なら交渉してみろ」

「はあ?」

「俺に要求を吞ませるような交渉をしてみろ。これも神報者として必須な能力だ。俺を納得させれば今回は特別だ協力してやる」

「交渉って……何すれば……殴れば良い?あ、蹴っても良いか!」


 満面の笑みで握りこぶしを作って見せる。すると龍はため息をこぼした。


「いいか?少なくとも正面で警戒してる俺がお前の攻撃なんて効くわけないだろ?俺が言ってるのは会話……言葉による交渉術だ。俺は基本的に国同士の交渉、つまりは外交に駆り出されることが多いからそれ基準で言うが、大まかにとれる手段は二つしかない。自分の持っている軍の力、つまり武力を見せつけて脅す手段と、相手が欲しい情報、資源等を差し出す代わりにこちらの要求をのます手段だ。まあ前者はある程度知っている間柄ならお互いの軍の力知ってるから持ってるだけで十分脅しになるし、相手を交渉のテーブルに着かせるきっかけにもなる。問題なのは後者、これは相手の望んでる情報、物、それらをいかに交渉する前に集めるかが鍵になるんだ」

「でもあたし、師匠のこと何も知らないけど?教えてももらってないし」

「最悪の場合だが、相手の感情に訴える方法もあるんだ。言葉というものは不思議なもんでな、言葉の使い方によって相手を傷付けることも出来れば相手を癒すことも勇気づけることもできる。それは説得や交渉も同じだ。だから今回は最悪、中身が無くても構わん俺をお前の言葉で動かして見せろ」

「どうやるかは」

「教えるわけないだろ、誰かが言った言葉でも十分人を動かすことは出来るがでもその人が自分で考えて絞り出した言葉には敵わない、俺はそれを求めてる。お前は何故霞家を救いたいんだ?」

「少し、考えても良いですか?」

「今日は時間があるからな、それに弟子が成長するためなら時間を割くのが師匠の仕事だ」


 アリスは龍に背を向けて考え始める。


(なんで助けたい?そりゃあ友達だから?でもそれだけだと駄目なんか?師匠を説得……というよりなんでこんなことになってんだ?てかなんであたしは師匠に助けを求めたんだっけ?……あ!?忘れてた!なんだっけ?神報殿?だっけか)


 アリスはすぐに龍に向き直る。


「どうした?やるか?やってみろ」

「前提として、サチとコウはこの世界に転生してきて初めて出来た友人であり親友です。彼女らに色々教えてもらいました。名家がどうこう前に一人の友人として助けになりたいんです」

「だから、何故俺が助ける必要がある?」

「師匠、北条家って知ってるよね?」


 アリスから突如北条家という言葉が出てくると龍の顔が驚きの表情に変わった。


(確かに、感情に訴えるやり方でも師匠は多分動くだろうけど、今回は本気で師匠に動いてもらいたい……なら知ってる情報は吐き出して師匠の興味を釣る!)


「何故この話に北条家が関わる?相手は名家全体じゃないのか?ていうかお前北条家知ってるのか?」

「知ってる、その北条家が皇族御守護っていう役職に就いてるってことも」

「ほう?少しは調べたんだな」

「そこで聞きたいんだけどさ。北条家って400年前にこの役職に就いたんでしょ?」

「詳しいことは知らない。400年前と言うがまだ俺は神報者になってなかったからな」

「なら北条家がこの役職に就く前の御守護が霞家だったことは?」

「…………それは本当か?」


 龍の顔が驚愕から困惑の表情に変わった。


「うん、さっき霞家当主に会ってきたけどその当主に代々言葉で伝わっているものがあるんだって一つが霞家は400年前禁忌を犯して御守護の座が北条家に譲られたってこと。そしてもう一つ、『いつか神報者がこの問題を何とかしてくれる日が来る。それまで何とか名家の地位を守れ』。これって龍さんにじゃなくていつか神報者である人間が霞家を助けると信じてるからこんな言葉を残しているんじゃないの?」

「……」


 龍は口元に手を当てると、ぶつぶつ呟き始めた。


「……あいつが……いや……でも……もしそうなら」


 龍の表情が変わり視線をアリスに戻す。


「アリス、その話本当なんだな?」

「今言った言葉?聞いた通りにしゃべっただけだからなあ、もし間違っているなら霞家の当主に伝えられるときに内容が変化したぐらいじゃない?」

「そうか……それで俺に何をしろと?」

「ここまで聞いて分かんないの?この日本にはどんなに時間がたっても消えない文献を保管する場所があるでしょ?神報殿だっけ?そこなら真相が分かるんじゃね?って思った」

「それも霞家当主に聞いたのか、確かにあそこは俺か帝しか入れない……まあ他の人間が入る方法もあると言えばあるが……。分かった調べてみよう、ただし」

「ただし?」

「もしどんな結果でもお前は受け入れるな?例え霞家に不都合な結果になったとしても後悔しないな?」

「やらない後悔よりもやる後悔の方が今後の展開で何とかなるっしょ」

「分かった……何かあればすぐに連絡しよう……ておい!どこ行くんじゃ!?」


 龍の『分かった』という言葉を聞いたアリスはやったという顔になりこのことをこのことをすぐに霞家当主である三枝に伝えるために箒で飛び立っていた。


「……行動が早いというのも考え物だな」



 その日の午後、アリスは霞家に戻ると龍が400年前のことを調査する協力が得られたことを伝えようとする、するとアリスが協力を得られると信じていたサチとコウが三枝と一緒に玄関まで迎えに来ていたが、サチとコウが笑顔で抱き合いその場に崩れる。


 しかし、三枝の表情は変わらなかった。


「まだ、調査を約束してくれただけです。どのような結果になるかは調査次第でしょう。……サチ、コウ。今すぐ学校に戻りなさい」

「え?なんで?」

「龍さんが調査を開始した時点で名家会議が何かしら霞家に圧力を加えてくるのは目に見えています。ここではお前たちを守ることは出来ません、学校なら……花組であれば守ってくれるでしょう」

「だったら残って私たちも戦う!それだけの力は母さんに教わっ……」


 バチン!


 霞三枝がサチの頬を平手打ちにした。さすがのことにコウが困惑するが。アリスは動じなかった。


(いや、まあサチがこう言った時点で、ドラマとかアニメでもよくあるからやるだろうなとは思ったけど本当にやるとは……つか本気の平手打ちってすごい音なるのね)


「母さん……なんで」

「愚か者!そんな事のために技術を教えたわけじゃありません!霞家が代々受け継ぐ対人魔法戦闘技術はこの日本に牙をむこうとする輩に使うものです。敵対しているからといって同じ名家に向けていいものではありません。それに私はあなたに技術を教えてきましたが、その技術の使い方まではまだ教えていませんよ?いいですか?技術があるからって使わなければならないということはありません。使わないこともまた武器になるのです」

「じゃあ母さんはどうするの?」

「もちろん霞家当主としてこの家を守るために戦います。耐え忍ぶこともまた一つの戦い方の一つなのです。それに……二人ともこっちに来なさい」


 三枝は二人を近づかせると優しく抱きしめる。


「霞家当主としてではなく、あなた達の……一人の母としてあなたを守りたいのです。この不毛な名家の争いにまだ子供であるあなた達を巻き込むわけには行けませんからね、今のあなた達の仕事は霞家が無事にこの難局を乗り越えることを祈ることです」

「母さん」

「……」


 三枝の言葉に納得したのか、サチとコウは涙を流し頷きながら三枝を抱きしめ返す。



「それに、母より先に子供が犠牲なるなんてこれ以上の親不孝はありませんよ?」

「うぐっ!」


 二人に対して向けられた言葉だが、この言葉の刃がアリスにぶっ刺さる。


(師匠……確かに言葉って武器になるんすね、いやーちょー痛いわー)


「アリスさん」

「へ、へい!」


 突然話しかけられ返事がおかしくなる。


「どうか、二人をお願い致します。ステアの花組であれば多少の期間は大丈夫でしょう」

「任せてください!私は……主人公です!無茶なんてなんのそのですよ!ははは」

「……ご期待しています」


(まあ正直、後はもう師匠任せだから何もプラン無いけどね)


 その後速やかにサチとコウが制服に着替えると、アリスと一緒に学校に戻るために飛び立った。その際、三枝のアドバイスによりなるべく顔を隠して少し遠回りで帰ることになる。



 アリスがサチとコウ、三人が学校に戻ったのは17時過ぎだった。花組の談話室で出迎えたのは香織、小林、順、そして峰だった。


「アリス、柏木先生から聞いたよ単身霞家に話に行ったんだって?霞家といえど名家の家に行ったんだ勇気あるよ」

「いやあ、わたしに出来ることなんてこれくらいなんで、やるしかないなら躊躇できませんて!」

「お、アリス今戻ったのか。ちょうど良い、電話だ」

「柏木先生、誰から?」

「龍」


 寮長室に行き、置かれた受話器を手に取り耳に当てるとアリスが今日会った人間の声が聞こえてくる。


「師匠?」

「ああ、すまんな。今、戻ったのか」

「まあ、なるべく他の名家にばれないようにルートとか時間を考えたんで」

「そうか」

「で、何か分かりました?」

「……」

「師匠?」

「アリスいいか?」

「うん」

「すまないが調査の結果をお前に言うことが出来なくなった」

「へ?なんで?」

「状況が大きく変わったんだ。もう北条家と霞家、ひいては名家の問題じゃなくなったんだ。俺はこれからやることが出来たからしばらく連絡できない」

「それはどうでも良いです。じゃあ、師匠がやることやったら霞家は助かるの?」

「ああ、助かるだろうな。それどころか日本の歴史が変わる」

「は!?一体何が分かったのさ!」

「言えない。だが、アリス……俺からお前にお願いがある」

「何?」

「……何があっても霞姉妹を守り抜け。詳しくは言えんが、霞家は日本の将来に必要な存在になるかもしれない」

「それは分かったけど、具体的にはどれくらい粘ればいいのよ」

「……訳三週間」

「なっが!?さすがにあたしでも他の名家から三週間も守るなんて無理だよ!学校にも名家いるんだから」

「それでも守れ。どんな手を使ってでも守れ。お前は主人公なんだろう?運を引き寄せるのも主人公たる所以だと思うがねー」

「煽ってるのか?おい!」

「出来るのか?出来ないのか?」

「……ますよ」

「あ?」

「やってやりますよ!それで霞救えんだろうな!?それで無理だったら師匠の弟子辞めてやるからな!?」

「お前この前首相官邸で俺がなんて言ったか覚えてるか?」

「うーん、ゲーム中でも声は聞こえたけど色んな事言ってた気がするだけであんまり覚えてない」

「皇族の存在を、帝を守るためなら国会議員だろうが名家だろうが徹底的に潰すと言った」

「……ん?その言い方だと今の問題が皇族に関わるって言っているようなもんじゃ……」

「じゃあな。頑張れ」


 一方的に電話を切ると、アリスは受話器を勢いよく戻した。


「言うなら最後まで言えやあ!」

「話は終わったか?」

「……フーフー!」

「……とりあえず落ち着け?」


 柏木はアリスを座らせると、自分も椅子に座る。


「それで?龍は何と?」

「何か事情が変わったようでこれから何かするみたいです」

「何かって何を?」

「それが聞けたら興奮しませんって」

「そうか、それでどれくらい掛かるんだ?その間名家から霞家を守る必要があるんだろう?」

「……三週間」

「三週間か……」

「テストが終わった直後で助かったねえ!」


 入り口に居たのは小林と順だった。二人が部屋に入ってくるとそれに続いて峰も入ってくる。


「居たんですか」

「そりゃあまあね」

「で?どうすんの?」

「どうするとは?」

「霞家を助けたいんだろう?なら何か手は打たなくちゃ」

「それに問題もあるぞ?」

「何です?先生」

「明後日から普通に学校が始まる。三週間も霞家を匿うのは無理がある」

「授業を欠席するのは?」

「無理だな、例え一日でもその日出席する予定の授業を担当する教師に休むことを私が報告することが義務付けられている。すぐに学校全体から月組に霞姉妹がいるのがばれるだろうな」

「うーん。じゃあどうしたら」

「ちょっといいかな」


 順が手を上げた。顔が二やついていたが、他の二人も二やついていた。


「アリス君、一つ聞くよ?君は本当に霞家を守りたいんだね?」

「え?そりゃあまあ」

「どんな手でも使う?」

「……」


 その言葉にアリスの顔が真顔になる。


「例え恨まれようとも」


 その言葉を聞いた三人が笑顔になる。と、同時に柏木が頭を抱え始める。


「いいかい?アリス君、実はね月組に気づかれずに霞姉妹が授業を欠席できる方法があるんだ」

「本当にですか?」

「うん、でもねこれをやるには花組一年生全員の了解を得る必要があるんだ」

「へ?……あ!も、もしかして……」


 アリスの顔が引きつるが順は続ける。


「花組一年全員で授業欠席……集団ボイコットをすれば良い」


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