(更)技術革命編 8
コンピューター開発によって生み出されたネット世界の誕生は、ある意味革命とも言える。
LINEやツイッターなどのSNSの普及で、ネット環境があればいつでもだれとでも通話出来たりメッセージを送ったりできるようになった。
その応じて噴出し、起きたのは……今まで見えてこなかった人間の負の感情が見えるようになったことと、人間関係の破綻だ。
……聞かれるとは思っていた。
でも旧日本では社会問題にもなっているこの問題を言ってしまえば、コンピューター開発が止まり、パソコン開発の進捗まで影響が出る可能性がある。
「……」
「……アリス」
「ん?師匠?」
今までずっとあたしの提案書を見ていて会議には参加してなかったはずの師匠がいつの間にかあたしの後ろに居て話しかける。
「言って構わん。むしろ言って良いまである」
「なんで?もし言ったらパソコン開発が……」
「無いよ」
「なんでそう言い切れるさ」
「良いから言ってみろ」
「……うっす」
これでパソコン開発がストップ……もしくは凍結したら呪うぞ。
あたしは立ち上がると、東さんを見つめた。
「東さん、一つ聞いていいですか?」
「何でしょう?」
「この国、第二日本国の憲法に表現の自由的な物ってありますか?」
「……基本的人権の事でしょうか?ありますよ」
「そうですか」
それを確認すると、あたしはこの場に居る全員に旧日本で起きている問題について話し始めた。
旧日本では現在、コンピューター開発によって生まれたネット世界での匿名による誹謗中傷が横行していること。
ネット世界では本名を使う必要がないため、匿名で身近な人間にも気づかれずに悪口を書くことが出来、社会問題なっていること。
これに対して政府の対策は遅く、最近ようやく法整備に動いていること。
しかし、憲法の表現の自由によって、対処がしにくいらしいとのことを伝えた。
「……なるほど、素晴らしい」
「……え?なんでそう思うんですか?」
「現在、やっとコンピュータが開発されたばかりでネット構築もされていません。逆に言えば、ネット構築前に将来必ず起きる問題が把握できた……これほど素晴らしい情報がありますか?」
「は、はあ」
「我々議員の仕事は予算編成もそうですが、法整備も重要な仕事です。そしてあなた方識人は旧日本から持ってきた知識で助言することです。問題が起きる前に起きる問題が明確になっているのですからこちらとしては対策がよりよい対策が出来る……素晴らしいではないですか」
「……なるほど」
「ではよろしいでしょうか」
橘さんが腕時計を見ながら発言する。
「時間も差し迫ってまいりましたので、会議を閉めたいと思います。次回の会議は必要ですか?」
「いや、我々としてはすぐにでも法律案、補正予算を草案を考える必要がある。閉めてくれ」
「我々も言うべきは言った。閉めてくれていい」
「かしこまりました。では僭越ながら私がコンピュータに関する特別報告会の閉幕を宣言いたします」
そこからは早かった。
議員たちは秘書たちと共にコーセイ電機の人たちと足早に何処かへ歩いていき、部屋に残るのは識人だけになった。
でも首相側の配慮なのか、会議室の退室時間に少し余裕があり、あたしと他の識人たちはコンピュータのテトリスで遊んでいた。
だけど……。
「やっと終わったな」
「ああ、それより……卓だったか?たしか中学生のはずだが、あそこまで完璧なプレゼンするなんてな」
「そうか?」
「考えてみろ。今回のプレゼンでコンピューター開発の補助金が出るのは間違いない。全て卓の手腕だ。新技術が出来たからもっと開発費を寄こせ……これで政府が動くことは基本的に無い。実際に動いている所見せ、こういうことが出来る、そして技術が進めばこんなこともできる、そうやって見せるから金が出るんだ」
「……そうかもな。だが今回の場合、初めて政権を取った民政党が実績が欲しいから動いた……そう見ることもできる」
「……ふふ、そうかもな……龍、今回の会議、確かに飛び交った単語は私にも分からない物ばかりの物だった。だが、お前もこの国に生きる識人だ。400年生きる者として言う権利はあったはずだ。何故何も発言しなかった?」
「興味が無かっただけだ」
「……はあ。将来的にお前も使うかもしれない技術もあるのに?」
「そうかもな。アリスに聞けばいい。それに俺は……議員連中を信じてない。俺はあいつらを詐欺集団と思ってるからな」
「は!?」
ゲームに集中していたあたしたちでも師匠の一言に驚愕し、沈黙した。
けど、すぐにゲームに戻った。
「だってそうだろ?選挙の時だけ都合のいいことを言い、当選すれば特段やらなくてもお咎めなし。しかも国会議員は法律で辞めさせる方法はあるが、基本的には自ら止めるしか方法はない。仕事だって基本的には官僚や秘書に任せるし、何かあっても秘書の仕業にして時間が経てばうやむや……詐欺集団と呼ばずに何と呼べばいいんだ?」
「一応お前はそんな詐欺集団と時には協力しいといけない立場じゃないのか!」
「ああ、だから日本の為なら最低限協力する。それだけだ」
「……そうか、まあそれで400年やってきたならそれでいいのかもな。……だがアリス君は……ていうか君たち!さっきからうるさい!」
衣笠さんが声を上げる。
あたしたちがテトリスをやっており、時折歓声が上がるからだ。
「だって二人の話、長いし、難しいし、あたし高校生っすよ?ゲームあるんならやりたいじゃん!」
「それは分かるが……そんなに熱中してくれるな、君の為でもある」
「だってテトリス初めてなんすもん!楽しいっすよ?シンプルなのに複雑だから」
「そうでしょ!ただ詰んでいくだけなのに形が違うから先の方まで考えなくちゃいけない……よく考えられたゲームだよね」
「……分かった。好きにしろ」
「好きにされたら困りますね」
「わあああ!?」
突然の背後からの声にビビる、全員がのけ反った。
「えっと……何か御用で?」
「ここが何処だかご存じで?」
「……ゲームセンター?」
「……」
すんません、ジョークです。
「官邸です」
「そうです。この部屋をまだ使えるのは私を含めて技術者たちが補助金等の補正予算案について議員の皆さんと話し合いをするためです」
「橘さんが来たってことは……終わったんですか?」
「補正予算についての話し合いです。そう簡単には終わりません」
「じゃあ何しに来たんですか?」
「これを回収に来ました」
橘さんがコンピュータを指さした。
あたし含めたゲームをしていた人たちからブーイングをした。
「分かっているのですか?政府がコンピューター開発に補助金を出すにはまず議員の皆さま、そして内閣、そして各省庁に説明をしなければなりません。それにはコンピューターの現物……つまりこの世界にただ一つのこれをもっていかないといけないわけですが……まだゲームします?」
「「「すみませんでした!どうぞお持ちください!」」」
全員がその場で土下座をした。
さすがにゲームをしたせいで予算が通らないのは困る。
「君たち……現金だな」
「所で師匠」
「ん?」
「なんであの情報を言うように言ったの?今回は良かったけど、逆の結果になる可能性も……」
「あるかもな。だがそれが俺たちの仕事だ」
「……というと?」
「……この国をどう動かすかは先民が決めることだ。識人は旧日本から受け継いだ、情報でこの国を創る、守る、手助けをすることしかできない。役に立つかどうかはあいつらが判断する、俺たちは陰で良いんだよ」
「……そうっすか」
「後で知ってるのに、なぜ言わなかった……と言われるよりはいいだろ?責任はあいつらに付けとけ」
「……うっす」
その後、国会では政府が約三週間という急ピッチで作られたコンピューター開発に関する補助金の為の法律案、補正予算が閣議決定されたそうだ。
政権を奪われ、根回しも無かったらしい自政党はこの性急な法案の粗を探そうしたらしいけど、識人たちが予めコンピューターについての情報を流したおかげなのか、世論調査でもコンピューター開発に賛成する人が増加、民意に押された結果、最優先で審議されることになった。
旧日本から転生したあたしたちにとっては飛び上がるほどの朗報であったけど……あたしはこの時、転生して初めての大きな……そしてこの第二日本国の未来が大きく変わる事件に関わることになり、それどころでは無かった。




