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(更)技術革命編 7

「さて皆さま、ここまでコンピューターで出来ることをアリス様に実戦していただきましたが、まだ一つやっていないことがございます」

「なんだ?」

「議員の皆さま、コーセイ電機の皆さま、こうは思いませんでしたか?ただ書く対象が紙からモニターに移っただけ、紙に書けなければ意味がないと」


 この言葉に議員たちから頷きが見える。


「言われてみればそうだ、確かに簡単に文字を打てたり、変換したり、消したりできるのは確かにすごい。だが、議会で使うのは紙だ。紙に印刷できなければ意味もないな」


 ……言われてみればそうか。


 いくら技術が進んだ旧日本でも国会の審議中はもっぱら紙だったはず。


 ……何でタブレットにしないんだか。


「今日はその問題も解決できております」


 そう言うと橘さんはいつの間にか部屋に運びこまれていた、布を被った機械の布を取った。


「お?おおお?」


 そこにあった物は、議員、そしてあたしよりも長くこの世界に居る識人たちから見るとなにこれ?的な物だった。


 でも橘さんの口ぶりで分かる、……これは……あれだ。


「何だね?これは」

「印刷機でございます」

「これが……印刷機?我々が知っている物とは何もかもが違うな。そもそも印刷に必要な文字盤がないじゃないか」

「はい、具体的な仕組みは後程にしますが、まずはご覧いただいた方が早いでしょう。アリス様」

「うっす」

「先ほどの日本の文字を十個ほど打ち込んでください」

「はあ」


 あたしは言われた通りに日本という単語を十個ほど打ち込んだ。もちろん、いちいち打ち込むのはめんどいので、コピペを利用してだ。


 だけど、橘さんはその間、印刷機に紙をセットしていた。


「ではそのままCtrlを押しながらPを押してください。もろもろの設定、印刷側のセッティングもすべて済んでいます」


 言われた通りにキーを押す。


 すると、数十秒後、印刷機からけたたましい作動音がすると、紙が吸い込まれていった。


 そして約十数秒後、ゆっくりとした速度で紙が反対側から日本の文字が十個ほど印字されて出てくる。


「おおお!」

「……何と」


 さすがに驚き疲れたのか、体を動かさずに表情だけ変えて、その場で声を上げる皆さん。


「このようにコンピューターに打ち込んだ文字はすぐさま印刷可能です。いちいち文字盤を組み込む必要もありません。これにより印刷の問題も解決されたと思われます」


 ここで初めて議員たちが話し合いを始めた。


「……凄い技術ですね」

「印刷に革命が起きますよ」

「それに効率的だ」

「ちょっといいかね?」


 話し合いの最中、西宮首相が質問をした。


「何でしょう?」

「確かに革新的な技術だ。しかし今見た光景はつい先月来たばかりのアリスさんという識人だから……ということはないだろうね?識人だから使えた……逆に我々には使いこなせない……それでは意味がないんだよ」

「はい、ですから首相令嬢であり、アリス様と同い年の雪様をお呼びしたのです」


 この言葉を聞いて先民陣営から納得の声が上がる。


「凄いな卓君は」


 だけど同じようにコンピューターに対してでなく、この場に居ない卓に対して誉めの言葉を発したのが衣笠さんだ。


「何がですか?」

「恐らくここまで見込んでの人選だろう?それにプレゼンも効果的だ。中身を詳しく話すよりこれで何が出来るのかを話した方が説得力が増すのは当然だからね」

「ああ、なるほど」

「雪様こちらへ、アリス様お席へ戻っていただいて結構です」

「うっす」


 西宮がコンピューターの前の席につく。


「では今から雪様には文字の打ち込みから紙のセット、印刷までを一人でここなっていただきます」

「そんな!まだ何も教わってませんわ!」

「今から教えますので、ご安心を」


 橘さんが西宮に文字の打ち込み、印刷と一連の方法を教え始めるけど……数分で終わった。


「どうだ?雪、出来そうかな?」

「ええ、お父様。それどころか簡単すぎて少し怖いほどです」


 西宮はまずコンピューターに文字を打ち込み始めた……は良いんだけど、予想以上に早かった。


「打ち込むの早!」

「当たり前でしょう!いつもタイプライターを使っているんですから!」

「ああ、なるほど」

「……終わりました」


 西宮が撃ち終わると、印刷機に紙をセットする。


 そしてあたしがやったように印刷のキーを押すと紙が吸い込まれて行き、十数秒後、何かが何かが印字された紙が出て来た。


 そして、それを顔を赤くしながら西宮首相に渡す。


「……?」

「ん?なんだい?……おや」


 紙を渡された西宮首相は紙に書かれた何かを読むと、顔が緩み目頭を押さえ始めた。


 隣に居た……秘書?それとも、補佐官?みたいな人も隣から見て目元が緩んでいるようだ。


「総理、親思いの娘さんで良かったですね」

「ああ、ありがとう」


 ……何書いたんだろうか。


 娘が父親に書いて、それを呼んで父親が涙する……親に対する感謝の手紙とかか?


 ……あのさあ、そんなもんこの状況で書くなや!


「さてそろそろ会議も後半になりました」

「……」


 その言葉に目頭が熱くなっていた西宮総理もきっちりと議員の顔になっている……さすがだ。


 西宮もいつの間にか席に戻っている。


「ご覧のように今回卓様が完成させた技術……コンピューターの能力について皆様にご覧いただきました。ここからが本題です」


 そう言うと橘さんはまた紙を取り出す。


『さあ、ここまで私が手を加え完成させた技術を見ていただきました。本来であればこの技術を即座に製品化できる会社等に移すのが当然かもしれません。ですが開発されたばかりでこの技術の価値を知らないこの国の状況からすれば、製品化、国民に普及していくには時間を要すると判断しました。ですので他の転生者の知識と政府の皆様のお力添えを得て技術を普及させるべく、この会議を招集した次第です』

「ほう……我々にどうしろと?」

「現状、この国一番の電機会社はコーセイ電機だと認識しております。しかし、いくらコーセイ電機とは言え、この技術を民間で使えるように迅速に普及させるには場所もお金も足りません。ですので日本政府には補助金を出していただきたいのです」

「なるほど、政府主導でこの技術発展を後押ししろと言うことか」

「そういうことになります」

「……」


 西宮総理は考え始めた。


「少しよろしいですか?」


 ここで西宮総理の隣に座っていた男性議員が手を上げる。


「どうぞ」

「内閣官房長官の東と申します。確かにこの技術は素晴らしいものだと思われます。聞かせて欲しいのは、この技術で出来るようになることです。旧日本はこの日本より技術が進んでいるようですし」

「ではまず私が話そう」


 そう言って手を上げたのは衣笠さんだった。


 衣笠さんはこの科学技術、とりわけコンピューター技術は旧世界で起きた世界大戦によって生まれた副産物であることを言った。


 世界大戦終結後も、技術は進歩し、戦車、戦闘機、回転……つまりはヘリコプターなどもコンピューターの登場によってより進化し、性能が上がっていることを伝えた。


 また、厚生労働省の識人はコンピューターの登場によって医療機器の性能が大幅に上がること。


 国土交通省の識人は電車を電子制御が可能になり、切符もコンピューターによって簡素化、以前より便利になること。


 周りの識人が旧日本がコンピューターによって何が進化し、どれほど生活が便利になっているかを熱弁し始めた。


 それに同調するように、議員たちも目を輝かせて話を聞いていたけど、コーセイ電機だけは違った。


「……これは将来的に人の仕事が奪われることになるのでは?」

「……確かにそう思うのも無理ないですけど、タイプライターもメンテナンス……修理等が必要なように。コンピューターも万能じゃありません。必ず人の手が必要になるはずです。……以前と変わり人の役割が変化することはあるかもしれませんが」

「なるほど。ではアリスさん」

「はい」

「先ほどの話ですが、電話線が届かない相手とも、名前も知らない相手とも繋がることが出来る技術の話を聞いたのですが、アリスさんからデメリットについて聞いても良いでしょうか?」

「え?……私がですか?」

「なら私が」

「いいえ、アリスさんにお願いします」


 三穂さんがあたしの代わりに喋ろうとするけど、東さんがそれを拒否した。


「アリスさんは卓さんの次に新しい識人です。言い換えれば、他の皆さんよりも旧日本の最新情報について詳しいと思いまして。それにあなた……コンピューターの使い方をアリスさんに頼んでいましたし」

「……あ」

「……あの、多分ですけどあたし中学生で死んでるはずです。政治とかあんまり詳しくないと思いますけど」

「構いません。むしろ中学生だから……われら大人には見えない、分からない問題と言うものがあるでしょう?それが知りたいんですよ。旧日本の中学生しか見えない問題を」


 ……あたしは迷った。


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