(更)技術革命編 5
「あ、師匠忘れてた。今日暇でしょ?ならこれ読んどいて」
「なんだ?」
あたしは部屋で書いたものを師匠に渡した。
「あたしなりの転生者接し方マニュアル……昔の言葉でいう……指南書みたいな?これ読めば現代の転生者は順応すると思う」
「なるほど、参考にする」
全員が席に座ると、スーツを着た女性が長机の前に立つ。
「それではこれより卓様の報告をしたいと思います」
「ちょっといいかね?」
割って入るように喋ったのは議員バッチを付けた男性だ。
「何でしょうか?」
「確かに憲法には識人より報告がある時はどんな会議よりも優先しろと言うものがある。だが大抵は報告の内容を先に通知するはずだ。今回はそれがない。それにだ、コーセイ電機はまだいい、だが何故娘が同席しているのか。娘はまだ学生だ、そして神報者の弟子とはいえ、同じ学生がこの場に居るのはふさわしくないと思うのだが?」
……西宮さんを娘と言った……この人が西宮総理か。
最近テレビすら見てないから気づかなかった。
「今回の報告会の参加者の人選は全て私が秘書をしております、卓様が致しました。今から報告する内容を一番理解できるのがアリス様だと卓様が判断した……そして同じ年齢のご意見も頂戴いたしたく、総理のお嬢様をお呼びした次第です」
「そうか……なら良い」
「では報告会を開始いたします。確かに先ほど総理がおっしゃったように本来であれば所定の手続き、内容の通知が必要であるのは承知しております。ですが今回、卓様の意向により、非公式な会議という形を取らせていただいたのは謝罪いたします。この度この場を取り仕切らせていただきます卓様の秘書、橘と申します」
「……!」
……なん……だと?
あの人が……卓の秘書……だと?
ポニーテール、巨乳、くびれ!眼鏡!……あれが秘書ですか!確かにパソコン開発の片手間で家庭教師すれば良いとは言ったけど!……絶対保健体育の実践とかやりだすよ!
うらやましいいい!
「へえ……アリスちゃん、ああいうのが好みなんだ、三穂お姉さんちょっとがっかりだなあ」
「……私は三穂さんも好きですよ?友里さんも好きですけど、好きに出来る美人で可愛い女性は話が別です」
「……そ、そう」
何故か三穂さんが絶句してらっしゃる。
何ですか?性癖を素直に言っただけですが?
「それではまずこちらをご覧ください」
部屋の入り口から大きな二つの機械が入って来る。
一つは布が被されており、もう一つはそのままだ。
でも……あたしにはそれが何か分からなかった。
「……何あれ?」
「ほう?識人でも分からない物があるのですな」
運ばれてきたのは、パソコンに似てはいるけど、何かが違う。
第一、モニターがない、キーボードもあたしの知っているものじゃない。
「アリス君が分からないのも無理はない。現代の若者だと使ったことがある人は居ないんじゃないかな?これはタイプライターだ」
「……ああ!これが!」
始めて見た!ああ……確かに写真……もしくは動画とかで見たかもしれない!
実物を見たのは初めてだけど。
確かヴァイオレット……映像が出てこないってことは、見てないなあたし。
「これは首相官邸の備品をお借りしました。これを持ってきたのには理由があります」
そう言うと、橘さんは説明を始めた。
現在の日本には自動的に紙に文字を正確に打ち込む機械、タイプライターが存在するけど、タイプライターは一度に一枚しか打ち込めない。
そしてそれを元に大量生産するには文字を並べる活版印刷するしかないという状況らしい。
しかもタイプライターの欠点は、撃ち間違えた場合、修正することが出来ない。……正確には、間違えた場所を修正液等で上から打ち直す……らしい、そう思うとめんどくさいな。
「と、ここまでが現在の書類の作成方法です」
「そうなんだよなあ」
「打ち間違えると、めんどくさいんだよなあ」
「……」
識人、先民、両サイドから頷きと、同意の声がこぼれる。
「さて、ここまでタイプライターのメリット、デメリットを紹介しました。では今回の本題に入りたいと思います。この度、卓様のご尽力によりタイプライターのデメリットを解消する新しい機械が開発されました」
そういうと橘さんはテーブルに乗せてある布を被った機械を指さした。
「ならさっさと見せたまえ」
「アリス様こちらへ」
「……へ?なんであたし?」
「卓様曰く、現状これを最も扱うに適した人材はアリスさまだけだと」
いやあ、多分出てくんのパソコンよな?
なら現代人ならみんな扱えません?あたしでなくても。
「……あたし以外にも識人いるじゃないですか、ほら三穂さんだって」
「ごめん」
「え?」
「あたしたちさあ、タイプライター慣れすぎて……使い方忘れた」
「……Wow」
三穂さんの言葉で識人たちが全員目を逸らした。
……こいつら。
ていうか、あれじゃん!あたしがちゃんと扱えないと……日本にパソコンが普及するのが遅れる!?……責任重大じゃないか!
「落ち着いてくださいアリス様。卓様からの助言です、旧日本でやったようにすれば問題ないと」
「……」
あのさあ……やった記憶が無いからビビってんのよ!
……やるしかない!
あたしは椅子に座る。
「それでは皆様、本題である卓様の発明品、コンピューター……日本語名電子計算機のお披露目でございます」
そういうと橘さんは布を取った。
「おおお!」
「お!……お?」
先民側と識人側で反応がきっちり別れた……もちろんあたしも識人側だ。
……想像してたより……でかい!
あたしが知ってるデスクトップパソコンの十倍くらいでかい!
「どうかしたのかね?」
先民たちが何故か嬉しそうな表情をしている。
どうせ、識人なのに知らないのかあ……的なこと考えてんだろ!
「橘さん……これ……パソコンですよね?あたしが知ってるパソコンにしてはでかすぎるというか」
「……はぁ、皆さま勘違いしてらっしゃります」
「え?」
「これはパソコンではありません」
「……?」
「私は先程言いましたよね?これはコンピュータです。個人が使えるように小型化したパーソナルコンピューター……ではなくコンピューターです。まあこれでも出来る限り小型化しましたが」
あたし含めた識人全員がハッとした表情になった。
「とまあ建前はここまでにしましょうか」
「ん?」
「ここからは卓様の言葉をお伝えします」
そう言うと橘さんは紙を取り出した。
『この度は手紙という形となりましたことをお詫びします。本来であれば私が直々に出向くのが礼儀ですが、日本の現状を見たところ、会議に参加する時間が惜しいのでこの形になりました。代わりに秘書を遣わしましたのでよろしくお願いします』
……あいつ、小学生……いや中学生だったよな?
何でこんなへりくだった……敬語使えんの?橘さんが書いた?それともあいつ、そういうご家庭の生まれだったか?
『さて、転生し日本の科学技術の発展具合に驚き、コンピューター作りに着手したところですが……以外にも驚いたのはこの国の研究者がコンピューターの基礎を開発済みでした』
「はあ!?」
『恐らく先に転生した日本人たちが持ちうる限りの情報を伝えた情報なのでしょう』
……マジか。
基礎だけは出来てたんだ……日本人が頑張ったんだな……多分、パソコンでエロゲーしたくて。
『しかし、ほぼ完成してたとはいえ、肝心の部分プログラムが出来ておりませんでした』
……あー、なるほど、プログラムか……確かにプログラムだけは専門で習わんと分からんか。
『そしてプログラム作成に着手した私ですが、とあることに気づきました。転生者にはユニーク……つまりチートがあるらしいですが、私の場合、コンパイルした時のエラーが常に見えることでした』
「はああああああ!?」




