(更)技術革命編 2
「あ!いらっしゃい!お待ちしてました!」
転生が現れるあの場所が転の儀場という場所から車で数分走ると、一家の木造の家が現れる。
そこはこの儀仗の森の管理を任されいる桜木さんという方が家族で住んでおり、奥さんの明日香さんが出迎えた。
「明日香さん、いつも通りに三階に行くので食事をお願いします。後、アリスを連れてきました。……つまり話もあるでしょうし、あとは皆で色々思い出話でも」
「分かりました」
師匠はそう言うと、足早に転生者を担いで三階に登って行った。
……車でここまで来ても、結局担ぐのかい。
「アリスさん!」
「え?ふごっ!」
急に明日香さんに抱きしめられた……それもかなり強く。
「……えーと」
「すみません、でもどうしてもアリスさんにお礼を言いたくて。アリスさんは主人の命の恩人ですから」
「あ……あー」
さて皆さん、何があったのだろと聞きたいよね?
長くなるので要約してお話しよう。
先月、つまりあたしが転生した次の日のことだ。
ここの主人である桜木裕也さんがウィビシとか言うこっちこそライオンじゃね?という見た目の獣に襲われたんだ。
肩から胸にかけて大きく裂けた重症、応急手当も出来なかった。
師匠はその場で手当てを諦めてウィビシに体を持ってかれないように救援が来るまで守り抜くことにした。
でもあたしは諦めなかった。
何か魔法で出来ることは無いかと見てた時、師匠のバッグからとある魔法の本が出てきた。
それが傷を治癒できる聖霊魔法に関する本だったんだ。
本来聖霊魔法は一部の男性にしか使えない魔法だった、でも当時のあたしはそんなこと知らずに師匠から預かっていた杖で魔法を使ってみようとしたんだ。
その結果、本来使えないはずの聖霊魔法は何故か発動して、無事裕也さんは生還することになった……これが明日香さんから感謝される理由だ。
ただ聖霊魔法でも四人以上居ないと使えない第四魔法を何故か一人で発動できてしまったから一瞬で魔素を消費してあたしはすぐに気絶、その後の事についてほとんど記憶人だよねえ。
「明日香、龍さん来たけど……あ!」
奥から一人の男性が出てくる。
……あの時、あたしが助けた裕也さんだ!
あのあと、あたしはすぐにホテルに行ってそのまま転生者専用の寮に行ったからその後を聞いてなかったけど……何もないようで安心した。
裕也さんはあたしの元に駆け付けると深々と頭を下げた。
「え!?ちょっと!」
「あの時は助けていただいて本当にありがとうございました!妻から聞きました、アリスさんが聖霊魔法で助けてくださったと!」
……ん?ちょっと待て。
さっきからおかしいと思ってたけど、あの時、あの場に明日香さんは居なかったはず。
それにあたしがやったことはそのユニークの重大性から師匠が秘密にしたはず……なんで明日香さんと裕也さんが知ってるんだ?
「師匠から聞いたんですか?」
「ええ、本来は私たちにも秘密にする予定だったらしいんですが、救われた人間には本当の事を話すと、当然秘密にするように釘を刺されましたが」
「なるほど」
「ちょっとあなた、命の恩人を玄関に立たせるのはあれでしょ?今日は泊るんだから早く中で食事をしましょう!それに里香も会いたがってますよ」
「そうだな!アリスさん、今日は盛大にもてなしますからね」
「……お手柔らかに」
それからあたしは家の中で里香と再会、桜木家と一緒に食事を楽しんだ。
ステアに入った事、名家の友人が出来た事、箒に乗るのが初めてなのにいきなりズトューパの練習試合でエキーパーを務め、ファインプレーで勝利したことなど話題は尽きなった。
そして、食事も終盤になり、デザートを楽しんでいた時、裕也さんが言葉を溢す。
「それにしても龍さんが弟子を取るなんて……驚きだなあ」
「やっぱりそんなに珍しいこと何ですか?」
「あの人400年生きてるでしょ?でもその間、弟子を取ったなんて誰も聞いたことないはずだよ?それにもしを取っていたら記録に残るはずだし」
「ちょっと聞きたいんですけど、何で師匠って不老不死になったんですかね?」
「あれ?本人から聞いてないの?」
「ステアに入ってからほとんど会ってなかったもので」
「なら本人から聞いた方が良いよ」
「……はぁ、ていうか師匠は今何してるんですか?一向に降りてこないし」
「ああ、転生者が目覚めるまで見守ってるんだよ。僕たちより事情に詳しい転生者が近くに居た方が精神衛生上いいってね」
「……なるほど?」
起きたら目の前に着物姿で刀を帯刀してる人間が居たら、いくら現代人でもビビるんじゃね?
「うわあああ!」
その時、三階の方から男の子悲鳴がこだました。
……うわあ予想通りの展開だ。
「……ちょっと行ってきます」
「行ってらっしゃい」
三階に到着すると、煙管を吹かしながら右手で杖を出そうとする師匠、そしてベッドの上で防御姿勢を取りながらしゃがみ込んでいる金髪の少年が居た。
……情報量が多い!
まあ状況的に目覚めて、目の前に知らない帯刀した男、そりゃあ防御姿勢になるわな。
師匠は……何で杖を……ああ、タバコ吸おうとしたのね。
「アリス」
「なんすか」
「何しに来た」
「いきなり悲鳴が聞こえたらそりゃ来るだろ」
「いらん心配だ、いつもの事だからな」
「それにしてもビビり方が異常だろうが!起きたら長髪で着物姿、帯刀してる男が居たら誰だってビビるだろうが!」
「知らん、これが俺のやり方だ」
……あのさあ、前にも言ってた気がするけど、転生直後に自殺する人がいるってのは……半分師匠のせいでもあるんじゃ?
「師匠正直に言うけど、やり方変えない?時代も変わってるんだし、現代人にそのやり方じゃ自殺者増えるって」
「あ?お前俺のやり方に文句があるのか?」
「あるから言ってるんじゃろがい!」
「ああ?」
「あの……」
あたしと師匠の言い合いに割って入る声が一つ……少年だ。
「僕を置いて喧嘩しないでくれますか?あなた方は?それにここは?これ誘拐ですよ?日本だと誘拐は解放すれば多少罪が軽くなります。早めに開放したほうが」
「……」
……あー、これめんどくさいタイプの奴だ。見た目と口調からそれが強調されてやがる。
誘拐ね……まああたしの最初はそう思ったけど。
でも……ある意味旧日本からこの世界の転生も誘拐ですよね!主犯は誰ですか!一言モノ言いたいんですけど!
「あの……ここは何処だと聞いてるんですが」
「ああ、えーと……どこからは話したもんか」
「ここは地球ではないぞお前はしん……」
「ちょっと待てやあああ!」
ぎりぎりの所で師匠の口を塞ぐ。
「何すんだ」
「だから!いきなり死亡宣告しようとすんなや!いきなり言われたって分かるわけないだろうが!」
「これが一番早い」
「早いは早いわ!準備運動というものを知らんのか!いきなりお前死んだ……とか言われたらお前は馬鹿か?で終わるだろうが!」
「じゃあお前ならどうする?」
「……ちょっと見てて」
少年の方を見る。
「……おっほん!」
「なんでしょう?」
「君の名前は?下の名前」
「……普通、名前を尋ねるなら自分からでしょう?それに何故下の名前なんです?それに誘拐のターゲットの名前を知らないのは杜撰では?」
「良いから」
「……はぁ、分かりましたよ。……あれ!苗字が出てこない。……あ、でも名前は分かる……卓ですね」
「うんうん、卓君か。じゃあ卓君、君結構若めだけど……ラノベとかよく読む?」
「……それなりには」
「転生系は?」
「まあ……何が言いたいんです?」
「もし……ここがその異世界転生の世界って言ったら?」
「……ありえません。もしそうなら僕は死んでいるってことになります」
そうだよねえ。
普通はそう考えるよね!
「……でも残念ながら卓君は死んだ。そしてここは異世界だよ」
「ありえないって言ってるじゃないですか!もし……もしここが異世界なら証拠を見せてください!」
ほれ来た!
「おっけ、今から見せるよ」
師匠がちょうど煙草を吸い終わったので、杖を出すと師匠に向けた。




