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(更)ズトューパ編 11

「はぁ……」


 病院に着いたあたしだったけど、大きくため息をついた。


「溜息をつきたいのは私なんだが?

「……すんません」


 病院に行くためにステアを出たあたしだったけど、箒乗って出発した瞬間、どっかに有ったとされる信号を無事無視し、警官に止められちゃったのよねえ。


 で、切符等の処理で時間が掛かると見た柏木先生があたしは識人で免許取りたてであることを警察官に懇切丁寧(柏木先生の性格的にどのような説明だったかはご想像にお任せします)に説明し、事なきを得た。


「私は今日に限っては機嫌がいい、これ以上は何もないとは思うが、何かあったら即座にステアに戻すからな」

「……イエスマム」


 その後、面会受付でも識人であることを疑われたりし、一波乱起きるけど、無事にあたしは順先輩の病室に向かった。


 基本的に第二日本国の病院は知らないけど、このステアがあるマギーロの病院には所謂大部屋がないらしい。


 まあ魔法で空間を拡張できるんだし、必要ないわな。


 そしてここで入院している人に外傷や病気の人は居ないらしい。


 魔法で何とかなるらしく、ここに入院しているのは大抵魔法で時間を掛けて中和しながら直す病人ぐらいだという。


 順先輩の病室に着いた時、表札を見たあたしは驚いた。


『柏木 順』


 奇しくも先生と同じ苗字だった。


 そういえば、受付の時は先生がまとめて書いたから分からなかったけど……同じ苗字……だよね?


「先生……変な事聞くけど……順先輩の苗字が先生と同じなんだけど……ただの偶然?」

「ん?ああ、言ってなかったか。順は私の弟だ」

「……え?」


 ええええええ!?


 その場にいた、あたし含めた四人が泥期の表情を見せた。


 でも病院なので、さすがに声は出さない。


「と言っても血は繋がっていないから義理だな。かなり年が離れてるし、順が柏木家に来たのも私が結婚した後だから、ほぼ面識はなかったよ。ちゃんと喋ったのだってあいつがステアに入ってからだ」

「……なるほど」


柏木先生が病室のドアを開けようとした時、手が止まった。


「……先生?」

「しっ」


 そいうと、先生は扉に耳を近づける。


 あたしたちも同じようにすると、病室の中から話し声が聞こえた。


「……でね!アリスちゃんがね!」

「!?」


 病室の中から小林先輩の声が聞こえてくる。


「さっきからそれしか話してないな夏美」


 そして同じ病室から聞こえてくる男性の声、多分順先輩だ。


「先生これは……所謂盗み聞きでは?」

「私は教師じゃない、順の姉だ」

「……そっすか」


 都合が良いなあんた。


 まあいいか、何か問題が起きれば全て柏木先生のせいに出来る。


 さあ、続きを聞こうじゃないか。


「そんなに嬉しいか?」

「当たり前でしょ!順君が入院してから一度も勝ててなかったんだから!アリスちゃんや成田ちゃんのお陰でやっと勝てんだよ?嬉しすぎて暴れた気分だよ!」

「ここ病院」

「分かってる」


 何だろう、あたしの知ってる小林先輩じゃない。


 いつものお調子者の小林先輩の口調とはまるで違う……まるで本当に好きな人と話しているって感じの少し甘えた感じの口調だ。。


 そんな先輩が好きな順先輩とやら……いったい何者なんすか。


 でも……実に微笑ましい会話であることは事実だし、小林先輩があそこまであたしたちを褒めてくれることに少し嬉しさがある。


「(微笑ましい会話ですね)」

「(私が望んでいるのはこう言う会話ではないんだがな)」

「(は?)」


「じゃあ俺は要らないか」

「そんな事ないよ!確かに成田ちゃんもアリスちゃんも必要なチームメイトだけど、ちゃんとコントロールできる人が必要でしょ?峰くんは現場で、順君がスエンター、ほら必要!」

「そうか」


「……それでさ、あの時の約束……覚えてる?」

「……!」


 あたしには約束の内容は分からない。


 でも分かってしまう!


 内容関係なく、それを守るイコール……付き合う系では!?


「……」


 先生がもっと聞こうと体を動かす。


「(先生!さすがに気づかれる!)」

「(すまん)」

「約束……なんだっけ?」

「順君が入院するとき、部長代理を私に指名する際、言ったよね?『もし、お前が部長代理の時に試合に勝ったら』って」

「何か……言ったか?」

「……本当に……覚えてない?」


 小林先輩が涙声になる。


 マジで覚えてないのと心配になってるんだ!


 行け!先輩!押せええ!


「……夏美、耳貸して」

「え?……うん」


 あたし含め、その場の全員がその瞬間、順先輩が小林先輩に何を言ったのか分からなかった。


 でも次に聞こえたものでおおよそ結果が分かった。


 小さい、小林先輩の嬉しい……と言うべきか信じられないという悲鳴だった。


 ……何が起きた!?順先輩!何を言ったんですが!


「……嘘……ホントだよね?」

「俺がそんな嘘をつく男に見えるか?まあ必要ならつくこともあるけどさ。でもちゃんと覚えてるさ『もしお前が部長代理になって試合に勝ったら付き合ってやる』ってな。これが返答だ」

「……あ……あ……ああああああ!」

「夏美?」

「わあああん!やっだあああ!頑張っだあああ!」

「夏美……だからここ病院……」

「よくやった小林いいい!」

「……えぇ」


 告白が成功したことを確認した先生は満面の笑みで病室に雪崩こんだ。



 約数分後、涙で顔面ぐしゃぐしゃの小林先輩を何とか落ち着かせるとあたしたちは順先輩の前に並んだ。


 こうやって見ると……血は繋がっていないとはいえ、かなりのイケメンだ。


 小林先輩が惚れるのも分かる気がする。


「それで?試合の結果は峰から聞いたけどさ、何しに来たの?義姉さん」

「ああ、新入生の紹介に来たんだ。部長代理は小林だが、本来の部長はお前だからな」

「なるほどね」

「すまんが今年は人数が少ないのを許せ。識人のサチ、霞サチ、コウ、西村香織、そして成田優だ」

「霞?……って名家の?なんで花組にいるのさ」

「……色々あって花組に移動になったよ」

「ふーん。まあいいか。花組ズトューパ部部長、柏木順。そろそろ退院だから選手として入った人は……覚悟してね」


 わー、血が繋がってないはずなのに、なぜこうも雰囲気が柏木先生みたいなのよお!


 あれですか!柏木家に住むとみんなこうなるんですか!


 その後、何故か順先輩も祝勝会に参加することになり、一緒にステアに戻ることになった。


 しかし、あたしは……ステアの校門前での一波乱もあり、最初の乾杯だけ参加し、あとは試験対策ではない、ちゃんとした授業を柏木先生から教わる時間に変わってしまった。


 ……この試合の功労者あたしですよね?


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