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(更)ズトューパ編 10

「……知らない天井……じゃないな。控室だ」


 言って見たかったセリフだけど、よく見ると思いっきりさっきまで居た控室だ。


 どうやら安易ベッドに寝ていたようだ。


 ……あたし勝ったよな?


 ……ああ、でも……皆に抱き着かれて……うん、気絶したんですね。


 気が付くと、香織があたしの手を握り、久しぶりの勝利にテンションが振り切っているみんなを見ている。


 ……可愛い。


 香織を撫でようとした時だった。


 小林先輩と目が合った。


「あ!起きた!アリスちゃーん!英雄が起きたぞお!」

「「「おおお!」」」


 小林先輩があたしに抱き着き、頭を撫でまわす。


 そして周りの選手のボルテージがもう一段階上がった。


 ……ああ!胸が!胸が当たる!友里さんとはまた違う感触!良い!


 先輩の胸の感触を楽しんでいる時だった、峰先輩が引きはがす。


「ちょっと何すんの!」

「ああ、胸が!」

「あのなあ!アリスは初心者でデビュー戦だった。最後は完全に気力だけでやり切ったんだからもう少し労わってやれ」

「これはあたしなりの労わり方ですう!アリスちゃんも喜んでるよね?」

「いえええす!」

「……おまえらなあ……」

「盛り上がっている所失礼する。アリスよくやった」


 勝利のボルテージが上がっている中、柏木先生が部屋に入って来た。


 少しだけボルテージが下がる。


「いや、別に騒いで構わん。私も鬼じゃない、最低限のモラルが守られれば誰も勝利の美酒を楽しむことを止める権利はない。私だって花組の人間、教え子が勝利したんだ、私だって騒ぎたいさ!さあ!おめでとう!」

「「「おおお!」」」


 柏木先生が激励を飛ばすと、下がっていたボルテージが戻った。


 同時に先生はあたしの頭を撫でてくる。


 ……なんだろう、今までの人よりも違う……一見乱暴に見えるけど……少し安心する撫で方だ。


「先生、アリスをエキーパーに指名したのは……こうなることが見えていたんですか?」


 唐突に峰先輩が尋ねる。


 多分回りも聞きたいことだ、あたしも聞きたい。


「……そんな事分かるわけないだろ?ただ今までの試合全部見てきたが、このままじゃ確実に負ける……変えるには何かを大きく変える必要があると思ったんだよ」

「それが何故アリスをエキーパーに?」

「チームのフォーメーションを知らないのにスエンターは無理だろ?……まあ臨時で小林にしてるが。それにアリスは昨日の実技試験で飛行に恐怖心を感じる様子がみじんもなかった。小林と同じエキーパー向きだと思ったんだよ」

「……なるほど」


 やっぱり小林先輩は元エキーパーだったか。


「それにエキーパーは主に単独行動が多い!初心者向きじゃないが……チームの状況を見るのに一番初心者向きだと私は判断した」

「そう言うことですか」

「ただ……ここまでやってくれるとは思ってなかったがな!」


 ……先生……単純に面白そうだからやってみただけか!


 適当すぎませんかねこの人!


「でも今回の作戦はズトューパを知らないアリス、そしてアリスを知らない奴らとの対戦だったから上手くいっただけです。観客も多くいたんです、研究されて、次からはこうは行かないでしょ?」

「だろうな、だが問題ない」

「何故?」

「あいつが戻って来る。……正スエンターがな。あいつのコントロールが加われば……どうなると思う?」

「!?」


 みんなの空気が変わった。


 確か、本来の部長だったはず……鳥組の精神的支柱が山神先輩だったように、本来花組の支柱がその部長さんか。


「プロのエキーパーでも良くいるだろ?小林やアリスみたいにワンポイントに突出した選手。まあ暴走気味になることもあるが……だが大概のチームにはそれをコントロールする卓越したスエンターが居るのも事実だろ?」

「順だったらそれが出来ると?」

「事実あいつがスエンターになってからの試合はほぼ負けなしだ。小林さえもコントロールできてたんだ、アリスぐらいいけるだろ」

「……それは小林が順の事……まあ良いですけど」


 ちょっと待ってください。


 今峰先輩聞き捨てならない言葉を言いかけましたね!


 小林先輩とその順先輩……そういう関係ですか?


 私……超絶気になります!


「後は順を交えての練習あるのみだな。さて……久しぶりの勝利……この美酒を味わうべき人間が一人足らないとは思わないか?」

「え?ああ」

「……?」


 ……まあこの話の流れならそれが誰かは分かる。


「その入院中の順?先輩ですか?」

「そうだ、さっそく報告に……小林はどこ行った?」

「ああ、ついさっき『あたしが行ってくるね!』って一人飛び出していきましたけど。ユニフォーム姿で」

「……あの馬鹿。何故順が小林を部長代理に指名したのかまだ分からん」

「それは代理と本来の部長とでは役割が違うとかなんとか。ていうか、さっき俺が電話で伝えたんすけどね。電話口だけどすげー喜んでいましたよ」


 と、峰先輩が肩をすくめた。


「そうか……なら私も行こう。まだ順にはアリス達を紹介してないからな。紹介がてら行ってくるよ。それに……小林が先に行ったってことは……もしかするとあれが見れるかもしれん」

「ああ、なるほど」


 一年を除いて全員がニヤニヤする。


「ついにか」

「ようやくだな」

「勝ったんだ、さすがに順も約束を守るだろよ」

「いやあ、その場に入れないのが残念だ」


 ああ、これはあれですね。


 今順先輩の元に行ったら……告白イベントが発生中かもしれんと……行くっきゃないでしょ!


「さて本当なら顧問が私が締めの言葉を言うのだが、馬鹿が一名先走ったので簡単にする。副部長、今いる奴らを掌握し、寮へ戻れ。今頃寮でもお祭り騒ぎだろから私たちが戻るまで祝勝会の準備をしてくれ。今日は私の奢りだ」

「ああ、それなら山神との賭けに勝ったんで、祝勝会は鳥組の奢りっす」

「……抜け目ないな。だがそれは生徒同士にしておけ、教師が生徒に奢られるわけにはいかんからな。別の機会にでもやれ」

「了解です」

「さあ、新入生諸君。行くぞ」

「「「はい」」」


 拍手喝采の中、あたしたちは控室を後にした。


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