(更)ズトューパ編 3
「じゃあ識人のアリスちゃんの為にまずズトューパの説明からしようか!」
「おなしゃす!」
「まず、ズトューパをするために必要な人数は……」
「9人です」
成田さんがさも当然とばかりに即答する。
……いや、あの……その当然って表情止めていただけません?
こっちは何一つ知らないんですよ!
もしかしてさっきのまだ怒ってます?ごめんて!
「正解!と言ってもアリスちゃん以外は幼いころから見てるから知ってるか!じゃあ成田さん代わりにルール説明お願いします!私は都度補足するので。その方が来年から後輩に説明するときの練習になるしね」
「はい」
成田さんが黒板の前に立つ。
「お、お願いします」
「……ズトューパの基本人数は……」
無視されたあ!
ズトューパの基本人数は9人。
その内、一人はフィールド内の指揮所に入るため実際に戦うのは8人だ。
基本的なルールは一層101枚、三層303枚のシールドを魔法で破壊するというもの。
各層のシールドの過半数枚を破壊すると、一層目なら1ポイント、二層目なら2ポイント、三層目なら3ポイントが入る。
そして相手チームの選手を魔法もしくは体当たりで箒から落とす、もしくは地面に接触させると、2ポイント入る。
そして終了条件、三層のシールドの中心にはゴールボールがあり、それを魔法で打ち抜くと5ポイント獲得で試合終了、その時点でポイント数が多いチームが勝利だ。
ここまで聞くと、確かに箒を使うスポーツだけど、クィディッチとはだいぶ違う。
クィディッチは試合終了がス二ッチ確保だったはずで、試合が何日も続くことあるらしいけど、ズトューパはそんな事なさそうだ。
「ここまでが基本的なルール。……大丈夫?」
「イエス」
「じゃあ次はポジションについて」
9人の内、スエンターと呼ばれるのがシールド内で指示を出す役割だそうで、仮にチームの内、過半数が脱落した場合のみ参加することが出来る。
「このスエンターが私だね」
先輩が笑顔で自分の顔を指さす。
もう一つ特殊なポジションがエキーパー。
試合中に放たれる高速で飛び回る小さい鳥……『エパッチマス』を捕まえるポジションらしい。
ハリーポッターでいう、シーカーのようなポジションだ。
「その……エパッチマスを捕まえるとどうなるんすか?」
エキーパーには特殊な手袋が配布され、エパッチマスを捕まえると鳥から小型の手榴弾に変化するという。
手榴弾の使い方は様々だ。
ゴールボール周辺の地面には円形の白線が書かれており、その中にピンを抜き、入れると、その時点で残っているシールドがすべて割れるらしい。因みにゴールボールは割れない。
因みに変形あとの手榴弾はチームメイトに渡すこともでき、相手に投げることも可能だ。
そしてエキーパーにはもう一つ特殊なルールがある。
他のポジションの選手は魔法を相手に当てることが可能で杖で防ぐことも可能だ。
しかし、エキーパーの魔法は同じポジション以外の選手には魔法を撃っても箒がシールドを自動発生させるため、当てることが出来ないらしい。
つまりエキーパーの攻撃手段は体当たりか、手榴弾を当てるしかないということになる。
その代わりにエキーパーの杖の魔法は他の選手がシールドを一枚しか撃てないのに対して、貫通効果があるのだ。
しかし、一枚でもシールドに触れればゴールボールは反応しないらしい。
また、ゴールボールは自己防衛機能があるらしく、一枚でもシールドが残っている限り、それを使って守ろうとするとか。
「なるほど」
ここまで聞くと……まったく違うな!
でもまあ……箒で飛べるから楽しみなのは変わりない!
「すみません、ルールの所で……体当たりはオーケー掴む等は?」
「殴る蹴る、掴むは原則禁止だよ。反則と見なされると自動的に箒が飛べなくなって落ちるから。壁に当たるのはセーフ、あくまで地面に触れたらアウトってだけ。あと、一般的には上に関して制限ないよ。それとスタンドから10メートル出る同じように飛べなくなるからね」
「了解です!」
でも地面には落下死防止の魔法掛かってるよね?
ならそれ使えば……一時的に降りるのはありか?……ていうか、なんか忘れてね?
……あ。
「小林先輩、柏木先生が部長さんに会ったら渡してくれって」
一枚の紙を渡した。
「へー……どれどれ」
小林先輩は中身を確認する。
すると、驚きの表情から笑顔になった。
「了解!じゃあ説明も終わったし専用グラウンドに行こうか!ちょっと遠いから箒使って行くよ!アリスちゃんは免許取りたてだからゆっくり行こうか」
「うっす」
「じゃあ皆運動着に着替えてグラウンドへゴ―!」
数十分後、あたしは運動着に着替え、箒で飛んでいた。
免許取得した後の初飛行だ。
「良いねえアリスちゃん!初めてとは思えないよ!」
「へへへ!あざーす!」
正直あたしも最初は恐怖を感じるかと思っていた。
でも、この飛行機ぐらいしか飛べない速度、高さをガラス越しではない光景に興奮して恐怖を感じることは無かった。
「そろそろ着くよ!」
あたしの目に見えてきたのは、普通の高校にもありそうなグラウンドだ。
でも違うのは完全な芝生であること、普通の高校なら敷地の問題等で色んな部活が使うことも考慮していろんな線が引かれてるけど、これは中央に丸形の線が引かれてるだけのズトューパ専用のグラウンドだ。
グランドに降りると、休憩中だったのか、他の花組の部員が集まって来る。
「小林!そいつらは?新入り?」
「そう!喜んで!人数揃いました!」
……え?……ん?揃った?何が?
「小林先輩……どういう意味で?」
この質問に小林先輩の顔が引きつる。
「小林……言ってなかったのか?すまんな後輩、うちはな……お間らが来るまで小林含めて七人なんだよ」
「はい?」
七人……人数足りてないじゃん!
とんでもない情報に驚くあたしだけど、意外にもあたしだけじゃないようだった。
サチやコウ、成田までも呆気にとられている。
「……あの試合出来るんですか?」
「あ?知らないのか?……ああ!お前か識人、ならしょうがない。ズトューパは『基本』9人だが、ペナルティー扱いで最大三人なら減らして良いんだよ。ペナルティーはマイナス6ポイント……つまり三人最初から脱落扱いだ。……小林、言ってなかったのか?」
「だって……」
「だって?」
「だって言ったら入部してくれないと思ったんだもん!順君が戻ってくるまで部を支えようと思ったらちゃんと部が機能してるよって見せないと入ってくれないかなって思ったんだもん!」
「お……お前」
男子生徒が小林先輩に近寄る。
「そういう嘘をつくから昨日、一昨日の新入生、仮入部だけで皆居なくなったんだが?分かってる?」
「そうなんですか?」
「ああ、部の現状を言わないでこいつが入部させようとしたから、皆知った途端に他の部活に行ったよ。本来は部員が足りないからすぐにレギュラーになれると言えばいいのに、嘘ついたから『信用できない』ってな」
「Wow」
「それに昨日に至っては俺たちが知らない間に新入生に睡眠魔法かけて、本入部届書かせようとしたんだ。まあ寸前で止めて大事にはならなかったけどな。いくら活躍できると言っても味方を無理やりやらせようとする部長について行こうとは思わないよな」
「……Oh。……小林先輩」
「確かにこいつは強いと思うぜ?それでも目的の為なら味方を利用するのは良いが、良いことと悪いことはあるだろ?」
「だってえ」
「それでお前らは?」
「へ?」
「ここまで聞いてズトューパやるのか?お前らもだ。こいつは時々敵に対して味方もドン引きするような事をやるが、それ以外は基本仲間思いで、後輩思いだ。本当はこんなことは言いたくないんだが、今入部すれば即スタメンだ。どうする?」
即座に成田さんが一歩前に出る。
「部がどんな状況だろうが、私はズトューパやるって決めてたので関係ないです」
「ああ、私も!箒で飛ぶ競技に興味津々なので!あ、あと一応選手希望はあたしだけで、こっちの三人はマネージャー希望です」
それを言うと男性生徒が笑顔になった。
「マネージャーだろうが部に入ってくれるのは大歓迎だ。……これでハンデともおさらばだな。俺は副部長の峰だ」
「成田です」
「アリスっす」
「……霞サチ」
「コウ」
「香織」
「よろしく……おい!部長代理!全員入部だ!ミーティング始めんぞ!」
体育座りで意気消沈していた小林先輩は全員入部と聞いた瞬間飛びあがった。
「……まったく元気だけは良いんだよな。まあだから順が選んだのかもな。とりあえず明日のミーティングだ」
「明日、何かあるんですか?」
「練習試合」
「マジか!」
「さて、9人そろったわけだが……いつも通りエキーパーはくじで決めるか」
「あ!それね!今回は義姉さんからオーダー来てるよ」
「ほう?あの人も偶には仕事するんだな」
柏木先生……もしかして名前だけの顧問か?
それより小林先輩、柏木先生の事を義姉さんと呼んだことについて詳しく。
「今回の練習試合に関してはアリスをエキーパーに指名する。それ以外は部長代理と副部長に一任する……だって」
「……マジか」
柏木先生のオーダーを聞いた瞬間、全員の意外……そして可哀そうにという目線があたしに向いた。
……なんで?




