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異世界転移したら俺は巫子の出自だった。  作者: K.ユフィン
第1章
3/82

国の事を知らなければ。

 


 この世界に来て1週間が経過した。俺は水属性と風属性の魔法を学ぶと共に他の魔法も隠れて訓練していた。特に氷属性の魔法とは相性が良いらしく、俺が視認できる範囲ならば氷土に変えて氷柱を生み出す事も可能だ。


 と言っても人前では使えるわけもなく夜に闇属性で分身を作ってこっそり抜け出して人気の無い荒野で魔法を試しているから少し寝不足でもある。まぁ、最初は行くのに苦労したけど転移魔法があれば行った事がある場所なら直ぐに行けるから今は苦労していない。


 寧ろ、このローレンガルド王国周辺の地理を把握する事も出来るから一石二鳥と言った所だろう。


 夜だから入れないが此処から馬で3日程の距離に町や村がいくつかあり更に馬で1週間程の距離に広大なフィールアの森が存在しており、この森を超えた先にローレンガルド王国の宿敵らしきアーデンエリス王国があるらしい。


 だが、アドルフ王が言うアーデンエリス王国の侵略についてはフィールアの森周辺の村や町には痕跡が見当たらなかった。


 夜の森は夜行性の魔物が行動を開始しているので非常に危険なので森に入る事は出来ないし、野営するにしても森の中に潜むのは手だが、隠密に特化した人間なら可能だが大部隊がやるにはリスクが大きすぎる。もし、本当に侵略をするなら周辺の村や町を占拠し、それを足掛かりにして攻め込むのが定石だろう。


 しかも、転移魔法が存在する世界だ。少数精鋭でフィールアの森を突破して魔方陣で転移魔法を設置すれば、大部隊を移動させる事は容易い筈だ。



 そんな事を思考している俺は今、フィールアの森が見える人気の無い荒野で鍛錬を終えて巨大な岩の上に座って光属性で地図に石を置いて睨めっこをしていた。



「俺が転移魔法を使えるって事はこの世界の住人にも転移魔法が使える代物と考えるべきだけど・・・そんな痕跡も気配も無い。なら、転移魔法がとんでも無く難しい魔法で大人数を移動させるには大量の魔術師と魔力が必要になると定義すると、どうなる?」



 もしそうだとしたら、俺をこの世界に呼び出す為にかなりの魔力を使った事になる。一体何人の魔術師を犠牲にしたのだろうかと言う疑問に繋がるな。仮説が立ったなら調べて証拠を探せばいい。幸いな事に子供の身体だからな気配さえ消せば潜入は容易いしな。


 俺は転移魔法を使ってローレンガルドの王城に転移した。



「うん、丁度良い時間帯だな。」



 この時間帯はメアリーがアドルフ王に俺が今日1日何をしていたのかを報告する時間だ。気配を消してアドルフ王の私室がある場所まで移動を開始する。この1週間で巡回する兵士や城の構造は感知魔法で一通り把握済みだ。


 これは親父から人の気配を感じる方法を教わっていたから、直ぐに覚えられた。これで城の地下に謎の空間がある事も分かっている。都合の悪い物は地下に隠す。上等手段だ。



「勇者の様子はどうだ?」

「はい、リフィア姫と共に日々勉学と魔法の訓練に勤しんでいます。」

「そうか、リフィアも一緒というのは意外だったな。」

「おそらく同年代のユウ様が居るからでしょう。リフィア姫様にとっても良い影響を与えてくれる存在です。

「うむ、だがリフィアには悪いが勇者には死んでもらう事になるがな。」

「やはり実行されるのですか?」

「それしかあるまい。アーデンエリス王国は莫大な軍事力を持っている。それを封じるには膨大な魔力を持った者が必要だ。聞くに勇者は魔法を既に上級魔法を使えると聞く。」

「はい、水属性の上級魔法を既に使えるようになっています。撃った後も疲れた様子を見せていませんし、魔力量の低下も見られませんでした。」



 魔力量の低下・・・そういえば魔法を使った時は全力でやったからなそれで測れたって事か。今は気配と一緒に魔力を身体から出さないようにしているから隠せてはいるけど。



「うむ、では指示した通りの基準まで魔力制御が可能なレベルになったら知らせよ。計画を実行に移す。」

「・・・・かしこまりました。」



 そろそろ離れようか。俺はその場を離れると部屋には戻らずそのまま地下へと向かう。多分、アドルフ王が言っている魔力制御の基準については既に超えていると思った方が良い。調べられる事は調べてこの国を出た方が良いだろうな。


 俺は転移魔法で外へ出て地下通路がある場所へと移動すると地下通路に潜入した。


 緊急時の脱出用に分身体に魔方陣を仕込んであるし、部屋にもいくつか仕掛けを用意してあるから何かあればすぐに使えば脱出は出来る。

 この地下通路は真っ暗だけど闇属性の魔法で暗視が出来るから暗闇でも良く見える。だから灯りは要らない。


 足音を抑えて地下通路を駆け抜けると弱々しい気配を感じた。直ぐに俺は壁際に背を付けて気配のある方を見ると、そこにはいくつもの牢屋が並んでいた。


 なんだこれ・・・囚われている・・・いや違う。


 見る限り意識がある様子では無かった。いや目は開いているが虚ろな目で何もない所を見つめている。しかも、薄汚れてはいるが魔術師の格好をしているにも関わらず魔力が殆ど感じられない。


 まさか、魔力欠乏症か?


 魔力欠乏症:魔力を限界以上に使った場合に生じる事が魔力を回復する事が出来なくなる病。魔力を生み出す力は人間の精神力に依存する。魔力を消費すれば魔力を回復する為に精神力を使う。精神力を消費するという事は人間の体を動かすエネルギーを消費する。体を動かすエネルギーを消費すれば身体が疲労し動きが鈍くなる。要は披露するのだ。これが魔力と人の繋がりである。

 では魔力欠乏症になるのはどういう時か、それは精神力では回復できない状態まで魔力を消費した場合である。つまり回復に使用する精神力まで魔法を使う為に使ってしまった場合だ。そうなれば精神力、つまり心を消費する事になるので、感情が失われるのだ。そして酷ければ身体だけは生きてるが心が死んでいる状態になる。ここに居る者は全員、その症状が見て取れる。

 しかも、魔力欠乏症よりも酷い症状を持っている者もいる。精神力だけでは無く生命力まで使用して魔法を行使したのだろう全身が不自然な程に痩せこけて骨と皮だけになってしまい浅い内臓も殆ど機能していない。辛うじて生きているのが不思議なくらいだ。


 全員、俺を呼び出した時に見た魔術師だ。これだけの人間を犠牲にして俺を呼び出す理由がアーデンエリス王国への攻撃?

 アーデンエリス王国がどんな国かは知らないけれど、俺はこの人達の命を代償に呼び出されてアーデンエリス王国で死ぬ事になるのか?

 何の為に・・・。


「そこに誰か居るのか・・・?」


 やばい、見つかったか!?

 咄嗟に身構えたが、灯りも兵士らしき気配も感じない。感じるのは精神力が僅かに残った魔術師だけだ。


「安心してくれ何もしない。俺はもう長くないからな・・・そこに居る誰かも俺には分からないが、聞いて欲しい。俺が生きていたという証を残したいんだ。」

「・・・なんだ言ってみろ。」

「ははは、どうやら耳もおかしくなったらしい。凄く幼い声が聞こえる・・・こんな所に誰も来る筈が無いのにな・・・しかも子供が来れる訳がない。けれど・・・」


 その男がポツポツと語り出した。最初は家族の事、母親、父親、姉、妹、弟、何処に居るのか何をしているのか、どんな顔で笑うのか。


「最後に召喚した幼い勇者についてだ・・・・俺の弟と同じ歳ぐらいの子供だ。王は・・・あの子供を使ってアーデンエリス王国に宣戦布告をする気だ・・・・あの子供を洗脳して自爆魔法を唱えさせてアーデンエリスの王城を吹っ飛ばす気なんだ・・・・アーデンエリス王国は・・・決して魔の国なんかではない・・・魔の国は、このローレンガルド王国だ・・・・・・・・だから・・・幼き勇者を助けてやってくれ・・・・・・」

「・・・あぁ、分かった。」

「あぁ、最後に・・・家族の顔を・・・・・・」

「・・・その願い叶えてやる。」


 俺は思い出を見せる事が出来る光属性の魔法を込めた小さな結晶を話してくれた男手に風魔法で乗せた。大事な情報をくれた恩人だ。これぐらいしか出来ないが・・・


「これは・・・はは、俺はやっと帰って来られたんだな。ありがとう・・・・・・。」


 男は涙を流しながらゆっくりと息を引き取った。生命の灯が消えたと同時に魔石も光を失い粒子となって消えた。








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