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異世界転移したら俺は巫子の出自だった。  作者: K.ユフィン
第2章
17/82

よくある話でも対処は難しい。

 


 家に戻った俺はアキハさんとキリハさんに教会での件を報告した。


「まぁ、現状は教会との縁は継続した方が良いでしょうし許容範囲ではあるのですが・・・」

「コウ、貴方は私達巫女にとっても大きな存在です。くれぐれも自覚を持ってくださいね。」

「はい、理解しております。それで宵華達の守備はどうですか?」

「宵華達から来た連絡によるとやはりお金は外へ流れているようですね。」

「場所は?」

「アーデンエリス王国から西側にある商業都市レラシオンですね。」


 レラシオンと言えば海にも面している大きな国で商業が盛んでローレンガルド王国とも面している国だ。更に海を越えて西に進めば強大な魔道機械都市クラナガンがある。聞く所によればクラナガンで開発された魔道兵器はレラシオンを介して各国に流れているとも聞いた。


 商業都市と言うのもありどんな物も売り物として取り扱う、故に奴隷市場も存在しているしカジノも言わば人の命も金で買えてしまう国である。


「マーカス家がレラシオンに金を流す利点・・・マーカス家は貴族の娘を手に入れようとしている・・・アキハさん、キリハさん、ちょっとソフィリア姫達に会ってくるよ。」

「何か気が付いたようですね。宵華達はどうしますか?」

「引き続き金の行先を探るように指示をお願いします。」

「分かりました。」


 俺は部屋を出てソフィリア姫達に念話を取ると転移魔法で王城前へと移動しすると直ぐに衛兵がコウを王城へ招き入れてくれた。


 案内をされたのはソフィリア姫の執務室だった。そこにはディンとクビス家当主であるリンデル・クビスの姿が在った。


「必要だと思いまして呼んでおきました。」

「流石、ソフィーだな。」


 内政で彼女程のやり手は中々居ないな。外交はからきしだけど、そこはディンがやっているからバランスが取れているのかもな。


「それで・・・調べると言う話を聞いて一日ぐらいしか経っておりませんが、何か分かったのですか?」

「まぁ、金の流れ先とそれを元にした予想というレベルですが・・・」

「金の流れ先・・・商業都市レラシオンだったな」

「あぁ、そこまでは掴んでいるんだなディン・・・じゃあ、レラシオンの何処かまでは?」

「・・・そこなんだよ。レラシオンは商人の国だからな守秘義務を行使されていて、交渉中なんだ。」

「それなら、ある程度の検討がついた。」

「本当か?」


 この国は奴隷を持つ事を法律で禁じている国だ。この国で奴隷商を営めばソフィリアが根元から消し去る程、厳しく取り締まるようになっている。


「まだ調べている所だが、俺の推理が正しければクビス家の名前で奴隷商のパトロンにさせられている筈だ。」

「な、なんですって!?」

「コウ、だが一体どうやって」

「パトロンになる為には名前と印章が必要だったな。」

「あぁ、その通りだ。」

「印章は印章院って言う所にあるんだろ?」


 そう言った瞬間、俺の後ろからフリーシアが姿を現した。


「っ・・・」

「警戒しなくても大丈夫だ。俺の使い魔だからな。」

「マスター様の睨んだ通りでした。ソフィリア様の名前で印章院の閲覧履歴を確認させてもらいました。結果は黒ですね。」

「やっぱり偽造されているか、印章院の人間も侯爵で財務局事務次官ともなればな無警戒だったんだろうな。」


 フリーシアがソフィリア達に会釈をしてから俺に書類の束を差し出した。受け取って内容を確認すると案の定、印章院で貴族の印章をマーカス家当主が閲覧している履歴が見つかった。しかも、印章を閲覧しているのはそれなりの地位と評判の高い娘が居る家だった。一通り確認して書類の束をソフィリアの前に置くとソフィリアも同じようにパラパラと捲って目を見開いた。


「これは・・・」

「前、被害に遭った貴族達も似たような手でやられたのかもな。」


 ソフィリアが下唇を噛む。悔しがると出るソフィーの癖だな俺はソフィーの額に指で小突く。


「っ!?」

「相変わらずだな、ソフィー」


 目を白黒させるソフィーに思わず笑いそうになるのを堪えて書類をディンに手渡すと同じようにパラパラと捲り「ふむ」と声を漏らす。


「まさか、ここまでとはな・・・私達にも上がっていない案件だ。見事に裏を掛かれたか。」

「では、わ、私の印章が偽造されて使われているという事ですか?」

「あくまで、その可能性が高いという話です。」

「な、何をの――」


 エリアスさんが身体を震わせている。家を象徴する印章を勝手に使われているんだ動揺するのも無理はないけれど。


「コウ・・・」

「あぁ、分かっている。流石にこれは俺達の領分だ。シア、宵華達と合流してレラシオンへ行け俺も後から合流する。」

「分かりました。」

「すみません。」

「気にするな、この状況で自由に動けるのは俺達だし、4日でケリを付けろって言われたからな。それにこの国の内政を取り仕切る姫君が簡単に謝罪を口にするな、それでは臣下に示しが立たないだろ。ソフィーは毅然とした態度で居ればいいんだ。」


 俺はそう言って扉に手を向けると扉に張り付いた術符が俺の元に飛んできた。部屋に通された時に張っていた防音結界だ。


「明日の朝には戻るよ。そこからはソフィリア達の領分だ俺は裏方に回るからな。」


 俺はそう言って部屋を出て、フリーシアとパスを繋いで転移魔法を使って移動した。


 ―――――――――――――――――――――――――――――


「ソフィリア様、彼は・・・」

「えぇ、任せても問題はありませんよ。申し訳ありません。私の力が及ばない事でこのような事になってしまって。」

「い、いえ、姫様が謝る事では・・・」

「姉さん、コウが戻ってくるまでに出来る事をしよう。」

「そうね。私も根回しをしておきます。リンデル殿は家にお戻りになってください。送らせますので。」

「分かりました。」


 ディンに連れられてリンデル殿が去っていくのを見送って深く椅子に持たれると大きな溜息が出ると共にまだまだ及ばない自分に嫌気が刺しそうになった。


「行けませんね。これでは」


 彼に言われたばかりだ。彼と出会って6年になるが彼にはいつも励まされている。私もディンも彼と出会ってから自分の出来る事を模索し今の仕事をしている。だが、彼は常に私達よりもずっと先を歩いている。その姿にいつも対抗心を燃やして来た。

 勿論、敵わないなと思う時はある。だが、完全に負けを認めているつもりは更々無いのだ。


「コウの事です。マーカス家の目はコウに集中するように振舞ってくれている・・・ならば、コウが戻るまでに用意をしましょう。」


 そして、私はベルを鳴らし、側近を呼んだのだった。



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