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異世界転移したら俺は巫子の出自だった。  作者: K.ユフィン
第2章
16/82

協力をお願いしたら交換条件を付けられてしまった。

 


 リーフィが置かれている状況を聞いてから財務局を調べた資料を確認後、直ぐにクビス家の当主と会い話を聞いた。予想通り余り進展するような話は聞けなかった。


 だが、手掛かりが無かった訳ではない、晃はソフィリアに掛け合いある者に会えるように頼んだ。その人物は教会の最高権力者である。


 マーカス家は教会嫌いで有名らしく教会とは敵対の関係らしい、その関係で教会側もマーカス家について弱みを握っている可能性を視差しての行動だった。


「それで、私達を呼び出した理由はなんですか?」


 晃の隣には使い魔であるフリーシアと小太刀である月夜に宿る剣霊、月姫が歩いていた。


 月姫は黒を基調とした和風テイストの服装で下はスカートを履いており、漆黒の長い髪を左右に一束纏め真っ白なウサギのぬいぐるみを抱えている。


「あるじぃ?」


 たどたどしい声で晃の太ももぐらいしかない身長の月姫が金色の大きな瞳を此方に向けて小首を傾げていた。どうやらフリーシアの問いに答えて欲しいようだ。


「あぁ、二人には見張りをして欲しいんだよ。俺はマーカスの嫡男にマークされている。もしかしたら変な奴がくっ付いているかもしれないだろ。だから俺はレーンベイス枢機卿と話している間に二人で手分けして、そいつらの口を封じて欲しいんだよ。」


 そう言って俺は腰に刺している小太刀の月夜をフリーシアに手渡した。


「なるほど、そう言う事ですか。」

「わかったよ・・・あるじぃ」


 フリーシアが小太刀を受け取ると背中に小太刀を付けて月姫と手を繋いだ。既に後方と左右に数人見張っているような視線を感じているから、確実にマークされているようだ。


 まぁ、視線的には探るような感じで、ロイドが当主に話した程度だから情報を掴もうとしているレベルだろう。


 なので事前に目を潰させてもらう。



「それじゃあ、頼むぞ、シア、月姫」



 二人はコクリと頷くと、瞬時にその場から移動したと同時に向けられていた視線が一つ、また一つと消え始めたのを感じながら晃は教会へと足を運んだ。



 教会へ入ると手を合わせる物が数人確認出来たが、その人達を横目に一人のシスターに話掛けた。


「レーンベイス枢機卿にお会いする為に参りました。コウ・シスイです。ソフィリア・エンデ・アーデンエリス姫殿下からお話が来ている筈ですが。」

「はい、聞き及んでおります。此方へどうぞ。」


 ソフィリアから貰っていた書類を渡し内容を確認したシスターに案内されて奥へと案内された。階段を上り高位の者しか立ち入れないフロアへと足を踏み入れた。ここのレーンベイス枢機卿は政治にも深く関わりを持ち発言力もある人間だ。


 一介の市民が話を出来る人間ではない。俺が普通の市民であり、ソフィリア姫と知り合いと言うだけでは先ず会う事が出来なかっただろう。俺がカグラハラ国にあるカンナ院で男の巫女、巫覡である事、そして、巫女族にも階級があり、その中でも高位の位である青を与えられているからという理由も大きいだろう。


 アーデンエリス王国の貴族階級ならば侯爵ぐらいだろう。と言っても公にはしていないので知っている人と言えば、一部の者に限られる。


「レーンベイス枢機卿、コウ・シスイ様がお出でになりました。」

「どうぞ」


 すると修道院の服装をしている少女が扉を開けて晃を中に招き入れた。


「ようこそ、リーンハインス教会へお話はソフィリア姫様から聞いております。」

「お久しぶりです。レーンベイス枢機卿、3年前にあったクラディウス殿下の誕生パーティーでお会いして以来ですね。」

「そうですね。あの時からより一層、魅力的な男性に成長されましたね。」

「ありがとうございます。」


 レーンベイス枢機卿とは大巫女であり祖母であるキクナ様に連れられてきたパーティ等で何度か顔を合わせている。

 レーンベイス枢機卿に促されるまま、ソファーに腰を下ろすと先程の少女が紅茶を運んできた。


「ありがとうございます。」

「はい。」


 俺が笑みを浮かべて礼を言うと僅かに驚きの表情を浮かべたが直ぐに薄い笑みを浮かべて返事を返して来た。


「あぁ、この子は私の孫娘でエミリアと言います。」

「エミリア・フォン・リーンハインスです。」

「コウ・シスイです。」


 肌は色白く、美しい顔立ち薄金の長髪にこの世界では珍しい薄紫の瞳を持った少女は俺に対し薄く笑みを浮かべていた。

 彼女が噂に聞く聖女か、レーンベイス枢機卿が公の場に出したがらない訳が分かるな。後はマーカス家が目の敵にしているのは彼女も原因そうだな女癖が悪いのも血筋かもな。


「それでわざわざソフィリア姫を通して私に話をしに来たのは世間話をする為ではないのでしょう?」

「えぇ、お願いしたい事がありまして。」

「ソフィリア姫から聞いておりますマーカス家の件ですね?」

「話が早くて助かります。実はマーカス家にプレッシャーをかけて欲しいのです。」

「プレッシャーですか、正確には?」

「そうですね。マーカス家の人間、特にロベルト・マーカスにとって不都合な情報を教会から発信してほしいのです。勿論、報酬も出します。」

「ふーむ、コウ殿はエミリアが聖女と呼ばれている事を?」

「えぇ、存じております。」


 レーンベイス枢機卿がいきなりエミリアの話を出した事に俺はやはりと思った。


「ロベルト殿の女性癖はかなりの物と聞きます。私の所にも彼の嫡男とエミリアを許嫁にする話が来ておりました。私が知る限りだと美人と評判がある貴族の娘にも話があり財務局長と言う立場を使いスキャンダルを誘発させて助けるという名目で婚約を迫っているとか?」

「そうらしいですね。」

「孫娘にも、話がありましたが今はお断りしている状態です。ですが常にマーカス家の者が目を光らせている状態なのです。」


 ここまで言われて何となく察しが付いてしまった俺が居た。


「まさかと思いますが・・・」

「はい、そのまさかです。それが協力条件です。」


 ―――――――――――――――――――――――――――――


「お爺様」

「エミリアよ、コウ殿はどうだ?」

「どうと言われましても・・・」

「ここだけの話だが彼は侯爵程の階級を持つ、カグラハラ国の聖職者なのじゃよ。」


 カグラハラ国の聖職者は女性のみというのは有名な話です。しかし、8年前に男性の聖職者が現れた事はお爺様から聞いていました。三年前に会ったというのも、その噂に聞いていた彼が来た時、少しの間だが彼と接した時に感じた彼の優しさや気遣い、何より、話に上がったマーカス家の件も恐らく彼には関係無かった話だ。それに関わった理由も見え隠れしていた。


「ただ、とてもお優しい殿方と言うのは分かりました。」

「そうだな、彼のような者ならエミリアを安心して任せられる。」


 コウが居なくなった後の会話が後々、コウに大きな決断を迫られることになるのは今の彼には知る由もない。



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