8年が経過しました。②
そんな訳で8年間の修行を経て色々と力を身に着け世界の情勢を見て来た事でカンナ院に居る彼女達が巫女族と呼ばれローレンガルド以外の国々からは助けを求められたりすれば赴き力を貸している存在という事が分かった。
「そういえば、今日はキクナ様の所に来いって言われていたよな?」
「はい、何か頼み事があるとか」
「またサーラン国の砂嵐を鎮めに行けとか言われるだろうか?」
サーラン国は周りが灼熱の砂漠地帯にある国であり日中は年中関係なく暑さの厳しい場所である。そして、俺は持っている魔法特性上、暑さが非常に苦手だ。あの国に居る王子は気さくで人懐っこい性格をしていたから嫌いじゃない。寧ろあの明るさが民衆を惹きつける魅力になっているのだから。
だがあの国の暑さ苦手だ。
「ふふふ、晃は暑さが本当に苦手ですね。」
「持って生まれたもんだ仕方ないだろ。」
「ですが、そう言う関係では無さそうですよ。サーラン国の方は大気が安定していますから。」
「じゃあ、なんだろうな」
「さぁ・・・」
こういう時の大巫女様は割と怖かったりする。何故かって?とでもない任務を持ってくるからだ!!それで何度、酷い目に遭わされた事か。
そんなわけで俺と宵華は大巫女様の居る建物へ向かう。
「あっ、お兄ちゃんと宵華だ。おはよう!!」
「何、アンタ達も呼ばれたの?」
「おぉ、ミズハとハルナ、おはよう」
「おはようございます。えぇ、そうですが、ハルナとミズハもですか?」
建物の前で二人の少女と出会う最初に俺達に気が付いたのがミズハ・シスイ、母さんの妹であるキリハ・シスイの娘で俺の従妹に当たる子だ。同じ年だが性格は子供っぽく、人見知りもして初対面とは余り話そうとしない妹気質で保護良くを掻き立てられる見た目なので、任務などで外に行くとそう言う輩に絡まれやすい。
もう一人はハルナ・シュンウン、母さんの親友であるアキハ・シュンウンの娘である。同じ年でありながらしっかり者でミズハの保護者みたいな感じだ。性格は勝気だが褒められたりすると照れるタイプで普段とのギャップにグッとくる男が多いとか、最近、胸が小さい事を気にしているようでその辺りの話題はNGだ。宵華の胸を見て羨ましそうな表情をする事がある。
「お兄ちゃん、先週からずっとこっちに居るね?」
「あぁ、大巫女様からこっちに帰って来て暫し留まれって言われていたからね。」
「アンタ、冒険者ギルドでも活躍しているんでしょ?」
「あぁ、この間、アーデンエリス王国のギルドから通達が来たよ。クランに属さないかって。」
「クランってあの七大クランの何処か?」
「あぁ、確か『豊水の癒し手』だったな。」
「水の乙女様が居るクランだよね。お兄ちゃん凄い!!」
アーデンエリス王国が巨大軍事力を持ち中立を保ち続けているのはこの七大クランと呼ばれる凄腕のギルド員が集まるコミュニティーがあるからである。クランに所属する条件は三つ。
1:国の為に命を賭けられる者
2:クランを象徴する属性が使える者
3:ギルドランクがSランク以上の者
そのクランから通達が来たという事で分かると思うが俺はこの8年間の間にギルドに登録して世界を回りながら魔物の討伐を行い。評価されてSSランクまで上がっている。
ギルドのランクは下からF、E、D、C、B、A、S、SS、SSSランクとなっており、SSSランクは七大クランのクランリーダーと七大クランを統括するギルド『エリス』のギルドマスターである統覇の帝王と呼ばれる者だけでに与えられている。
つまり俺は実施到達出来るランクまで上がってしまったという事になる。ちなみに登録している名前は『凍姫』という仮名で名乗っている為、コウ・アマヤという本当の名前では登録していない。
何故、『凍姫』という名なのか、それは大巫女からの指示で巫女族としてギルドに名乗るなら女性の名前にするようにと言われて母の名前である『優姫』の『姫』と自分が最も得意な属性である氷属性から『凍姫』という名を名乗った。
「まぁ、凍姫って名乗っているけど顔とかは隠しているからまさか男だなんて思いもよらないでしょうね?声も変えているんでしょ?」
「まぁな、といってもいつもは体形とか変えてないけどな。」
「それは使っているローブで体隠しているからでしょ?」
「あぁ、まぁ、そのローブも白と青だから凄く目立つんだけどな。」
「あのローブなら、一発で凍姫って見分けが付きますし、中身がまさか男なんて思われる事もありませんから。」
「けれど、それならお兄ちゃんと一緒に行動している宵華だってスカウト来ているんじゃないの?」
「はい、私も先日、SSランクに上がりましたし、数日前からスカウトの通知が来ています。」
宵華も『白月』と名乗り、俺と一緒にギルドへ入っており、同じようにSSランクまで到達している。
「それに俺と宵華はアーデンエリス王国の為に命を賭けれるかと問われても答えは否だからな」
「私達は巫女、この国で戦う人間ですからね。」
「そう言う事だ。」
そんな話をしていると大巫女様が居る部屋に辿り着いた中から大巫女様の気配も感じるから待っているようだ。
「来ましたね。晃、宵華、ミズハ、ハルナ」
「おはようございます。大巫女様」
俺が四人の代表として挨拶を述べ続くように三人も挨拶をして頭を下げるとその場で正座をする。
「今日、お呼びしたのは他でもありません。貴方達に重要な任務を依頼したいのです。」
「任務ですか?」
「はい、四人でアーデンエリス王国にある王立魔法学院に通ってもらいます。」
「学院?」
「大巫女様、私達がアーデンエリス王国へ赴くのは分かりましたが何故王立魔法学院なのですか?」
王立魔法学院はアーデンエリス王国が誇る伝統と栄光のある学院であり、卒業資格を得れば宮廷魔法師団に入る近道でもある。
その学園に行く為には試験を受けなければいけない、試験の内容は学科と実技の二つだ。もし通う事になるならば試験を受けなければならないが、そこは心配しなくても良いだろうな。
この世界での15歳は大人として扱われる。理由は15歳になった多くの者達はギルドに入り冒険者となるからだ。冒険者に必要なのは情報収集力だ。情報は酒場に集まる。それを得る為には勿論、お酒を飲めなければいけない。だからこの世界では15歳で飲酒が許されている。
アーデンエリス王国では15歳になった時の選択肢として、ギルドに入り冒険者に入りランクを上げてクランに入る事を目指すか、王立魔法学院に入り宮廷魔法師団を目指すか、王立騎士学院に入り王宮騎士団に入るかである。他にも神官として教会に入るという物がある。
だがどれも俺達には必要かと問われれば必要が無い。理由は俺達巫女はカンナ院で一生を過ごし必要ならば国外へと出て任務を行う。相手にするのが国王や国の要人というのもあり、ある程度の教養が必要になる為、既に高等レベル以上の教養は見についている。
つまり、俺達にただ学院で同年代と学べという事では無いのだ。
「そうですね。任務に就くのです理由は説明する必要がありますね。昨晩、夢を見ました。その夢でローレンガルド王国の姫君が国外へ逃亡を図ります。」
「それは、まさか!!」
姫君・・・。確かローレンガルドは王妃が病で亡くなって新しい王妃が王宮に入ってきた事で姫が三人になった筈だ。
でも、第2王女も第3王女も賢姫じゃない筈だ。どちらかというと絵に描いたような何も知らない姫君という印象だ。
つまり、逃亡を図るのは、俺と面識のある彼女しか居ない。
「えぇ、リフィア・ルーレ・ローレンガルドです。」
「つまり、俺達はリフィア姫の護衛という事ですか?」
「正確には陰ながら護衛をするという方ですね。なので、貴方達には一週間後、アーデンエリス王国に行っていただきます。それではお勤めの時間です。あと晃は少し残ってください。」
「分かりました。」
「では私達はこれで」
宵華達が出て行ったのを確認して俺と大巫女様は向かい合う。
「俺だけ残すと言う事はリフィア姫の関係で何かあるんですか?」
「察しが良いようですね。えぇ、私が見た夢について、この話は他言無用でお願いします。」
思い返せば、この話を聞いてから全てが大きく動き始めたんだ。