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「あら……?

カイ、リューク君、おかえりなさい」


「二人とも、おかえり」



俺の母さんとリュークの母さんが俺達に気づいて優しく出迎えてくれる。

前世では味わえなかった母親の温かさを感じながら俺とリュークは元気にただいま、と口にする。



「二人とも、どうだったかしら?」


「カイ君は狩人じゃないかしら?」


「あら、カイが狩人ならリューク君はきっと騎士様ね」



ふふっと笑い合っている二人を見ると俺もリュークもどうにも話にくくなってしまう。

特に俺のステータスは。



「それで、どうだったの?」



ついに俺達へと矛先が向かってきた。

俺はバツの悪そうな表情を思わず浮かべる。



「あー……えっと母さん、笑わないで欲しいんだけど……」


「カイのステータスは、なぁ……?」


「まぁ、リュークよりは……」



二人とも予想外のステータスだからな。

チュークは騎士や狩人なんてものじゃなく、最上位職である勇者だ。

俺は変なところばかりのステータスときた。

言いづらさは俺もリュークも五分五分だ。



「農民だったのかしら?」


「……違う。

違うんだけど……」


「もう……。

はっきりと言いなさいな」


「……言ったより見た方が早いと思う」


「俺もカイと同じ……かな」



俺とリュークは口を揃えてステータスを見せた。



「「ステータス公開」」



俺たちのステータスを見た母さん達はお茶の入ったカップを落としそうになる。



「……カイ、この『?』ってなにかしら?

それに、お詫び……?

転生神様の加護?

カイ、あなたなにをやらかしたの……」


「……リューク、勇者って何かしら?

女神様の加護?」



二人とも似たような反応だった。

ってか、母さんは何で俺がやらかした決めつけてんだよ。

お詫びってどうみてもやられた側だろ……。



「「まぁ……カイ(君)とリューク(君)だものね」」



何故か変な納得をされた。

そして、二人はそのまま会話を続ける。



「それにしても……どうして二人してこんなにも耐久が高いのかしら?」


「まだカイは分かるのだけど……」



二人は頬に手を当て首を傾げる。

そんな二人を目のあたりにした俺とリュークは静かに家の中に入るのだった。

ってか、俺は分かるってなんだよ!



「なぁ、なんか変な納得されなかったか?」


「……俺とカイだからってなんだろうな?」



どうにも腑に落ちない俺たちだった。



そして、その夜。

村の住人全員が収集された。

話は俺とリュークのことだった。



「皆さんに集まって貰ったのはリューク君のことです。

いえ……リューク様の職業は勇者。

教会は勇者様の保護をしたいと思っております。

ですが……」



神官が一人、前に出て話すが次の瞬間、村の皆はその辺に落ちている石を投げ始めた。



「リュークを連れてこうってのか!?」


「リュークはこの村の子供だ!」


「リュークを連れていかせるものか!」


「なぁ、皆!

リュークを守るぞ!!」



そんな声に今まで静かに聞いていた人達も石を投げ始める。

そんな村民を止めたのは烈火のごとく怒った村長だった。



「やめんか、この馬鹿共が!

この村にいたところでリュークが勇者の職業を持つ限りは国から狙われることになるのだぞ!

そうなればわしらがなにをできる!?

下手をすれば反逆者として扱われるのだぞ!

それをリュークに背負わせる気か!

リュークを思うのならば黙って話を聞かんか!

リュークがこの村にいることを望んだ時は皆で協力をせい!

よいな!」



その有無を言わせることのない村長の声に渋々ながらも石を離すことはしなかったがそれでも、手を下ろした。



「だがよ、村長!

リュークとカイを離すなんて、そんな酷な事出来るわけねぇだろうが!」


「それも話を最後聞いてからにせんか!

この馬鹿者が!」



村の皆は意外と俺たちのことを大切に思ってくれていたようだ。

思わず涙が浮かぶくらいには嬉しい。

それはリュークも同じらしく涙を拭っていた。



「リューク様の保護と言っても来る日のために力の使い方を教え、貴族たちから守るだけです。

教会はリューク様を傀儡とすることはありませんし教えるべき事は教えるつもりです。

そして、その決定権は全てリューク様にあります」



その最後の一言で皆の視線がリュークに向かう。

リュークは緊張しているのか身体を強ばらせたのが分かった。

だから俺は大丈夫だと言うようにリュークの手を握ってやる。

するとリュークは少しだけ肩の力を緩めた。


少しは俺も役にたてたらしい。



「……俺、教会に行くよ。

魔王討伐とかだって、この村を守るために頑張るからさ。

だから……だから、みんなに応援、して欲しい……」


「リューク、いいのかよ?

教会に行けばカイとは離れることになるんだぞ!?

お前らが離れるなんて……」



リュークはフッと笑って俺と神官を見た。

俺もリュークも分かっていた事だ。



「カイ君も教会で保護致します。

カイ君は転生神様の加護を持っておりますし……(一応)職業も守護者ですから」



あの神官、気の所為だろうか?

今、一応って言った気がする。

気持ちは分からなくもないが。


まぁ、だが……。


「リューク、これで一緒だな!」


「おう!

カイ、これからもよろしくな!」



俺達は拳を合わせるといつもの様に笑い合う。

すると、自然と村の人達の否定の声も消えていた。

それからは俺とリュークの旅立ち会のようなものとなり、朝方まで騒いだ。



そして、神官達と村を出ていく日。



「リューク」


「カイ」



母さんの声だった。

その声に思わず決心が揺らぎそうになる。



「リューク、シャキっとしなさい。

向こうへ着いたらちゃんと手紙を出すのよ?

それと、カイ君に迷惑をかけないこと。

寝坊もしないようにね?」


「うっ……わ、分かってる……」


「カイも、手紙を出しなさい。

リューク君には迷惑をかけないようにね?

それと、馬鹿な事して迷惑をかけないようにするのよ?」


「グッ……分かってる…」



「「最後に……元気に過ごしなさい」」


「「おう!」」



俺とリュークは手を降る村の皆の姿にぐっと来るのを抑えて笑顔で出立した。

絶対に戻ってくる、その意思を強く持って俺達2人の新たな生活が始まったのだ。


そう、これが、勇者と守護者?の最初の物語。

全てはここから始まったのだ。



長く、長く続くことになる新たな伝記が。



神の失敗により偶然出会った二人の始まりの物語はこの日、動き始めた。


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