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「ほら、カイ!

行こうぜ!」


「おう!」



俺、都木涼はただの農民、カイとして生まれ変わっていた。

あの穴に落ちて、気付いた時には既に転生後だったのだ。

何気にあのクソジジイが転生神だってのは本当なのかもしれないと思うのだが……どうにも気に食わない。

あの巫山戯た感じが。

まず、転生させるにしても説明くらい欲しかった。

この日本とはレベルの違いの激しすぎる世界について。

いや、魔法や魔物の説明の方が重要かもしれないが。


そう、なんとこの世界、魔法があるうえ、魔物までいるのだ。

最初に知った時は何処の厨二病患者だ…などと呆れたものの目の前で魔法を使われれば認めるしかない。

ま、というわけで異世界に転生したわけだが……。

それを面倒だから省略とか、思い出すだけでも腹が立つ。



「カイ、急ぐぞ!

適正審査が終わっちまう!」


「元はと言えばリュークが寝坊したせいだろうが!」


「それについては悪かった!」



リュークは俺の幼馴染であり、この村の中で唯一、俺と同い年の奴だ。

それもあってか最初こそいろいろあったものの、今では大切な親友である。


それと、適正審査ってのは魔法の適正や職業の適正を調べるものだ。

王都なんかに行けば毎年やっているんだがこんな村なんかじゃ三年に一回程度だ。

しかも七歳以上という縛りもあるため受ける人数は少ない。



そして、ようやく俺等が七歳になった今年、適正審査の年がやってきたのだ。



「おっしゃあ!

間に合ったぁぁぁ!!」


「リュークが寝坊さえしなければなぁ。

もっと余裕もてたってのに……」



そこにはいつもはいない神官の様な人達が三名程。

その神官の一人が村長に確認を取る。



「この二人で最後でしょうか?」


「えぇ……」


「そうですか。

では、始めましょう」



その優しい物腰は孤児院で俺等を育ててくれた先生を思い出す。

そういえばガキ共や先生は元気にしているだろうか?


……先生も歳だったからな。

元気にやってりゃいいんだが……。



「では、どちらから受けますか?」


「カイ、俺からやってもいいか!?」


「あぁ。

俺が後でいいぜ」



リュークのキラキラとした目に俺は自然と譲っていた。

まぁ、俺は精神的には大人だからな。


俺からの了承を得るとリュークはニカッと笑って礼を口にすると前に出た。



「君からですね。

では……」



神官が何か呟くとリュークの周りに光が集まる。

その光は吸収される様にリュークの身体へと入り、溶けていく。



「はい、終了しました。

ステータス、と唱えてください」


「ステータス!」



リュークは嬉しそうに唱えると目の前に出ただろうステータス画面をジッと見ている。



「では、ステータス公開と唱えてください」


「ステータス公開!」



すると、リュークの前に白い画面のようなものが現れた。

あれがステータス画面なのだろう。

そして、それを見ただろう神官が目を見開き驚いている。

それに気付かない様子のリュークは俺を見て笑う。

眩しい程の笑みだ。



「カイ!

俺のステータス、見てみろよ!

俺も後でカイのステータス見るし!」


「勝手に決めんなよ……。

まぁ、いいけど」



俺は呆れながらもリュークの言葉に従いステータスを覗き見た。



リューク


 体力:105

 魔力:201

 筋力:98

 耐久:251

 敏捷:254

 

 職業:勇者

 魔法:火 水 風 土 光 無

 称号:『勇気ある者』

 加護:女神の加護




なんと、勇者だった。

つうか、魔法なんて闇以外の全属性持ってたわ。

ってか、耐久!

251って何だよ!?

リューク、お前いつからそんな頑丈になってんだ!?

そのくせに筋力ねぇし!



だが、普通のステータスだと大人でも精々50~150くらいらしい。

まぁ、冒険者や騎士には200越えもいるが決して多くはない。

つまり、リュークのステータスは異常であった。

ただし、勇者であれば普通なのかもしれないが。



「カイ!

俺、勇者だってよ!」


「お、おう……。

なぁ、俺、リュークの後にやるの嫌になってきたんだけど……?」


「カイなら大丈夫だろ」



何なのだろうか。

その、不思議な俺への信頼は。

程々にして欲しいのだが。



「えっと、俺は……」


「はっ!

す、すみません、では始めます」



神官はリュークの事で頭が一杯になっていたようで俺を忘れていたらしい。

まぁ、勇者なら仕方ない気もするが。



「では、ステータスと唱えてみてください」



リュークに比べると見劣りするのに……。

などと思いながら俺は神官に従い唱える。



「ステータス」



俺が唱えると、そこには不思議なものがあった。

そう、加護と職業……いや、称号もそうだろうか。

なんなのだろうか、このある意味、リュークよりも珍しく、はっきりと異常だと言えるこのステータスは。


「カイ!

俺にも見せてくれよ!」



俺がこのステータスに戸惑っているとリュークから声がかかった。



「あ、あぁ……ステータス公開」



リュークが俺の肩からステータスを覗き込む。

そして……。



「……なんだこれ?」


「……いや、なんだろうな?」



俺とリュークは2人して呟いた。

俺のステータスは……。



カイ


 体力:215

 魔力:221

 筋力:101

 耐久:295

 敏捷:149

 

 職業:冒険者? 守護者?

 魔法:火 水 風 土 無

 称号:『勇者の親友』『お詫び』

 加護:転生神の加護



というものだ。

俺も耐久だけずば抜けてたわ。


……そして何故職業に『?』がついているのだろうか?


いや、おかしいだろ。

絶対おかしいだろ!?

ってか、あのクソジジイの加護なんて要らねぇよ!

しかもお詫びってなんだよ!?


あ、でも勇者の親友は嬉しかったが。



「カイ、お前なにしたんだ?」


「……いや、俺がなにかした前提やめろって」



あぁ、そうだ。

俺はなにもしていない。

お詫びって事は向こうがなにかやったんだろうしな。

ってか、あのジジイなに余計な加護付けてやがる。



「えーっと、この職業が『?』ってなんですか……。

お詫びなんて称号も聞いたことありませんし。

それに、転生神様の加護だなんて……。

村長、申し訳ありませんが、この二人の事で少しお話があります」


「は、はい。

カイ、リューク、一旦家に帰りなさい」



勇者の職業を得たリュークは歴代の勇者同様に魔王討伐に行くのだろう。

きっとそれについての話だ。

あとは……俺もステータス高いみたいだし、加護もあるし、称号もあるからか?

変なところ多いけど。



「分かった、村長。

行こうぜ、カイ!」


「おう。

あー、確か俺の家に集まるって言ってたよな?」


「そんなこと聞いたような気がしなくもない」



帰る途中、リュークは先程までの明るさが嘘のように泣きそうな顔をして足を止めた。



「リューク?」


「……俺、今までの勇者みたいに魔王討伐に行くのかな?

俺、無理だ。

魔王だって怖ぇし、カイもいないのに……」



リュークの弱音だった。

それは、初めて見るリュークの姿であり俺は戸惑った。

だが、そんなリュークの姿に俺は心を決めた。



「リュークが行くなら俺も行くぜ。

俺の職業、守護者だしな!

それに、なんたって勇者の親友様だぜ?

しかも転生神の加護付きだ。

勇者パーティに守護者は付きものだろ?

なら、俺がお前の作るパーティの守護者になってやる」



俺がいつものように笑うとリュークも何だよそれ、と言って笑顔を見せた。

先程と違い、暗い笑顔ではなく、いつもの明るい笑顔だった。



「守護者っても『?』だろ!」


「ぐっ……でも、守護者は守護者だろうが」



ハハハッと俺等は二人して笑い合うと約束をした。

男と男の約束だ。



「リューク、俺は何があろうとリュークを見捨てねぇし、一緒にいる。

親友として、守護者として絶対にお前を守ってやるよ」


「っ……カイ、俺は……俺も、何があろうとカイを見捨てないし一緒にいる!

親友として、勇者として……カイを守る」



同じ事を口にして、俺達は拳を前に突き出す。

そして、最後は二人で声を合わせて誓いをたてた。



「「カイ(リューク)、俺はお前に誓う。

俺たちはずっと一緒だ!」」



コツン、拳がぶつかり合うと俺達はなにごともなかったかのように家へと帰った。

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