FAおよび番外編「ユキの愛情」
長岡更紗さまからいただいた、ファンアートです。
ジーナは滅茶苦茶可愛くて、ユキは滅茶苦茶カッコいいと思いませんか?!
こんなに素敵なイラストを頂けるなんて、何回見ても幸せでニマニマしてしまいます。
長岡さま、本当にありがとうございます!(*^▽^)/★*☆♪
それでは、短いですが、番外編「ユキの愛情」をどうぞ。
ユキもジーナも姿しか出てこない上に、流星シリーズを三話目まで読んでいないと、色々通じないという不親切設計ですが、お許しください……。
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「おーおー、ユキの野郎も大変だなぁ」
〈迅雷〉のドーガは、遠目にユキとジーナを見てニヤニヤした。
ユキがジーナの腰に手を回し、周囲を牽制している。
〈流星〉のジーナと〈爆炎〉のキーラの火力対決という、格好の見世物の直後のことである。
見事キーラに勝ったジーナに対する、男どもからの視線が凄い。パーティーへの引き抜きを画策するものから、ジーナ本人を好色そうに見るものまで様々だが、片っ端からそれを潰すユキは大忙しだ。
その時たまたま正面にいた少年二人が、モロに煽りをくらって、すごすごと退散していった。彼らはどちらかというと、威嚇対象としてはオマケだったと思うが、可哀想なことだ。
審判を務めた魔法士キエフが、ドーガの隣に戻ってきた。ドーガが統率するギルドで、サブギルドマスターを任せている男である。
「〈流星〉にキーラさんが加わるというのは、客観的に見て、悪い話じゃなかったと思うんですけどねぇ」
キエフは、立ち去るキーラを見て呟いた。
戦力に厚みが出るし、知名度も上がる。三人とも素晴らしい技量の持ち主で、職のバランスもいい。パーティーとして力を合わせれば、〈流星〉の幅は、大きく広がると言いたいのだろう。
キエフの気持ちも分かってはいたが、ドーガはピラピラと手を振った。
「あー、無理無理。〈流星〉はなぁ、基本二人っきりでやってきゃいいんだよ。割って入るなんざ無駄無駄」
「恋愛面に関しては激しく同意しますが。二人とも、かなり優秀なだけに、勿体無く思えて仕方ないんですよ」
本気で惜しんでいる気配のキエフに、ドーガは仕方ないから教えてやることにした。
「あいつらは、名を売ろうなんて最初から思ってねえからな。──〈流星〉は受ける依頼を選ぶ。知っているか?」
キエフが片眉を上げる。やはり知らなかったらしい。
「〈流星〉は、蟲や魔物の討伐と、ダンジョン攻略にしか手を出さねえパーティーだ。『人』に関する依頼は、全部断りやがるんだ。要人警護や盗賊討伐、商隊の護衛さえ受けねえ。徹底してる」
「ええ?! 銃士のジーナさんがいるのにですか?!」
キエフが驚いて声を上げた。周囲のお祭り騒ぎにかき消されたのは幸いだ。
ドーガは心中でのみ嘆息した。そうだ。ジーナが銃士なのが問題なのだ。
銃士という職は、冒険者としては不人気だ。
攻撃の回転は随一だが、一撃一撃の威力が弱い。常軌を逸した個体ばかり相手取る羽目になるダンジョンなどでは、どうしても頼りなく見えてしまう。実は、先程ジーナが証明して見せたように、一撃の弱さを手数で補い、凄腕の銃士の総合的な火力は、決して侮れないものなのだが。
しかしそれも、ダンジョン攻略方面に限っての話だ。
対『人』ともなれば、状況は更に一変する。
人対人の戦いであれば、他でもない、銃士が最強なのである。腕が良ければ、という前提はあるが。
ドーガは知っている。もしも万が一、本気で殺し合いをするのなら。ドーガも、キーラも、ユキも、誰も敵いはしない。恐らくジーナが圧勝するということを。
だからこそ、人に関わる依頼では、銃士は厚遇される。ジーナ程の腕があれば、あっという間に売れっ子になるだろう。特にジーナには、規格外の治癒もある。どんどん指名依頼は飛び込んでくるし、いくらでも稼ぐことができる。
人を撃ち殺す覚悟さえあれば。
「受ける依頼を決めているのはユキだ。ジーナは何も気づいちゃいねえ。おめえも黙ってろよ」
キエフはすぐに事情を察し、感嘆したようだった。
「愛ですねぇ……」
つくづくドーガも同感だ。冒険者など、良くも悪くも自分優先なのが普通だというのに。彼女に人を殺させたくなくて、名を売る機会も稼げる機会も溝に捨てている男が、ここにいる。
「だから言ってんだ。あいつらは二人でやってりゃいいんだよ。手が足りねえ時だけ、俺らが組んでやれば、それでいい」
ジーナはユキと腕を組み、幸せそうに笑っていた。晴れた夜空のような紺色の髪と、月光色の瞳を瞬かせて。
その姿は、とてもとても可愛かった。ユキが守りたがるのも道理だと、思うくらいに。
キエフは頷いた。
「分かりました。……時にドーガ、どちらに賭けてたんです?」
ジーナとキーラ、どちらが勝つかで、賭けが行われていたことを言っているのである。本命はキーラだったので、悔しがる姿があちこちに見られる。そういう意味でも、ユキはジーナから目が離せないだろう。逆恨みで襲われでもしたら大変だ。
ドーガはニヤリと笑った。
「ジーナだ」
「それなら懐は暖かいですね。私たちも酒場に混ざりに行きましょう。奢ってくださいよ」
飄々としたキエフに、ドーガはおいおい、と突っ込む。
「てめえの分くらい、てめえで払え。てめえはどっちに賭けてたんだ。キーラに賭けて大損でもしたのかよ?」
「私は審判だったんですよ。賭けに参加できるわけがないでしょう。ほら、置いていかれます。行きますよ」
キエフが、ジーナとユキを含めた集団に追い付こうと、足を早める。
まぁいいか、とドーガは折れることにした。幸い配当金のおかげで、本当に懐は暖かい。少しはユキを手伝って、ジーナのガードでもしてやるか。
ドーガはやれやれ、と首の後ろをポリポリかきながら、酒場へ繰り出す集団の後ろをついていくのだった。