表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

FAおよび番外編「ユキの愛情」

長岡更紗さまからいただいた、ファンアートです。

挿絵(By みてみん)

ジーナは滅茶苦茶可愛くて、ユキは滅茶苦茶カッコいいと思いませんか?!

こんなに素敵なイラストを頂けるなんて、何回見ても幸せでニマニマしてしまいます。

長岡さま、本当にありがとうございます!(*^▽^)/★*☆♪


それでは、短いですが、番外編「ユキの愛情」をどうぞ。

ユキもジーナも姿しか出てこない上に、流星シリーズを三話目まで読んでいないと、色々通じないという不親切設計ですが、お許しください……。


******


「おーおー、ユキの野郎も大変だなぁ」

 〈迅雷〉のドーガは、遠目にユキとジーナを見てニヤニヤした。

 ユキがジーナの腰に手を回し、周囲を牽制している。

 〈流星〉のジーナと〈爆炎〉のキーラの火力対決という、格好の見世物の直後のことである。

 見事キーラに勝ったジーナに対する、男どもからの視線が凄い。パーティーへの引き抜きを画策するものから、ジーナ本人を好色そうに見るものまで様々だが、片っ端からそれを潰すユキは大忙しだ。

 その時たまたま正面にいた少年二人が、モロに煽りをくらって、すごすごと退散していった。彼らはどちらかというと、威嚇対象としてはオマケだったと思うが、可哀想なことだ。

 審判を務めた魔法士キエフが、ドーガの隣に戻ってきた。ドーガが統率するギルドで、サブギルドマスターを任せている男である。

「〈流星〉にキーラさんが加わるというのは、客観的に見て、悪い話じゃなかったと思うんですけどねぇ」

 キエフは、立ち去るキーラを見て呟いた。

 戦力に厚みが出るし、知名度も上がる。三人とも素晴らしい技量の持ち主で、職のバランスもいい。パーティーとして力を合わせれば、〈流星〉の幅は、大きく広がると言いたいのだろう。

 キエフの気持ちも分かってはいたが、ドーガはピラピラと手を振った。

「あー、無理無理。〈流星〉はなぁ、基本二人っきりでやってきゃいいんだよ。割って入るなんざ無駄無駄」

「恋愛面に関しては激しく同意しますが。二人とも、かなり優秀なだけに、勿体無く思えて仕方ないんですよ」

 本気で惜しんでいる気配のキエフに、ドーガは仕方ないから教えてやることにした。

「あいつらは、名を売ろうなんて最初から思ってねえからな。──〈流星〉は受ける依頼を選ぶ。知っているか?」

 キエフが片眉を上げる。やはり知らなかったらしい。

「〈流星〉は、蟲や魔物の討伐と、ダンジョン攻略にしか手を出さねえパーティーだ。『人』に関する依頼は、全部断りやがるんだ。要人警護や盗賊討伐、商隊の護衛さえ受けねえ。徹底してる」

「ええ?! 銃士のジーナさんがいるのにですか?!」

 キエフが驚いて声を上げた。周囲のお祭り騒ぎにかき消されたのは幸いだ。

 ドーガは心中でのみ嘆息した。そうだ。ジーナが銃士なのが問題なのだ。


 銃士という職は、冒険者としては不人気だ。

 攻撃の回転は随一だが、一撃一撃の威力が弱い。常軌を逸した個体ばかり相手取る羽目になるダンジョンなどでは、どうしても頼りなく見えてしまう。実は、先程ジーナが証明して見せたように、一撃の弱さを手数で補い、凄腕の銃士の総合的な火力は、決して侮れないものなのだが。

 しかしそれも、ダンジョン攻略方面に限っての話だ。

 対『人』ともなれば、状況は更に一変する。


 人対人の戦いであれば、他でもない、銃士が最強(・・・・・)なのである。腕が良ければ、という前提はあるが。


 ドーガは知っている。もしも万が一、本気で殺し合いをするのなら。ドーガも、キーラも、ユキも、誰も敵いはしない。恐らくジーナが圧勝するということを。

 だからこそ、人に関わる依頼では、銃士は厚遇される。ジーナ程の腕があれば、あっという間に売れっ子になるだろう。特にジーナには、規格外の治癒ヒールもある。どんどん指名依頼は飛び込んでくるし、いくらでも稼ぐことができる。

 人を撃ち殺す覚悟(・・・・・・・・)さえあれば。

「受ける依頼を決めているのはユキだ。ジーナは何も気づいちゃいねえ。おめえも黙ってろよ」

 キエフはすぐに事情を察し、感嘆したようだった。

「愛ですねぇ……」

 つくづくドーガも同感だ。冒険者など、良くも悪くも自分優先なのが普通だというのに。彼女に人を殺させたくなくて、名を売る機会も稼げる機会も溝に捨てている男が、ここにいる。

「だから言ってんだ。あいつらは二人でやってりゃいいんだよ。手が足りねえ時だけ、俺らが組んでやれば、それでいい」

 ジーナはユキと腕を組み、幸せそうに笑っていた。晴れた夜空のような紺色の髪と、月光色の瞳を瞬かせて。

 その姿は、とてもとても可愛かった。ユキが守りたがるのも道理だと、思うくらいに。

 キエフは頷いた。

「分かりました。……時にドーガ、どちらに賭けてたんです?」

 ジーナとキーラ、どちらが勝つかで、賭けが行われていたことを言っているのである。本命はキーラだったので、悔しがる姿があちこちに見られる。そういう意味でも、ユキはジーナから目が離せないだろう。逆恨みで襲われでもしたら大変だ。

 ドーガはニヤリと笑った。

「ジーナだ」

「それなら懐は暖かいですね。私たちも酒場に混ざりに行きましょう。奢ってくださいよ」

 飄々としたキエフに、ドーガはおいおい、と突っ込む。

「てめえの分くらい、てめえで払え。てめえはどっちに賭けてたんだ。キーラに賭けて大損でもしたのかよ?」

「私は審判だったんですよ。賭けに参加できるわけがないでしょう。ほら、置いていかれます。行きますよ」

 キエフが、ジーナとユキを含めた集団に追い付こうと、足を早める。

 まぁいいか、とドーガは折れることにした。幸い配当金のおかげで、本当に懐は暖かい。少しはユキを手伝って、ジーナのガードでもしてやるか。

 ドーガはやれやれ、と首の後ろをポリポリかきながら、酒場へ繰り出す集団の後ろをついていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ