あたふた隼
お久しぶりです。
前回隼に何があったのかを書きました。
何故こうなったのだろうか。
家に帰ってみたら、何故か家のリビングに人がいた。
鍵をかけたはずの家にどうやって入ったのかがまず疑問である。
奈々弥ならまだしも、あまり話した事もない人が何をしにここに来たのだろうか。
「お邪魔してます」
椅子に座りながらお辞儀をしてくる。
「燈乃さん、だったよね?何でここにいるの?ていうか、何で入れてるの?」
「私の事知っててくれたんですね。何故入れてるかは教えません。何故ここにいるのかは、また後で」
今すぐ教えてもらいたい所だけれど、聞いたところで対処出来るかどうかはまた別の話。
気まずい空気の中、先に口を開いたのは燈乃さんだった。
「お姉さん、今修学旅行中ですよね?」
「そうだけど、どうしてそんな事を聞いてくるの?」
「いえ、丁度いいなと思って」
「は?」
何か悪い事を考えているような笑みを浮かべながら持っている鞄を探り始める燈乃を、
隼は警戒していた。
そうとも知らず、いや、知っていてなのかもしれないが、燈乃は更に隼に話しかける。
「あのさ、隼君の部屋を見てみたいな」
「別にいいけど、何をするつもり?」
そう聞くと、燈乃は小声で答えた。
「隼君とイイことをしたいかなって…フフ♪」
「えっ?」
思わず『イイこと』という単語にドキッとしてしまった。
「そんな事より早く案内してほしいかな」
隼がドキッとした事に気付いていたのか、意地悪な笑みで案内を急かす。
隼の部屋に着くやいなや、隼の後ろにいた燈乃が隼の体を自分の方向へ向かせると、すぐさま抱きついた。
「なっ!?」
驚きを隠せない隼。
そんな隼の事はお構い無しに、燈乃は隼の耳元で囁いた。
「私、お姉さんに頼まれて貴方の監視をしてたの。この部屋とリビング、お風呂場にもカメラがあるから、止めたかったら止めてね 。それと…」
燈乃は、話を止めると、隼の首元に鼻を近ずけ、大きく空気を吸う。
そして、とどめの囁き。
「貴方の匂い、大好き♡」
隼の体がビクッと少し震える。
燈乃は、呆気にとられている隼から体を離し、部屋の扉を開ける。
部屋から出る前に振り返り、燈乃は小さく手を振りながら「じゃあね」と別れを告げ、家を出る。
燈乃さんが、その場からいなくなるのを俺は見届けた。
正直に言おう。
あれにはゾクッと来てしまった。
姉ならば跳ね除けられていたが、他人に、しかも同級生の女子にこんな事をされるのがこんなドキドキするものだとは知らなかった。
「危うく落ちるところだった…。あっ」
そんな事を考えている場合ではない。
早くカメラを見つけて止めなくては。
その頃、外に出た燈乃の手には隼の私物があった。
燈乃が隼の家にいた理由の一つである。
「ふふふ、隼君気付くかなー♪でも、あの人ちょっと鈍感だから気付かないかも。私の隼君コレクションはまだまだ増えますよぉ♪」
燈乃はスキップしながら鼻歌を歌い、家に帰ったとか。




