姉、修学旅行へ行く
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ありがとうございます。
そして、今回は姉である明希の視点と隼視点の入り交じった回です。
10月、ついにこの日が来てしまった。
姉である私が、隼を置いて二日ほど家から離れるこの日が、ついに。
『修学旅行』それは、様々な学園恋愛系のマンガや小説でカップルが成立させられやすいイベント。
私は隼一筋だから、どんな男が来ても心配はないのだけれど、私がいない間に隼が変な女に近寄られないか心配なの!
ただ、それも今までの話し。
そう、今の私にはあの子に仕込んでおいてもらったカメラと、あの子自身の巧みな盗さt…ではなく観察能力で、隼がどうな状態なのか知ることが出来る!
文明の利器って凄い!
隼と別れるのは悲しいけど、私からは貴方をずっと見ているからね!---
「それじゃあ隼、行ってくるからね!」
「うん」
その「うん」も可愛いっ!
「変な人、特に女にはついて行かないでね!近寄られても振り払って!」
「分かったよ…」
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
玄関を出て、扉を閉める。
「隼がいない行事なんて退屈すぎるのよね…」
はぁ、とため息をつきながらそう呟く。
たがそう呟きつつも、学校からの評判は良くしなくてはならないので、ちゃんと集合場所まで向かう。
「あ、明希ちゃんおはよー」
出た、モブA。
集合場所に着いたら早々に話しかけられた。
「おはよう」
私が隼以外の人、特に女をモブ以下だとしか思ってないと知られたらダメだから、一応、仕方なく仲良くしてるフリだけしとかなくちゃ。
「それじゃあ、これから新幹線に乗って京都に向かうぞ」
あぁ、隼と私の肉体的な距離が遠くなってしまう。
そう思いつつ新幹線に乗る。
席についた瞬間、スマホを取り出す。
何を見るのかといえば、もちろん隼である。
隼と同じクラスの委員長っぽい子に、教室にカメラを仕掛けておいて貰った為、授業中の隼を見れるのである。
ちゃんと授業聞いてるみたい。
真面目に授業受けてる姿も可愛いっ♡
「明希ちゃん何見てるの?」
「えっ、ちょっと」
「なになに?」
「どうしたの?」
「今ね、明希ちゃんがニヤニヤしながらスマホで何か見てたんだけどね」
やめてよ、鬱陶しい。
あぁ、私の至福の時間がモブ共に奪われていく。
「ああぁ…」
3時間程だろうか。
そんな長い間私は隼という癒しを全く摂取できず、モブ共のつまらない会話に入れられる始末である。
「こんな事が二日間も続くなんて地獄だわ…」
そんな事を呟きながらも周りの目を気にする明希は、歩く姿勢がキッチリしていた。
その頃の隼はといえば。
「授業ダルい…」
などと言いながらもこれまた姿勢の良い隼であった。
流石姉弟である。
電車とバスに揺られて数十分。
金閣寺周辺の見学である。
金閣寺は綺麗だけど、隼成分が足りないわ。
バスに戻り、次は嵐山へ。
隼と一緒に歩きたかった…。
一人先にバスへ戻る明希。
「つまらないわ…。やっぱり隼が居なきゃつまらない!」
どこまでもブラコンな明希であった。
「うぅ」
何かを感じ、ぶるぶると震える。
「姉さんの呪いか何かか?」
「何言ってんの?」
近くにいた奈々弥にツッコまれる隼人であった。
バスの中は浮かれきってわちゃわちゃしていた。
そんな事も眼中にないかのように、外を眺めながら黄昏ている明希。
つい、ため息も出てしまう。
「はぁ…」
こんなつまらないんだったら修学旅行来ない方が良かったかしら…。
そんな事を誰も知る由もなく、時間は過ぎていく。
気が付けばホテルに着いていた。
あまりの退屈さと周りの騒がしさが相まって、明希の精神はズタボロになっていた。
意識が曖昧になりながらも姿勢だけは良くしながらホテルの説明を受ける。
ホテルの鍵が渡された瞬間、明希は部屋へ直行した。
部屋へ着くなりすぐさまベッドに飛び込む。
そして、そのまま眠りに落ちる。
と思いきや、何かを思い出したかのように飛び起きる。
「今なら隼を見てられるじゃない!?」
都合良く同室者は他の部屋へ行っており不在。
極限に飢えた者の様に床を這いずり、バッグに手をかける。
「ふふふ、やっと隼が、私の隼が見れる!」
『うおっ!?何でここに!?』
「ん?」
開いた瞬間、隼が何かを見て驚いていた。
『お邪魔してます』
「え?」
その声の正体を知っていた。
何を隠そうこのカメラを仕掛けた張本人の声である。
そこで気付いた。
学校に仕掛けてあったはずのカメラの反応が無いのである。
「まさかあの女、私を騙したの?」
そのまま見続けていると、隼に女が抱きついたかと思えば、何かを耳元で囁いた。
憎らしい事に、口の動きだけが分かるようにカメラに見せてきたのである。
これには流石の明希も怒りを露わにする。
「あの女…。帰ったら辱めを受けさせてやる」
『それじゃあ、また学校で会いましょ。ふふふ』
隼から女が離れ、帰ったかと思えば、隼が何かに気付いたかのようにカメラの前まで来た。
「あれ?」
そして、カメラの電源を切られた。
「ああああああああ!」
それからは何もなく、ただ淡々とつまらない修学旅行を送った明希であった。




