琴音の知らなかった奏の意外な特技……?
「……奏」
肩を揺すられ、奏は目を覚ました。
顔を覗き込んでいるのは琴音や琴音の甥と姪たちである。
「あ……ご、ごめんなさい‼」
「疲れたんでしょ?この子達と遊べるの体力気力いるよ~?」
「奏ねーちゃん‼ねえねえ‼庭で遊ぼうよ~‼」
「ねぇ?」
子供たちの声に、琴音が、
「ダメダメ。もう、日が陰って寒いから、また明日だよ」
「え~‼ズルーイ‼」
「あ、明日、遊ぼうね」
「明日はお出掛けだよ~?」
頬を膨らませる子供たちに、
「仕方ないなぁ……兄ちゃんが、琴を弾くから……」
「いーやーだもん‼」
「あ、じゃ、じゃぁ、お姉ちゃんが、歌を歌ってあげる‼」
「奏、無理だよ‼」
琴音が止める。
「この子達……最近の歌を……」
「知ってるもの、えっと……はい、じゃぁ戦隊ものの……」
奏は声の調子を確認すると歌い始める。
「わぁぁ‼ゴーゴーライダーだ‼」
喜ぶ子供たちに、奏は最近流行りの、美少女たちの歌を歌うのだが、何故かダンスも踊っている。
特に姪っこたちは目をキラキラさせて、一緒に跳ね回る。
「はーい、せーのーで、『キラキラさせてあ・げ・る‼』」
ポーズを決めてウインクする子供たちと奏に、様子をうかがっていた琴音の祖父母と両親、兄夫婦たちが手を叩く。
「皆すごいじゃないか‼」
「上手ね~?」
琵琶と結花の声に、二人の子供たちが、
「パパ‼ママ‼上手?」
「しゅごい?」
「あぁ、すごいよ?上手だった‼」
「奏お姉ちゃんと踊れて良かったわね?」
「うん‼」
龍と信乃の子供たちも、
「とーちゃん‼姉ちゃん、スッゴイ‼」
「可愛い~‼姉ちゃん‼」
「ほんとだな~?躍りもうまかったし」
「うんうん。お前たちも」
何だかんだ言いながら、龍も信乃も子供たちを可愛がっている。
「奏……何で、踊れるの?」
「えっ?」
奏は頬を赤くすると、
「日曜日は午後からバイトでしょ?朝の間に洗濯と掃除とする前に、ちょっと見てて……か、可愛いから……」
小声で呟く。
「小さい頃から憧れてたんだもの。ステッキで変身して……それで、エンディングソングを踊ってた……」
「……」
想像した琴音は顔の下半分を覆う。
「あ、あぁぁ‼笑った‼ひどい‼」
「違う……想像したら、か、可愛くて……」
琴音にしてみれば、先の姪っこたちとのダンスも可愛いが、奏がキャラクターの格好をして……つまり、コスプレしていたらもっとかわいかったかもしれない……。
と、梓と智尋が親指をつき出す。
「あ、私たちが、準備するわよ~‼」
「皆で着替えてダンスも可愛いかも~‼」
「良いわねぇ。奏ちゃん。もう一回踊ってみて?」
義母の沙羅のお願いに、子供たちが、
「ねーちゃん‼」
「一緒に踊ろ?」
「ねー?」
「あ、うん、そうね」
と、言うと、子供たちと踊り始めた。
すると、琵琶たち4兄弟がスマホの動画を録り始める。
そして、子供たちの好きな童謡等を歌う奏が、琴音の兄たちの子供……つまり、甥と姪に、
「ハニースターのお姉ちゃん‼」
と呼ばれるようになったのだった。
えっと、ハニースターは、有名なアニメで、ステッキで戦う設定です。
エンディングでダンスがあり、それを覚えたと言うことになっています。