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俺の仕事はコンビニ店員

 「明日から君、来なくていいよ」

店長に呼ばれた俺は開口一番、そう言われた。

それでも俺は何とも思わなかった。

 「店長、それってつまり...どういう意味な」

俺が言い終わる前に店長は口を開いた。

それはどす黒く声は一際低かった。

 「つまりね、君、クビね」


 目覚まし時計の耳障りな音が部屋中に響き渡る。

 「うおおおっおはああ!!」

 意識が覚醒し、水底から這い上がる感覚が身体を襲う。俺は一瞬、寝ぼけて状況把握が掴めなかったが、辺りを見渡し納得する。

 「なんだよ、夢かよ」


 俺、柊男《 ひいらぎおとこ》は一人暮らしのフリーターである。柊男とは俺の名前だ。もちろん男子だ。

 フリーターな俺が、なんと来週から親友の小手により、大手の会社の接客業を担当する事になったのだ。

 今、働いているコンビニ店員で培ったコミュ力を行使し、接客業という最高の仕事に就けるのだ。給料は高く、趣味などにお金を費やさない俺にとって最高の額が貯まりそうだ。

 なので、今日はバイトが終了した後に辞表を店長に届けるつもりだ。

 俺は身支度を済ませ、バイト先にチャリに乗って向かった。


 バイト先に着くと制服に着替え朝の挨拶練習に移行する。

 「いらっしゃいませ」

 「「いらっしゃいませ!!!」」

 「ありがとうございました」

 「「ありがとうございました!!!」」

 「ほら、もっと声を張り上げて!」

 店長に倣い、俺たちは儀式的に声を張り上げる。

それらが終わり、勤務時間となった。今日は清々しい気持ちで仕事に取り組めた。なぜなら、高卒で始めたこのバイトともおさらば出来るからだ。俺は軽やかにスムーズに仕事をこなしていった。

 事件は突然としてやってきた。

「レジお願いします」

声高く同僚の飛鳥井奈緒が言った。

俺は素早くレジ先に向かった。それが過ちであった。

 俺は床に置いてある雑巾に気がつかなく足を滑らした。

ドシャーンという甲高い音がしたと思い顔を上げると、そこには散乱したお金にフランクフルトにおでんの具材などなど。そう、転んだ勢いでレジや食品をぶちまけてしまったのだ。

俺はそれらの惨劇を見て頭が朦朧としてきてしまった。駄目だ、絶対怒られる。それはいいが、弁償となったら終わりだ。今月はマジやばい。来週から大手の会社に行けても返せるかな?まあ大丈夫かな。

 様々な事が頭をよぎり俺の意識が途切れた。

 

 「柊さん、柊さん!大丈夫ですか?」

 「ん?」

 目を開けるとそこには飛鳥井の顔があった。

 「あれ、あれから何分経った?」

 飛鳥井は少々困った顔をしたあとに、「3分です」と答えた。

 「あの、ここのあと片付けは私がやりますので、店長がお呼びに...」

 飛鳥井は悲しそうな顔をして言いにくそうに言った。

 「あ、ああ。分かった。ありがとな」

俺は礼を言ってその場を後にした。


 そういや、ここ売れないコンビニだから絶対に弁償しろって言ってくるよな。

 そんな事を考えながら扉を押しのけ店長のいる場所まで行った。

 でも、クビは絶対だけど、どうせ今日に辞表だすつもりだったし変わりないよな。お金がくっ付くだけで。それが痛いんだが。

 店長の前に立つと店長は顔も合わせようとせずに、何か紙に筆を走らせていた。仕事だろう。

 すると、店長は、無機質に言い放った。

 「明日から君、来なくていいよ」

店長に呼ばれた俺は開口一番、そう言われた。

それでも俺は何とも思わなかった。

 「店長、それってつまり...どういう意味な」

俺が言い終わる前に店長は口を開いた。

それはどす黒く声は一際低かった。

 「つまりね、君、クビね」

 それでも、俺は何とも思わなかった。だって今日に辞める予定だったもんね。俺は内心で爆笑しながら店長を見続けた。この店長にはお世話になったが、ストレス発散なのか理不尽に怒られる事もあった。美人だが。黒のタイツに黒髪ロング。これが積極的に接客でもすれば、少しは繁盛した事だろう。

 俺はそんな事を考えながらも少しだけ苛立っていた。コイツ、お前は用済みだ。みたいな顔しやがって。

 「店長って」

 俺が何か皮肉を言おうとした直前に目眩がした。

 さっき転倒した時に頭を打ったのだ。やばい、意識が。

 俺の意識は彼方に飛んだ。


 目覚まし時計の耳障りな音が部屋中に響き渡る。

 「うおおおっおはああ!!」

 意識が覚醒し、水底から這い上がる感覚が身体を襲う。俺は一瞬、寝ぼけて状況把握が掴めなかったが、辺りを見渡し納得する。

 「なんだよ、夢かよ」

 

 それにしても妙にリアルな夢であった。

 俺は身支度を済ませバイト先に向かった。


 いつもどおりの儀式的な挨拶を済ませ、仕事に取り掛かった。

 いつも以上に手が動きスムーズに仕事が進んでいった。やっぱ、最後のバイトと思うと気持ちが楽だな。

 

 「レジお願いします」

 声高く同僚の飛鳥井奈緒が言った。

俺は素早くレジ先に向かった。

 夢を信じるわけでは無いが少々怖くなり、金は払いたくなく穏便に終わりたいので、床を注意しながら向かった。すると、そこには雑巾がやはりあり、俺はそれを飛び越えてレジの前に立った。

 やっぱ今日は運がいいな。

 

 最高な気分で仕事を終えて店長室へと向かった。

 「店長、お話が」

 店長はこちらを見もせずに手を上げて合図した。

 俺は友人の仕事場に移行するためにバイトを今日で辞めると言った。

 随分、急ではあるが、今日中に辞めたいと。

 「急すぎるが人員は確保できるし、勝手にしろ」

 店長は何の感情も無く言い放った。それが感に触った。

  「店長って」

 俺が何か皮肉を言おうとした直前に目眩がした。

 なんだ、疲労か?ものすごい目眩に襲われ俺はその場に崩れ倒れた。

 

 目覚まし時計の耳障りな音が部屋中に響き渡る。

 「うおおおっおはああ!!」

 目が覚めると俺は部屋にいた。いったい、何がどうなってんだ。

 確かに言い逃れのできない現実だ。認めるしかない。あれは全て現実だ。そして、今日は、何度目だ?

 俺は一つの結論に至る。ああ、そういう事かよ。漫画じゃあるまいしな。でも認めるしかない。

 「俺は、コンビニの仕事をやめられねえええええええええええええええええええええ!!!!」





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