無欲彼女
彼女は何も望まない。
ただひたすらに日常を消化する。
何もかもを必要最低限に収めて、合格点だけで留めるのだ。
満点は目指さない。
平均点と合格ラインを大事にしている。
「どうでもいい」
そう言ってふいっ、と視線を逸らす彼女。
瞳の色はガラス玉みたいに透明で僕を反射するんだ。
努力せずとも彼女はきっと色々なものを手に入れられる。
手を抜いて生きているから今のような結果なだけ。
少し本気を出せばすぐに上へ上がって行ける。
だが彼女はそれすらも望まない。
努力はしない。
その代わり結果もいらない。
地に足の着いていないような存在なのだ、彼女は。
フワフワとしていて掴み所のない。
目を離せばきっとどこかに消えてしまうだろう。
「つまんない」
吐き出される言葉に色なんてなくて、ぼんやりとした瞳で空を仰ぐんだ。
彼女の頭の中は何で埋められているのだろう。
欲求すらもない、望みなき彼女。
そんな彼女は今日も時間だけを消化してゆく。