学校にて
次の日の朝、学校に行くとの上に須賀君が突っ伏していた。心なしか魂が抜けかけているように見える。
「おはよう須賀君。どうしたの?目にクマが出来てるよ?」
「……おはよう四ノ宮さん……どうしたもこうしたも……昨日、二人が帰ったあと母さんが異様に盛り上がっちゃってさ…将来息子は確実に引きこもりますデブヲタニートになってしまうかもしれないって心配してたのに、芸能人も通う有名スポーツジムのオーナーとテレビ局勤務の敏腕メイクアップアーティストに直接指導してもらってイケメンに変身できるなんて奇跡だわぁぁあ…って狂喜乱舞してて、それに釣られた父さんと妹も徹底的に磨いて貰ってこい!!…って騒いじゃって収拾つけるのが大変だった…」
「あぁ、それはまた…」
「…しかも、母さんが四ノ宮さんが超可愛いかったなんて父さんに言ったら、嫁に貰ってこいなんて言い出して…」
「あははは…ははっ……なんとまぁ。可哀想に…須賀君にも好みが有るのにねぇ…。」
あーららー。そんなことまで言われちゃったのか…。ま、どうせ冗談だろうし、須賀君の好みは、グラマーでロリ顔で癒し系が好みだったはず。私の場合体型は悪くないはずたけど顔はどっちかというとキリッとした大人顔だし、性格なんて癒し系ならぬ煩悩にいやしい系だから好みの対象外だろう。
ミーニャのコスの時は母の超絶メイク技巧でなんとかロリ系の顔にしてもらったけど、やっぱりキリリとした顔になってしまったから、衣装をバトルモードの服にして、なんとか形にしたのだ。
制服ver,のミーニャにしていたら須賀君には認めて貰えなかったかもしれない。
「いやっ。そんなことな…ぃ…ょ…」
「え?何?………なんて言ってるか聞こえなかった。」
「………なんでもない。」
一瞬ガバリと顔を上げた須賀君は何かモゴモゴと喋って、また机に突っ伏た。…なんなんだ?
そうしてしばらく須賀君と話していると、クラスメイトがゾロゾロと登校してきた。
「あっれー四ノ宮さん須賀なんかと何話してんの~?そんな根暗でヲタク臭い奴と一緒に居たら四ノ宮さんもヲタクになっちゃうよー」
そう言って私の隣にやって来たのはクラスでもイケてるグループに属している松田慎之介君だ。
金に近い茶髪をツンツンに立て、耳には拡張されたピアスホール。制服の下にパーカーを着込み、腰元にはじゃらじゃらとチェーンがぶら下がっている。典型的なチャラ男。
私の苦手なタイプの奴だ。
うげー。面倒くさい奴に話しかけられた~。
こいつ、同じクラスになってからしょっちゅう話しかけてくるし、ヲタクを気持ち悪がったり差別するし、須賀君をちょこちょこ苛めてるんだよね。
「ねぇねぇ~四ノ宮さん、聞いてる~?そんな奴と話してないで俺達と話そうよ~。」
「松田君、その言い方は須賀君に失礼だよ。それに私は今、須賀君と大事な話をしてるの。だから急ぎの話でなければ後で聞くから。」
「えぇ~別に失礼でも何でもなくねー?須賀って見たまんまデブで暗くてアニメみたいな挿し絵の入った本読んでるし、本当の事じゃん。そんな奴と話すより今日の放課後俺とデートする話の方がよっぽど大事じゃね?」
どんだけ自己中心的な奴なんだこいつは…
ぁあぁあ。須賀君が隣で凹んじゃってるよ。
折角昨日やる気になってくれたのに…こんなところでこんな奴に私のコスmen育成計画をダメにされてたまるか!!
「松田君。私は松田君と話すことは何もないよ。それに、放課後は須賀君との予定が毎日詰まってるからデートはしません。ていうか、付き合ってもいないのにデートとかあり得ないから。」
「はぁ!?放課後毎日予定が詰まってるってどういうこと?しかも…須賀と?!」
「どういうこともなにも事実だよね?須賀君?」
「…あ……う…うん。」
「「「「「はあまああああああああ?!」」」」」
あれ?松田君以外からも声が聞こえたような…。
「ちょっ…四ノ宮さんそれってどういう……しかも、毎日って…」
「それは秘密。何を聞かれてもこれ以上は私も須賀君も何も話さないよ。でも、そのうち解ると思うから、今は私達の事そっとしておいて。」
笑顔で松田君に“これ以上関わるな”と圧力を掛ける。ついでに周りのクラスメイトにも視線向けて釘を刺す。
クラスメイトの諸君、とりあえず今はそっとしておいてくれたまえ。
これから須賀君は、我がコスmen育成計画の生け贄として華々しい変身を遂げるのだ!!
少しずつ美しく魅力的な男になっていく須賀君に、恐れおののきそして魅せられるがいい!!!!!!
隣で赤くなったり青くなったりして忙しそうな須賀君だが、私がクラスメイトに“これから何か起こるよフラグ”を立てたのだから、これで完全に逃げ切れなくなったよ(笑)覚悟してね☆