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交渉という名の誘導

そんなこんなで須賀君を自宅へ強制連行してきたわけだが、急に女の子の自宅へ連行されることになり、何度か脱走しようとした須賀君の左腕をガッシリと掴み、玄関のドアをあげる。



「ただいまー。お母さんいるー?」



「はーぃ、いるわよ~おかえりなさぃ…ってあらまぁ!」


「…お…お邪魔します」



奥のキッチンから母が出てきて私の隣にいる須賀君に目を止めた。


隣の須賀君は大きな体を縮こまらせて今にも逃げ出しそうになっているが、左腕をしっかり私に捕らえられ身動きが取れないでいる。



「…ねぇ純ちゃん。もしかして…その隣の方は、例の…」


「うん!須賀 紫音君ていうの。ミーニャコス見せようと思って連れてきちゃった!!」


「まぁ!そうなの!始めまして須賀君。純の母親の小雪こゆきと申します。ごめんなさいね須賀君。純の事だから強引に連れてきちゃったんでしょ?さ、入って入って。お茶でも入れますから。…純ちゃん。いい加減須賀君の腕を離してあげなさい痛そうよ。」




あ。ヤバイ…逃がすもんかと思いっきり掴んでたよ。私、握力強いからなぁ…。須賀君の腕大丈夫かな。



「はーい。ごめんね須賀君。さ、入って~」


「……え……あ…あぅあ」


もたついてなかなか家に入ろうとしない須賀君の背中を押して玄関の扉を閉める。


さぁ、早く靴を脱ぎたまえ。はい脱いだら上がる、あーもートロイなぁ。えぃ、リビングまで背中押してっちゃる。



リビングでは母がティーセットを準備してスタンバっている。仕事が早いな母よ。


青ざめている須賀君をソファに座らせると、すかさず母がお茶を出す。


「じゃ、須賀君。私、着替えてくるね。お母さん手伝って~」


「ハイハイ、まったく親使いが荒いんだから…ごめんなさいね須賀君。お茶でも飲んで少し待っていてね。」


「……ぅあっ…はっはぃい……」


声が裏返ってる須賀君を置き去りにして自室に向かう。自室に入り扉を閉めたとたん母に掴み掛かられた。ちょっ痛い痛い!!ネイルが肩に刺さってるよお母さん!


「じゅ~ん~…あなた本当にやっちゃったのね!!クラスにいる冴えない男子をイケメンコスプレ男子に改造するなんて暑苦しく語ってたけど、お母さんは夢の話だと思ってたわ。あの事故の後、純が"次いつ死にそうになるか解らないから思い残す事無ない人生を送ってやる!!よって私は、腐女子なコスプレイヤーになります"なんて言った時もビックリしたけど、今日だって物凄く驚いたわ。」



そうなのだ。あの事故の後、新たな人生を歩むことを決めた私は、まず親を味方に引き入れることにした。事故前の純はヲタクでは無かった。ただ、かなり本は好きだった。アニメも結構見ていた。だから両親に私のヲタクを認めさせるのはかなり早かった。事故に合い生死の境をさ迷った「二度と後悔する人生は送りたくない!!」という一人娘の言葉に両親はアッサリ納得した。


後は、両親にイケメンコスプレイヤー育成の野望を春休み中ずーっと話し続けた。何故なら母の仕事はとあるテレビ局のメイクアップアーティスト。父は自宅のすぐ側にある大型スポーツジムの経営者兼インストラクターななのだ。自分もさることながら、コスmen育成においてもコスプレメイクと身体形成には両親の協力が必要不可欠だからだ。

そして、両親を味方につけた後は、ターゲット発掘から捕獲、連行、の機会をずっと伺っていたのである。


そして今日、須賀君と買い物をしている時に、コスmen育成計画の本格始動を母にメールしたのだ。


「急に連絡してごめんてば。でも、須賀君、良いパーツ持ってるでしょ?磨けば絶対に光るよ?」


「そうねぇ…確かに良いモノは持ってると思うけど改良の余地は沢山ありそうよ?」


「んもー。それが良いんじゃないの!!道端に転がってる誰も見ない石ころをダイヤに磨きあげるの、お母さんも好きでしょ?」


「まぁ…そうねぇ。」


「ね、お母さん。やろう?ねっねっ?協力してー!」



「はぁ…解ったわ。でも、後でちゃんとお父さんにも話すのよ」


「はぁい。じゃ、そうと決まれば早くミーニャコスして須賀君にコスmen育成計画を話さなきゃ!!」


「えっ!?まだ計画の事話して無かったの!?」


「うん。だって、ちゃんと会話したの今日が初めてだもん。今まで須賀君のリサーチと衣装の下準備で忙しかったから。」


「っっっっまったく、あんたってコは…」


「大丈夫だよお母さん。須賀君の好きなミーニャコスして、須賀君も一緒にコスプレしよ?って強引に押しきっちゃえばいいんだもん。須賀君だってイケメンになって女の子にモテれば嬉しいだろうから悪くない話でしょ?」



「確かにそうかもしれないけど…可哀想に須賀君。こんな恐ろしい娘に捕まるなんて…。」



「もぉ、いいから!!早くコスして須賀君の所に行くよ!お母さんのメイクアップアーティストの実力を発揮させて私をミーニャに変えて!」


「ハイハイ、じゃ、そこ座んなさい。ウィッグセットとメイクしてあげるから。」



「よろしくお願いしまーす」



そうして母は化粧台の前に座った私に、すごい早さでメイクを施し、セミロングの私の髪をネットに纏め、ミーニャと同じ紺色のウィッグを被せてくれた。


後は、ミーニャがバトルモードで着る、胸元をザックリと開けて谷間強を強調した紺と白のミニ丈ロリータドレスを着込んで完成。

戦闘時に使う武器は時間がなくて作れなかったが、大体の形にはなっているからコレで良いだろう。鏡で全体を確認して須賀君のいるリビングに向かう。


「御待たせ~。どう?」



「…あっ、!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!@@!!%#"&*%&@`^]?=]{{」


須賀君の顔がトマトみたいになってる。おーい口が半開きになってるよー。言葉にならないのは分かってるけど、戻ってこーい!!


「あの、須賀君?」


「はっ!…すすすすすごいよ四ノ宮さん!!ミーニャだ!ミーニャだよ!!超似てる!超クオリティー高い!!超可愛い!!」



ふははは!!そうだろうそうだろう。私だって元は悪くないのだ。後は、母のスーパーメイクテクと父から鍛えられたメリハリボディに私の前世で培った裁縫技術を結集した衣装に袖を通せば、最強☆ なのさ。


「ホント?変じゃない?須賀君、喜んでくれる?」


「ぜんっぜん変じゃないよ、マジ可愛いよ!!俺、超幸せ!!ありがとう四ノ宮さん!!」



「ありがとう須賀君。それにしても、本当にミーニャ大好きなんだね」


「うん。大好きだよ。ミーニャはなに着ても可愛いけど戦闘服の時は格別に好き!普段はツンツンなのに戦闘服着てデレるとか神過ぎる!!」


「じゃぁ、主人公の光太は?」


「光太も好きだよ。最初はドジでヘタレであんまり好きになれなかったけど、ミーニャを守るために一回死んでバトルモードを取得して、ミーニャと一緒に戦うようになってから好きになった。」


「あの時の光太のバトルモードの服、超格好良かったよね!!」


「うん!男の俺でも格好良いと思った」


キタッ!須賀君もキャラクターの服に興味持ったぞ!!さぁ、こっからが勝負だ!!


「ねえ、須賀君も一緒にコスプレしない?」


「えええええぇぇえ?!ムリだよ!!俺、こんな体型だし不細工だし、コスプレなんてムリ!!」


「そんなことないよ!須賀君元の素材は凄く良いから、ちょっとダイエットして、ちょっとスキンケアして、髪型さえ何とかすればカナリのイケメンになるよ!」



「ムリだよ。俺、そんな事やる気も継続力も無いもん」



まあ、そうだわな。やる気も継続力もあったらこんな体型にはなってなかっただろうし。

どれ、ここらでお母さんから援護射撃してもらうか。お願いママン☆と母に目配せする。


「あら、須賀君。その話だとコスプレはしても良いけど、身なりに自信がないから無理だと言っているように聞こえるわよ?」



確かに、体型と容姿が悪いからムリで、コスプレが嫌いだからムリとは言っていない。


「それは…」



「なら、引き締まった身体で容姿も良くて、やる気と継続力を付けて自分に自信が持てればコスプレしてもいいのかしら?」


「まぁ、そんなことが出来るなら…」



「出来るわよ?」



「え?」



「だから、出来るわよ。ねえ、純ちゃん?」



「うん。出来るよ!まず体型だけど、私のお父さんがすぐそこのスポーツジムの経営者兼インストラクターだから、計画的にダイエット出来るし、スキンケアはお母さんがテレビ局のメイクアップアーティストだから徹底的に綺麗に出来る。やる気はイケメンになったら女の子からモテてウハウハ出来るって考えてもらって、継続力は私が須賀君に引っ付いて応援兼管理してあげる!」


「「ね。出来るでしょ?」」



「あ…う…。」


どうだ。ぐうの音も出まい♪

さぁ、コレで最後だ。一気にオトす!



「…ねぇ……須賀君…一緒にやろぅ?」


本日二度目のうるうる袖口掴み!!

どうだ?!コンチクショー!!



「………………………………はい…。」




Wiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii☆!!

オチたー!!!!

ッシャ―――――――――!



私とお母さんは須賀君の死角でコッソリとガッツポーズをした。





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