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フル装備

さて、いよいよ衣装が完成したので一度須賀君にフル装備してもらうことにした。


コスプレデビューに向けてメイクの練習やウィッグの被りかた、ポージングの練習も兼ねているのでカメラも準備!


「よしっ!先ずはウィッグネットを被ってメイクからだね!」


「えっ!男なのにメイクするの?」


「最近の男性レイヤーさんはメイクしてる人多いよー。写真で顔がテカらないようにしたりアイライン入れて目力アップさせたりね。光太もウィッグの色がボルドーだから眉毛の色も変えた方が良いしね!」


「でも…俺、メイクの仕方なんて解らないよ?」


須賀君が困った顔で見下ろしてくる。微妙に首を傾げて訪ねてくるのが物凄く可愛い。


「大丈夫!お母さんが教えてくれるって!」


「あれ?でも小雪さん買い物に出掛けたんじゃないの?」


「直ぐ帰ってくるよ。ほら、帰ってきた!」


言っている側から玄関のドアが開くのが聞こえた。

迎えに行くと荷物を両手に持った母が靴を脱ごうとしているところだったので荷物を受け取る。


「お帰りなさい。須賀君もう来てるよ。」


「ただいまぁ!美味しそうなケーキがあってどれにしようか迷ってたら時間かかっちゃった!」


「あら、じゃあすぐ準備するわ。」


母とリビングに向かい荷物を広げる。


「こんにちは小雪さん。いつもいつもお邪魔してしまって申し訳ありません。」


「こんにちは須賀君。良いのよ気にしないで!この間は純がお世話になりました。純から須賀君にご馳走になったパスタが凄く美味しかったって聞いたわ。今度私にも教えてね。」


「あ、お母さん。須賀君が美味しい玄米茶とお煎餅持ってきてくれたよ!」


母に須賀君から貰ったお茶とお菓子を渡すと母がキャーっと奇声を上げ喜んだ。


「まあ、須賀君お菓子選びのセンスが良いわねぇ!このお煎餅ってネット限定販売の黒胡椒煎餅でしょ?お茶も抹茶入りだし…この玄米茶お塩が少し入ってるのね?!前から一度飲んでみたかったのよ!」


へぇ~。そうなんだ。確かに美味しそうなお煎餅とお茶だなぁと思ったけどコスプレの事ばっかり考えてたからそれどころじゃなかった。


そんなことをボーっと考えていたら母が須賀くんに謝っていた。


「ごめんなさいねぇ須賀くん。あの子ったら本当に気が利かなくて…。というか、ニブニブなのよー。


「いえ、そんな…。」


なんだか二人にしか通じない話をしているらしい。

そんなことより早く須賀くんのコスプレを見たい!ここはせっつくしかないか。


「ねー。そろそろメイク始めようよー。」


須賀くんと母が二人して私を見て溜め息をつく。

なんだよ、なんかダメだった?


「仕方ないわね。じゃあ須賀くん鏡の前に座って。メイク道具はメンズ用のを準備しておいたわ。使ってみて良さそうなら格安で譲ってあげる。」


「メンズ用のファンデーションなんて有るんですね!俺、知りませんでした。」


「今は結構メンズ化粧品増えてきてるのよ~。まあ、須賀くんの肌に合うかどうかが一番だから色々試しつつ練習していきましょ!」


そうして、須賀くんは母にメイクの基礎やキャラクターによるアイラインの書き分け等を動画を取りつつ真剣に習っていった。


「まあ、とりあえず今日はこんな感じかしらね?後は時間の有るときに何度か練習してればうまくアイラインも書けるだろうし、付け睫もつけれるようになるだろうから、頑張ってね。解らなくなったら純もある程度出来るから聞くと良いわ。」


「何から何まで丁寧にご指導ありがとうございます。アイライン一つで大分印象って変わるんですね!俺、タレ目が結構コンプレックスだったんですけど、アイラインのお陰でかなり改善されました!」


おや、須賀くんはどうやらタレ目がコンプレックスだったみたい。


「えー。須賀くんてタレ目がコンプレックスだったの?私、須賀くんのタレ目好きだけどなぁ。」


「うぇっ?!そっそそそそうなの?!俺の目好き?!」


「うん。なんか捨てられた仔犬みたいな目だよね。見詰められると拾って帰りたくなるような!」


「………………それは喜んで良いのかな?……それとも悲しんだ方が良いのかな……?」


「………純……。あんたって子は。」


須賀くんと母が視線を合わせてから下を向いて首を振っている。


だからもうなんなのさ。さっきから二人して。


「須賀くん、ウチの純が本当にごめんなさいね。」


「いえ…………何時もの事なので気にしないで下さい。とりあえず、次いきましょう。」


「そう?…………じゃあ次は着替えね。純、衣装準備できてるんでしょ?」


「え?次はウィッグじゃないんですか?」


須賀君がネットを被った姿で恥ずかしそうに聞いて来たので理由を説明する。


「うーん、何で先に衣装かっていうと、ウィッグの毛が絡まないようになんだよね。本当なら衣装を着て、ネット被って、メイクして、ウィッグ被った方が良いけど、今日の須賀君の私服だと、上の半袖シャツさえ脱げば衣装着るの直ぐだったから、順番を変えたの。被りの服とかだと先にメイクやウィッグを被ってから着替えると崩れちゃうでしょ?」


「成る程!コスプレする時って順番も大事なんだ!じゃあ先に衣装着ちゃうよ。」


着替えの順番に納得してくれた須賀君に衣装を手渡し、別室に案内する。

衣装に着替え終わった須賀君にもう一度鏡の前に来てもらいウィッグを手渡す。光太のバトルモードのヘアスタイルはワインレッドのボブウルフだ。最近はキャラクターに合わせてカットしてあるウィッグも多く光太のウィッグも販売していたのだが、いかんせん値段が少し張るのでロングウィッグを母にカットしてもらった。襟足が結構長めなウィッグなので絡まないようにゆっくりと被って貰う。


「っしょっと……。ウィッグってこんな感じで良いのかな?」


前髪やモミアゲの微調整をしながら須賀君が振り向く。黒いシャツにボルドーのベスト、紺の燕尾服風の軍服!赤のモールと金の縁取りが美しく、少しヒールのある黒の編み上げロングブーツ。ワインレッドのウルフヘアから覗く顔は超イケメン!!!


「……………っこっ………光太だぁ!光太がいる!萌えぇぇぇえぇぇぇえ!!!!!!!!っていうか、光太よりも格好いいよ!うひゃーっ!タマラン!!ヤヴェっ……カメラ!カメラどこ?!写真撮らなきゃ!」


慌ててカメラを捜し出し、いざ写真を撮ろうと須賀君を見ると、母と一緒に引いていた。


………ヤバい。須賀君のあまりの格好良さにテンションが上がりすぎてしまった。


「…………純………。」


あっ、やめてお母さん!そんな残念な子を見るような目で私を見ないで!………って須賀君まで同じ目で見ないでよ~。私がミーニャコスした時は須賀君だって似たようなもんだったでしょーがっ!


「とっ、とりあえず写真撮って良いかな須賀君?」


「えっ?あっ、ぅ、うん。」


須賀君がカメラに向かってピースする。


「ちょっ、須賀君!そんなのダメだよ!光太はバトルモードの時ピースなんてしないでしょ!うーん、あっ、ちょっと窓際に行って!んで、レースカーテンだけ閉めてそこに立ったら腕組んで上半身を窓に預けて目線だけ外の送にしてて!」


「ええっ?!そんな本格的に撮るの?!」


「本格的も何も、コスプレしたんだから撮られる練習もしなきゃ!ホラホラ、丁度いい感じに日が射してきたから早く窓際に行く!」


須賀君を窓際に追い立ててポーズを指定しながら写真を撮ってゆく。最初は戸惑っていた須賀君もコツを掴んだようで、ぎこちなくもそれらしいポーズを取ってくれるようになった。ある程度撮ったところでデータを須賀君に見せる。


「うわぁ、なんか恥ずかしいな…でも凄いね!なんか本物のレイヤーさんみたいだ!この背景のボケ具合とかピントの位置とかプロっぽい!」


「うん、結構いい感じに取れてるね!親戚から貰ったデジタル一眼レフのお陰だよ。本当はミラーレス一眼が欲しいんだけど、このカメラもまだ使えるし、他にやりたいコスがあるからそっちにお金かけたいんだよね。」


「十分じゃないかな?俺なんてコンデジしか持ってないもん。」


「そうだよね。あ、今日の写真のデータ要る?」


「いや、俺のは別に良いよ。」


「そう?お母さんとかに送らなくて良いの?この写真とか凄く良く撮れてるよ?」


その写真は椅子にジャケットを掛け、ベスト姿で左手のカフスボタンを外している物で、シャツのボタンを寛げチラリと見える鎖骨とアンニュイな流し目が非常にタマラナイ一枚だ。私ならこれでご飯二杯は軽くイケる!


「うわっそんな写真見せなくていいよっ!っていうか、絶対見せないで!!!恥ずかしすぎるっ」


「あら、写真ならもう円さんに送信しちゃったわよ?」


ソファーに座った母がスマホをヒラヒラと示して笑っている。

写真を撮り始めてから急に静かになったな~と思ったらこっそり写真を撮って須賀君のお母さんに送信していたらしい。


「ええっ?!いつの間に送ったんですか?!っそれよりどんな写真送ったんですか?!」


「ん~?こんな感じよ?」


母が須賀君のお母さんに送った写真をこちらに向けてきた。送った写真は4枚。

窓に寄りかかり外を見る須賀君。

ジャケットを脱いでいる最中の須賀君。

シャツのボタンを私に外されて鎖骨の出具合を調整去れてる須賀君。

そしてそんな須賀君を嬉々としてファインダーに納めてる私。


4枚目は要らんだろう!


どうやらソーシャルコミュニケーションアプリを使って送信したらしく右側の吹き出しに4枚の画像と既読の文字が付いていた。その時ピッコーンとアプリ特有の着信音が鳴り、画面の左側に吹き出しが出る。


「あら、返信が来たわ。」


"紫音が別人になってる(笑)それより、純ちゃんが物凄く楽しそうね!"だって。


なんだよ!息子の写真より私のアホ面に反応示さなくたって良いじゃないか!


「うわぁぁぁあ。母さんにみられたぁぁぁぁ。」


「そんなに恥ずかしがらなくて良いよ。須賀君の写真はどれも格好良く写ってるじゃない。最後の私のアホ面を須賀君のお母さんに見られた私はどうすればいいの?」


顔を押さえて踞る須賀君の肩に手を置き哀愁たっぷりに話しかけてみれば、見上げてくる須賀君の瞳に死んだ魚の目をした私が映っていた。







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