表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この街で、僕は恋をした  作者: めい
第二章
9/33

4

先生が父さんを好きになったのは、初めての家庭訪問のときだった。僕は例年と同じように、母さんと父さんと並んで座り、先生の話を聞いていた。そのときの僕にとって、先生は担任の先生でしか無かったのだけど、いつもの教室で笑うのとは、違う笑顔を見せる先生に、僕はすぐ勘付いた。先生は、父さんに一目惚れしていたのだ。


入学式には親の顔を覚える余裕は無かっただろうし、家庭訪問だけで済めば良かったのだけれど、父さんは学校行事に必ず参加するから、先生と関わる機会も多い。

だから、その思いは、確実になっていったのだと思う。僕は何故、そんな些細な事に気付いたのかは分からないけれど、きっと僕は父さんの前で初めて見た、先生の女性らしい仕草に、だんだん惹かれていったのだろう。


だから、僕の恋は、叶うはずもなければ、それ以前にとても複雑なものなのだ。



「先生、ケーキ買ったけん!食べて下さいね、今日来たとき」


父さんは、わざわざケーキの箱を開けて先生に見せる。僕は恥ずかしい。


「おわ、俺も欲しいよ父ちゃん」


純平はケーキの箱を覗き込み、目をキラキラさせた。


「ああ、一個は母さんのやけん、母さんにお供えしたあとなら、食べていいで」


純平はそれを聞いてテンションが上がっていたけれど、僕は、先生の一瞬の、悲しそうな表情を、見逃さなかった。その変化は、周りに気付かれるようなものではないのだけれど、僕には、分かってしまう。

先生は、母さんが死んだとき、どう思っていたんだろうか。


「じゃあ、愛斗、純平。帰ろうな。先生、あとで」


父さんはケーキの箱を閉じて、先生に手を振った。先生は父さんに礼をして、笑っていたのだけど、その笑顔も、父さんの前だと、何だか違うのだった。

だから僕は、家庭訪問に参加をしたくない。自分の恋の無謀さを、目の前で思い知らされるからだ。


「純平、今日は飯食べて帰れ」


「まじ〜やった〜」


僕は、父さんと純平の盛り上がって話している姿を、少し後ろを歩いて見ていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ