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放課後、僕は早足で校門に向かった。
「愛斗、待てって〜」
純平はだるそうに着いて来る。
「なにをそんな急ぐん。俺、裕子んとこ行かんとわりいんで?」
「俺は先に父さんとこ行っとく」
父さんのことだから、少しでも遅くなれば、ケーキ屋で待たずに校門前まで来そうな気がしたからだ。僕はそれが、とても嫌だった。
「愛斗、はえーよ!」
純平が僕にそう言うけど、僕は気に留めないようにした。だけど、それは無駄だった。
「吉田くーん、瀬能くん!」
先生と鉢合わせてしまったのだ。
「今、帰ろうとしよったやろ!もう!」
「だって愛斗がさあ」
僕は、少しハラハラしながら校門前を見る。向こう側は見えないけど、父さんはきっと来てない。
「はい、吉田くん、これお母さんにな。大事な資料やけん、必ず渡すこと!」
先生は純平に念を押し、僕を見た。
「もう、瀬能くんはしっかりしちょんに、何で一番仲良い吉田くんがこんなだらしないんかなあ」
僕は先生の目を見るだけでどきどきしてしまって、見るのがやっとだった。自分で思うよりもだいぶ、先生のことが好きなのかもしれない。
「だいたい、吉田くんはな…」
そう言いかけた先生の視線が違う方向を向き、先生はしゃべらなくなる。代わりに、聞き慣れた声がした。
「先生!お世話になってます!今日、家庭訪問やけん、よろしく頼んますね」
父さんが、校門から学校に入ってきた。僕の嫌な予感は的中し、僕は先生を見て、胸が締め付けられる思いだった。そう、僕は父さんと先生を、会わせたくなかった。そして2人が会うところを、僕は見たくなかった。
先生の好きな人は、僕の父さんだから。




