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あっという間に一週間が過ぎて、僕の家庭訪問の日が来た。先生が、家に来る。僕は複雑な嬉しさもあり、憂鬱さもあり、なんだか気持ちが悪かった。
「愛斗、今日、一緒に帰るんで。ケーキ屋の前におっちょくけんな」
父さんは、朝から何度もその言葉を言って来る。父さんは本当に、僕のことも、ばあちゃんのことも大好きなのだ。もちろん、母さんのことも。
「今日、母さんにもケーキ買うんや。チーズケーキがいいわ。喜ぶわ。結婚する前、よく2人で食べたんや、チーズケーキ。俺がチーズケーキ好きやっち、言ってからな、結婚記念日には絶対、チーズケーキ作ってくれよったんで。」
父さんは、母さんのことを話すとき、それはそれは大切そうに、ゆっくりと話す。僕はその、母さんの話をするときだけにしか聞けない、いつもとは違う父さんの優しい声に、母さんへの深い愛を耳で感じ取るのだ。
僕はその深い愛情の持ち主と、その愛情を受けた母さんに育てられたことを、誇りに思ったりするときがある。
「行って来ます」
僕は玄関に手をかけた。
今日は、家庭訪問だ。




