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夕方、家に帰ると、父さんはもう帰って来ていた。
「愛斗、おかえり!!」
「ただいま。父さん、なんでこんな早いん?」
「だってな、家庭訪問いつかなあ、ち、気になったけん」
僕は呆れて笑う。父さんはくだらない理由で、仕事を切り上げて帰って来たりするのだ。僕は父さんに、家庭訪問の日程表を渡す。
「お、来週の月曜日やな。16時からか。斉藤先生に、何か食べ物出さんとなあ。愛斗、先生は何が好きなんかな」
父さんの質問に、僕は少し考えた。先生の好きなもの…そういえば、僕はあまり知らない。
「うーん、ケーキとかでいいんやないん。甘いのなら食べるやろ」
僕はこんな、ちっぽけなことでも、自分が情けなくなるのだった。先生をずっと見て来たのに、僕は先生のことをあまりにも知らないからだ。
「なら、学校前のケーキ買おう。歩いて行くけん、愛斗、来週の月曜日は一緒に帰ろうな。俺、校門で待っちょくけん」
父さんは、それは楽しそうに笑っている。僕は途端に、複雑な気持ちになった。
「校門やなくても、俺がケーキ屋まで行くわ。学校終わるの15時やけん、そんくらいに」
僕は、父さんに校門まで来て欲しくなかったのだ。
「あと、俺、今年の家庭訪問は参加せん」
僕は少し強気で父さんにそう言った。父さんは明らかに悲しそうな顔をした。それに僕は負ける。
「…じゃあ、家庭訪問の日、一緒に帰ろうか」
僕がそう言うと、父さんはすっかり機嫌を直したのだった。




