3
僕が先生を好きになったのがいつかは、はっきりと分かってない。高1の夏のときには、僕は先生を、先生としてしか見ていなかった。それは確かだ。
きっと、月日が経つにつれ、僕の先生に対する気持ちは、グラデーションのように、ゆっくりとゆっくりと形を変えていったのだろう。
でも僕は、先生に好きな人がいることを知っていて、それが誰なのかも知っている。だから僕は、何も言えない。先生の好きな人を、僕が知っているなんて、先生は知らない。僕の恋は叶うはずが無いのに、思いは確実に大きくなってなっているから、厄介だ。
教室に着くと、純平が僕の席の机に座っていた。
「どけよ」
僕が純平に言うと、純平はにやにやと笑う。
「おはよー愛斗」
純平は、幼馴染で親友だ。この高校を選んだもう一つの理由は、純平がいたから。こいつは馬鹿だけど、その馬鹿さに僕は何度も救われて来た。性格があまりにも違いすぎるから、周りには、何で仲良いの?なんて聞かれることもある。
「おはよーみんな」
チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。クラスのみんなは、ガタガタと席につく。
「家庭訪問の日程表配るけん。みんなの親御さんに、都合良い日になるように作っちょんけど、もし不都合あったら言ってな」
僕は回って来た家庭訪問の日程表を見る。来週の、月曜日だ。
「うわ、愛斗が一番やん。裕子が来るとか〜三回目〜」
僕はこの、純平が先生のことを、名前で呼び捨てにするのが気に入らない。僕にはとても呼べないから、羨ましいのと、妬ましい気持ちが混ざる。ただの嫉妬だ。だけど純平は、僕の気持ちを知らないから、僕は何も言えない。
「では、今日も一日がんばりましょう」
HRが終わり、先生は教室を出て行った。僕は目で追う。気付かれないように。




