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「卒業、おめでとう」
一人一人に、卒業証書が配られた。女子は泣いていた。男子も、何人かは、泣いていた。
僕は、壇上に上がって、卒業証書を貰っても、実感が湧かなかった。
三年間当たり前だった、高校生活。
三年間当たり前だった、先生に会える毎日。
三年間当たり前だった、先生を思う苦しみ。
その全てが、今日で終わるんだ。
教室にはいると、クラスメイトの親たちが、後ろの方や廊下に立っていた。父さんと、ばあちゃんが来ていて、純平の母さんと仲良く話している。
「みなさん、改めて卒業おめでとう」
いつもジャージの先生が、綺麗なスーツで決めている。化粧も決まっているようだ。
「人生は、これからです。羽ばたいて下さい、未来へ」
僕らは、高校を卒業した。
「先生、お世話になりました」
たくさんの親たちが、先生に個人的に挨拶をした。クラス替えのない、この高校は、三年間、担任が先生だったのだ。先生が教師になって、初めて受け持ったクラス。それが、僕のクラスだった。
「先生、お世話になりました」
父さんとばあちゃんが、先生に挨拶をする。父さんも先生も、今まで通りに挨拶をしていた。先生の目が、少し潤んでいる気がしたけど、僕は見ないふりをした。
あのとき、真っ直ぐに思いを告げた、先生。
あのとき、真っ直ぐに思いを語った、父さん。
僕だけ、僕だけは、何も出来ていない。くすぶる思いを抑えるだけで、何も出来ていない。
僕は、純平と校門をくぐった。
「さいなら」
先生。貴女が、好きです。きっと、これからも。




