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この街で、僕は恋をした  作者: めい
第六章
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1

「さあ瀬能くん、進路決めんと冬休みこんよ。もう就活とか始まっちょんに、呑気すぎるよ。大学の締め切りも近いんで!」


二回目の、先生との二者面談だ。進路が決まっていないのは、クラスで僕だけになってしまった。純平は父さんの会社に就職が決まったのだけど、僕は相変わらず何をしたいか分からないままだ。


先生は、僕に普通に接している。僕は、先生に普通に接している、ふりをしている。

やっぱり先生を見ると苦しいし、切ない。だけど、純平に気持ちを話してから、僕の感情は乱れることが無くなったような気がした。


「どうする、就職か、進学か」


「うーん…」


「どんなことしたいん?」


先生の、となりに、いたい。そんなことが頭に浮かんで、僕の顔は熱くなる。少女漫画のヒロインじゃないのだから、と思う。


「やりたいこと…」


先生は、手に入らないのかな。


「うーん」


先生に、近づく、方法。


「ああ」


先生に。


「俺、高校の体育教師なる」


僕は自分で言って自分で驚いた。僕が、体育教師?先生と同じ、高校の体育教師になるのか?

先生を見ると、先生も驚いている。


「いや、あの」


「…いいやん、体育教師!!」


「え」


先生の目は、キラキラしていた。


「瀬能くん、成績も悪くないし、体育も好きやろ?なれる、なれるよ〜」


「は、はあ」


「なんなん、ちゃんと考えちょんやん」


「う、うーん…」


「じゃあ、決定!いい大学、調べて教えるけん。県外に出るん?」


「いや…父さんとばあちゃんだけじゃ、家が心配やし」


「そっかあ。優しいなあ瀬能くんは」


そんな風に、言わないでくれ、先生。

何の気なしの褒め言葉が、僕には大きな刺激を与えるんだから。

僕の進路は、体育教師に決まった。僕はそんなものに、なるのだろうか。父さんにも、純平にも、誰にも言ってない。ましてや自分だって、そんな道を考えたことはなかった。


でも、不思議と、やってみようかな、と思える。先生と同じ道を歩むことが、嫌ではないのだ。


僕は席を立ち、教室に帰ろうとした。


「せ、瀬能くん」


「?」


先生に呼び止められ、振り向く。


「瀬能くんの、お父さんのお見舞いに、行っていいんかなあ」


僕は心臓が少し、きゅっとした。ああ、父さんに会いたいのか。僕と2人で話しているときにも。


「…父さん、喜ぶわ。先生のこと、いい先生やっち、言いよんけん。退院前にでも、行ってやって。まあ冬休み明けやけどな」


僕は、自分の気持ちに、いつまで嘘を塗りたくるのだろう。だけど、そうするしか、無いのだ。ぶつかる勇気が、僕には無い。


僕は、教室へ帰った。受験勉強をしなくては。帰りに、父さんに、会いに行こう。


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