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この街で、僕は恋をした  作者: めい
第五章
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3


放課後、僕は友梨を呼び出した。廊下で待っていると、友梨は、小走りで僕の元へ来た。


「愛斗くん、どしたん急に」


友梨が、僕の制服をつかむ。僕はこの手に、どれだけ卑怯な感情をぶつけたのだろう。この、純粋な心を、僕はどれだけ弄んだのだろう…。


「友梨」


「ん?」


「俺の父さんが、事故ったんやけど」


「え!大丈夫なん?」


「うん。でもその事故、俺のせいで」


「なんで?」


「俺が、自分の気持ちに嘘ついて、目を逸らして。逃げて逃げて。逃げ続けて。父さんに八つ当たりして、俺、それからも、また逃げちょった。父さんは、俺を追いかけてきよって、道路に飛び出して、ひかれたんよな」


「…うん」


「でな。俺はもう、自分の気持ちから目を逸らすの、やめる」


「………」


僕の制服をつかむ友梨の手が、すこし強まったのが分かった。


「俺は友梨を好きじゃない。好きになれん」


友梨は、うつむく。


「俺の逃げ場にしちょった。たくさん傷付けた。今も傷付けた。ごめん。最低な奴でごめん」


「……なんでそんな、こと、言うん?あたしのこと、好きやなかったって?少しも、一度も、思ったことないん?」


友梨の声が震える。僕は自分で招いたことなのに、胸が痛む気がした。


「好きじゃない。好きと思ったことは、ない」


友梨は座り込んで、泣いた。廊下を歩く人たちが、僕らを横目で見る。だけど僕は、今、友梨と向き合わなければいけない。周りを気にしている場合ではなかった。


「友梨」


「遊びやったってこと…」


「違う。遊びやない。好きになろうとした。でも無理やった」


「最低………」


「……うん」


「最低や、愛斗くん」


「ごめん」


「消えて」


「うん」


「もう、あたしの前に現れんで…」


「…うん」


僕は友梨を立たせようと、手を伸ばしたけど、その手は弾かれてしまった。僕は友梨から離れ、教室へ帰った。後ろで、友梨を慰める女子の声がした。僕はきっと酷い人という噂が流れるだろう、だけど、それは仕方ない。

僕は、友梨を傷付けた。自分の為だけに、友梨を利用したのだから。


「…ごめん」


呟いた僕の声は、もうすっかり冬の空気に消えて行ってしまった。

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