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僕と純平は、県立病院へ走った。まさか、父さんが。父さん…。
僕は千切れそうなくらい激しく唸る心臓を押さえた。
母さんが倒れたときも、僕はこうして駆けつけて、そのときには、もう…。フラッシュバックする。その日の記憶が。僕は、自分の手が震えているのが分かった。
病院に着くと、ばあちゃんがロビーで僕と純平を待っていた。ばあちゃんは、泣き腫らした目をしていた。
「と、父さん、は…」
僕は息が上がって、途切れ途切れに言葉を出した。
「今、病室におるわ。相手の人は警察に行っちょる」
僕は、ばあちゃんの話が終わるのを待てず、父さんのいる病室に走った。
「父さん!」
そこには、包帯を頭と手足にぐるぐる巻にした、笑っている父さんがいた。
「ああ、愛斗、純平。とんでもない目にあったわ!」
父さんが予想外に元気だったので、僕は足がくだけたように、へなへなと座り込んだ。
「いや、気付かんやったんやトラックに!まあ俺が飛び出したけん、悪かった!」
父さんは、へらへらしている。
「笑い事や、ないやろ」
僕は震えそうになる声を、振り絞って出した。
「俺のせいで…、父さんまで死んだら、俺…」
涙が頬を伝った。僕は昨日から、泣いてばかりだ。
「愛斗、俺は大丈夫やったんやけん。何もお前は悪くない。悪くないけん」
父さんの優しい声が、余計に僕の罪悪感を強くした。僕は、自分のことばかりだ。
父さんは、しばらく入院することになった。医者の話では、完治までに二ヶ月ほどかかると言う。僕は父さんの会社に電話をして、一度家に帰った。父さんの荷物を病院に持って行くためだ。
「愛斗」
ふいに、純平がつぶやいた。
「ん?なに」
「父ちゃん、良かったな……」
純平は、心底安心した様子だった。それはもちろん、僕も同じだ。
「ああ、ほんとに良かったわ。死んだかと思った」
「愛斗」
「ん?なんなん」
「俺、お前らほんと好きやわ」
純平は、そう言って照れたように笑った。僕もつられて笑う。
「なあ愛斗」
「あーもう、なんなん!」
「学校、無断欠席や」
僕らは同時に、やべ。という顔をして、また、笑った。




