6
「愛斗?」
声の方を振り向くと、純平だった。
「お前、どこ行っちょったん〜裕子とラブホでも行ったんかと思ったわ!」
純平はそう言って、ヘラヘラと笑った。僕は、その笑顔で安心したような、先生の名前を聞いて苦しいような、そんな気がした。
「…愛斗?まじ、どしたん?」
純平が心配そうに僕を見た。
「純平、俺」
僕は、言葉をひとつ、ひとつ、吐きながら、涙を止められなかった。
「俺は……」
純平は、泣き出す僕を見て、動揺している。
「俺、好きだ………」
こんなにも、好きだ。
「先生が、好きなんだ……」
僕は、その場に座り込んでしまった。
「先生のことが…、好きなんだよ」
僕は、情けないくらい泣いた。純平は、僕の体を支える。
「ちょ、とりあえず、俺ん家に上がれ」
純平は僕を立たせ、家に上げてくれた。
僕は、純平にすべてを話した。先生を好きでいたこと。先生の好きな人は、父さんだということ。先生を忘れるため、友梨と付き合ったこと。昨日の夜、先生を送ったときに起こったこと。友梨と会っていたこと。
純平は最後まで、黙って聞いてくれていた。途中途中で、驚いたり、え!と声を上げたりもした。そして、少し考えたようにして、話し始めた。
「いや、しかしなあ、俺に相談してくれりゃあ良かったやん」
「ごめん、言いにくくて」
「愛斗の父ちゃんは、母ちゃんのこと、今でも大好きやけん、先生と再婚とかそんなんは無いやろ。」
「俺も、先生の恋は、叶わんと思っちょん。でも、なのに父さんをずっと好きな先生を見るのが辛い」
先生は、父さんのことを、とても好きなのだ。僕は見ていて、わかっていたし、それを再確認してしまった。
「いやー、複雑…」
純平はそう言って、頭をかいた。その様子に僕は、笑いが出た。
「なんなん、愛斗のために考えよんのぞー!」
笑う僕を見て、純平も笑った。
「ごめんごめん」
ふいに、僕の携帯が鳴った。
「ん、わりい、電話」
着信の表示を見ると、知らない番号だった。
「ん?…もしもし」
僕は電話に出た。
「県立病院ですが、瀬能愛斗さんで、お間違いないですか」
「…はい」
途端に、僕の背中を冷たい空気が走った気がした。
「お父様がトラックに跳ねられまして、たった今、運ばれました。急いで来て下さい」
瞬きが、出来なくなった。




